
「送料無料にした方が売れますか?」「送料無料ラインは3,980円くらいにしておけばいいですか?」EC運営の相談を受けていると、送料についてこうした質問をいただくことがあります。
送料は、お客様から見ると「できれば払いたくない費用」です。そのため、送料無料にしたり、「○円以上で送料無料」という条件を設定したりすることで、購入を後押しできる可能性があります。
しかし、EC事業者から見れば話は少し違います。送料無料にしても、配送会社へ支払う送料がなくなるわけではありません。お客様が払わなければ、基本的にはショップ側が負担します。
例えば、3,000円の商品を販売して粗利が1,200円あっても、ショップが700円の送料を負担すれば、残る粗利は500円です。さらに、決済手数料や梱包費、広告費、システム費なども発生します。
この記事では、ECサイトの送料はいくらが適正なのかを考えるために、送料負担が利益へ与える影響から、送料無料ラインの決め方、客単価との関係、送料無料によって何件注文が増えれば元が取れるのか、送料負担を改善する方法まで具体例を使ってわかりやすく解説します。
- 1 ECサイトの送料は利益にどれくらい影響する?
- 2 「送料無料」でも送料が0円になるわけではない
- 3 送料を見るときは「配送会社へ払う金額」だけで考えない
- 4 ECサイトの送料設定は主に5パターン
- 5 送料無料ラインとは?
- 6 送料無料ラインはいくらに設定すればいい?
- 7 「送料÷粗利率」だけで送料無料ラインを決めてはいけない
- 8 利益を残す送料無料ラインはどう考える?
- 9 送料無料ラインは「客単価」と「追加粗利」から考える
- 10 【具体例】3,980円送料無料は本当に得なのか?
- 11 それでも送料無料にする価値があるケース
- 12 送料無料にすると注文が何件増えれば元が取れる?
- 13 エビス店長なら送料無料施策でこの7項目を見ます
- 14 送料無料ラインの決め方5STEP
- 15 商材によって送料無料の考え方は変わる
- 16 送料無料ラインを低くしすぎるとどうなる?
- 17 送料無料ラインを高くしすぎても効果が出にくい
- 18 北海道・沖縄・離島の送料は分けてもいい?
- 19 送料を商品価格に含めて「送料無料」にする方法は?
- 20 送料負担を改善する7つの方法
- 21 送料無料ライン変更後に見るべき8つの数字
- 22 送料無料施策をテストするときの考え方
- 23 送料だけでなく値引き・広告費も一緒に確認しよう
- 24 送料無料と損益分岐点の関係
- 25 ECサイトの送料についてよくある質問
- 26 送料からECの利益改善をさらに進める
- 27 まとめ|送料無料ラインは「売上」ではなく「利益」から決めよう
ECサイトの送料は利益にどれくらい影響する?
送料は1件あたり数百円なので、EC全体の売上から見ると小さな金額に感じるかもしれません。しかし、注文件数が増えるほど利益への影響は大きくなります。
例えば、商品価格3,000円、粗利率40%、粗利1,200円、送料700円の商品を考えてみましょう。お客様が送料を負担しているのであれば、商品から得られる粗利は1,200円です。
ところが、送料無料にしてショップ側が700円を負担すると、送料負担後に残る粗利は次のようになります。
粗利1,200円-送料700円=500円

送料だけで粗利の半分以上がなくなりました。しかも、実際のEC運営ではここから決済手数料、梱包資材費、出荷費、広告費、ポイント、クーポン、人件費、システム費なども発生します。
つまり、「粗利率40%の商品だから送料無料にしても大丈夫」とは限りません。
「送料無料」でも送料が0円になるわけではない
ECサイトで「送料無料」と表示されていても、配送そのものが無料になるわけではありません。送料は誰かが負担しています。
基本的には、「お客様が送料を支払う」「ショップが送料を負担する」「商品価格などに送料相当額を含める」という3つの考え方があります。
つまり送料無料とは、「送料がなくなる」のではなく、「誰が送料を負担するかが変わる」と考えた方がわかりやすいでしょう。
ショップ側が送料を負担するなら、そのコスト以上に購入率や客単価、注文件数などを改善できるかを見る必要があります。
送料を見るときは「配送会社へ払う金額」だけで考えない
送料による利益への影響を正確に把握するなら、配送会社へ支払う運賃だけではなく、商品を購入者へ届けるために発生する関連コストまで確認しておきましょう。
- 配送運賃:配送会社へ支払う料金
- 梱包資材費:段ボール、封筒、緩衝材など
- 出荷作業費:ピッキング、梱包、発送作業など
- 物流代行費:外部倉庫を利用している場合の出荷関連費用
- 再配送・返品関連費:発生している場合は実態を確認
例えば配送運賃700円でも、梱包資材100円、出荷作業費150円が発生しているなら、1注文を届けるための配送関連コストは850円以上になります。
配送運賃700円+梱包資材100円+出荷作業費150円=850円
送料無料ラインを計算するときに配送運賃700円だけを使うと、実際より利益が残るように見える場合があります。自社でどこまでを送料関連コストとして管理するかを決め、毎月同じ基準で確認することが大切です。
ECサイトの送料設定は主に5パターン
ネットショップの送料設定にはいくつかの方法があります。代表的なのは次の5つです。
1.全国一律送料
「全国一律700円」のように、配送先に関係なく同じ送料を設定する方法です。お客様にとってわかりやすく、ショップ側でも管理しやすい一方、実際の配送費は地域によって異なるため、遠方への配送が多い場合にはショップ側の負担が大きくなることがあります。
2.地域別送料
関東、関西、北海道、沖縄など、配送地域によって送料を変える方法です。実際の配送コストに近づけやすい一方、全国一律送料より設定が複雑になります。
3.サイズ・重量別送料
商品の大きさや重量によって送料を変える方法です。大型商品や重量のある商品を扱うECでは検討したい方法です。
4.一定金額以上で送料無料
「3,980円以上で送料無料」「5,000円以上で送料無料」といった設定です。購入者に追加購入を促し、客単価を上げられる可能性があります。この記事では、この送料無料ラインについて詳しく解説します。
5.全品送料無料
すべての商品を送料無料にする方法です。購入者にはわかりやすい一方、ショップ側が送料を負担する場合には、利益への影響を十分に計算しておく必要があります。
どの方式が正解ということではありません。商品単価、粗利率、商品のサイズ、配送地域、平均客単価などによって適した送料設定は変わります。
送料無料ラインとは?
送料無料ラインとは、「○円以上購入すると送料無料」となる基準金額です。例えば「5,000円以上の購入で送料無料」であれば、5,000円が送料無料ラインになります。
送料無料ラインには単に送料を無料にするだけでなく、「あと500円買えば送料無料になる」「送料700円を払うなら商品をもう1点買おう」といった追加購入を促す役割があります。
つまり、送料無料ラインは「送料設定」であると同時に「客単価を上げる施策」でもあります。そのため、送料無料ラインを決めるときは送料だけを見るのではなく、現在の平均客単価との関係まで確認することが重要です。
送料無料ラインはいくらに設定すればいい?
送料無料ラインを考える方法の一つが、「送料÷粗利率」です。
例えば、平均送料700円、粗利率40%なら次のようになります。
700円÷0.4=1,750円
売上1,750円に対して粗利率40%なら、粗利は700円です。
1,750円×40%=700円
つまり、粗利700円で送料700円を吸収できる計算です。この考え方は、送料負担を粗利で吸収するために必要な売上を考える入口としてはわかりやすい方法です。
しかし、ここで注意してください。1,750円をそのまま送料無料ラインにすればよい、という意味ではありません。
「送料÷粗利率」だけで送料無料ラインを決めてはいけない
先ほどの例をもう一度見てみましょう。売上1,750円、粗利率40%なら粗利は700円です。ここからショップが送料700円を負担します。
粗利700円-送料700円=0円

送料は粗利で吸収できました。しかし、送料負担後の粗利は残っていません。さらに、実際には決済手数料や梱包費、広告費などが発生する可能性があります。
つまり、「送料を粗利で吸収できる最低金額」=「利益を確保できる適正な送料無料ライン」ではありません。
ECサイトの粗利率や粗利の計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
ECサイトの粗利率とは?計算方法・目安と利益を残す7つの改善方法
利益を残す送料無料ラインはどう考える?
送料無料ラインを考えるなら、送料を吸収するだけではなく、送料負担後に必要な利益まで残せるかを確認します。
簡易的には、次のように考えることができます。
必要売上の目安=(送料+送料無料によって確保したい追加利益)÷粗利率
例えば送料700円を負担しながら、送料無料による追加購入部分から300円の利益余力を確保したいとします。粗利率40%なら、必要な追加売上は次のようになります。
(送料700円+確保したい利益300円)÷0.4=2,500円
現在の平均客単価が3,000円なら、単純計算では5,500円まで購入金額が増えれば、追加購入部分の粗利1,000円から送料700円を負担し、300円を残せます。
ただし、これも最終的な送料無料ラインを自動的に決める式ではありません。追加購入によって決済手数料などが増える場合もありますし、5,500円という金額が購入者にとって現実的なラインかどうかも確認する必要があります。
送料無料ラインは「客単価」と「追加粗利」から考える
実際に送料無料ラインを決めるときに重要なのが、現在の平均客単価と、送料無料ラインまで追加購入されたことで増える粗利です。
例えば、平均客単価3,000円、送料無料ライン4,000円、平均送料700円、粗利率40%のECサイトを考えてみましょう。
送料無料にするために1,000円分を追加購入してもらった場合、増える粗利は次のようになります。
追加購入1,000円×粗利率40%=追加粗利400円
一方、送料無料になることでショップが700円の送料を負担します。
追加粗利400円-送料700円=▲300円

客単価だけを見ると3,000円から4,000円へ1,000円も増えています。しかし、送料負担まで含めると、1注文あたりの利益はむしろ減る可能性があります。
ここが送料無料施策で特に注意したいポイントです。
【具体例】3,980円送料無料は本当に得なのか?
送料無料ラインとして「3,980円」という金額を見かけることがあります。しかし、自社ECでも3,980円に設定すれば利益が増えるとは限りません。
例えば、平均客単価3,000円、粗利率40%、平均送料700円のECサイトがあるとします。分かりやすくするため、送料無料ライン到達後の注文金額を4,000円として比較してみましょう。
送料無料導入前
注文金額3,000円、粗利率40%なら粗利は1,200円です。送料をお客様が負担する場合、送料を考慮する前の粗利は1,200円残ります。
送料無料導入後
注文金額が4,000円まで増えると、粗利率40%なら粗利は1,600円です。しかし、ショップが送料700円を負担すると、送料負担後の粗利は900円になります。
| 項目 | 送料無料導入前 | 送料無料導入後 |
|---|---|---|
| 注文金額 | 3,000円 | 4,000円 |
| 粗利率 | 40% | 40% |
| 粗利 | 1,200円 | 1,600円 |
| ショップ送料負担 | 0円 | 700円 |
| 送料負担後の粗利 | 1,200円 | 900円 |
つまり、客単価は1,000円増えたのに、送料負担後の粗利は300円減っています。
だからこそ、「客単価が上がった=送料無料施策が成功した」とは判断できません。
それでも送料無料にする価値があるケース
ここまで読むと「それなら送料無料にしない方がいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、必ずしもそうではありません。
送料無料によってCVRが上がる、注文件数が増える、まとめ買いが増える、新規顧客を獲得しやすくなる、リピートにつながるのであれば、1注文あたりの利益が多少減ってもショップ全体の利益が増える可能性があります。
例えば、送料無料導入前が100注文、1注文あたりの送料負担後粗利1,200円だったとします。
100件×1,200円=120,000円
送料無料導入後に1注文あたり900円へ減っても、注文数が150件まで増えれば次のようになります。
150件×900円=135,000円
この場合、1注文あたりの金額だけを見ると悪化していますが、全体では15,000円増えています。
実際には広告費や決済手数料などもあるため、これだけで最終利益とはいえません。しかし重要なのは、送料無料の成否を1注文だけで判断せず、ショップ全体の利益まで確認することです。
送料無料にすると注文が何件増えれば元が取れる?
送料無料施策を判断するときは、客単価だけでなく「1注文あたりの利益が減る代わりに、注文が何件増えれば導入前と同じ利益を確保できるのか」を確認すると分かりやすくなります。
先ほどの例では、送料無料導入前の1注文あたり粗利が1,200円、送料無料導入後が900円でした。導入前に100件の注文があるなら、粗利合計は12万円です。
100件×1,200円=120,000円
送料無料導入後に同じ12万円を確保するために必要な注文数は、次のように計算できます。
120,000円÷900円=約134件
つまり、この条件では注文数が100件から約134件以上へ増えて、ようやく送料負担後の粗利が導入前と同程度になります。約34%の注文増が必要です。
サイトへのアクセス数が変わらないと仮定すれば、これはCVRにも大きな改善が必要ということです。
エビス店長なら送料無料施策でこの7項目を見ます
私が送料無料ラインを見直す場合、単に「送料無料にしたら売上が増えたか」だけでは判断しません。最低限、次の7項目を確認します。
- ① 平均客単価:送料無料導入前後で1注文あたりの購入金額がどう変化したか
- ② 平均送料:実際にショップが1注文あたりいくら負担しているか
- ③ 粗利率・粗利額:追加購入によってどれだけ粗利が増えたか
- ④ 送料無料注文率:全注文のうちショップが送料を負担する注文がどれくらいあるか
- ⑤ CVR・注文件数:送料無料によって購入率や注文数が増えたか
- ⑥ 1注文あたり利益:送料負担によって1件あたりの利益がどう変わったか
- ⑦ 最終利益:送料やその他の費用を含めてショップ全体の利益が増えたか

送料無料ラインの決め方5STEP
ここまでを踏まえて、自社の送料無料ラインを決める方法を5STEPで整理します。
STEP1.現在の平均客単価を確認する
まず現在の平均客単価を確認します。基本的な計算式は「売上÷注文件数」です。
例えば、月商300万円、注文件数1,000件なら次のようになります。
300万円÷1,000件=平均客単価3,000円
送料無料ラインには追加購入を促す役割があるため、現在の客単価を知らずに金額を決めるのはおすすめしません。
STEP2.実際の平均送料を確認する
次に、ショップが実際に負担している平均送料を確認します。配送会社の料金表だけを見るのではなく、自社が実際に支払った配送費から確認することが重要です。
平均送料=配送費合計÷出荷件数
例えば、1か月の配送費が70万円、出荷件数が1,000件なら平均送料は700円です。配送地域や商品のサイズによって平均送料は変わるため、自社の実績を使いましょう。
STEP3.粗利率を確認する
次に粗利率を確認します。可能であればショップ全体の平均だけでなく、送料無料ライン到達のために追加購入されやすい商品の粗利率も確認してください。
例えば「あと500円で送料無料」という場面で追加される商品が低粗利商品ばかりなら、売上は増えても思ったほど粗利は増えません。
STEP4.送料を吸収するために必要な追加購入額を計算する
一つの目安として使えるのが、次の計算です。
必要追加購入額=ショップ負担送料÷追加購入商品の粗利率
例えば、平均送料700円、追加購入商品の粗利率40%なら次のようになります。
700円÷0.4=1,750円
現在の平均客単価が3,000円なら、単純計算では3,000円+1,750円=4,750円が一つの検討材料になります。
ただし、4,750円をそのまま送料無料ラインにすればよいわけではありません。購入者にとって到達しやすい金額か、商品構成上まとめ買いしやすいか、その他の費用を差し引いても利益が残るかまで確認します。
STEP5.複数の候補を作って検証する
送料無料ラインは計算だけで完全な正解を出すのが難しい施策です。例えば3,980円、4,500円、5,000円など複数の候補を検討し、実際の数字で判断します。
変更後はCVR、平均客単価、注文件数、送料無料注文率、平均送料、粗利額、1注文あたり利益、最終利益などを確認しましょう。

商材によって送料無料の考え方は変わる
送料無料ラインには、すべてのECサイトで共通する正解はありません。特に商品単価、粗利、購入頻度、配送サイズによって考え方は大きく変わります。
| 商材の特徴 | 送料設計で確認したいこと |
|---|---|
| 低単価商品 | 送料の比率が高くなりやすいため、まとめ買いや送料無料ラインとの相性を確認 |
| 高単価商品 | 商品粗利で送料を吸収できるかを確認し、全品送料無料も選択肢 |
| リピート商材 | 初回注文だけでなく、その後のLTVまで含めて送料負担を判断 |
| 大型・重量商品 | 地域やサイズによる送料差が大きいため、一律送料無料は慎重に判断 |
| 食品・冷蔵冷凍商品 | 通常配送より配送コストが高くなりやすいため、温度帯別の実費を確認 |
| セット販売しやすい商品 | まとめ買いで1配送あたりの売上・粗利を増やせるか確認 |
例えば低単価商品では、1商品だけ購入されると商品価格に対する送料の割合が大きくなりやすいため、送料無料ラインによるまとめ買い促進が機能しやすい場合があります。一方、大型商品では追加購入を促すよりも、商品ごと・地域ごとの送料を適切に設定した方が利益を管理しやすいケースもあります。
送料無料ラインを低くしすぎるとどうなる?
送料無料ラインは低いほど購入者に喜ばれるように思えます。しかし、低すぎる設定には注意が必要です。
例えば平均客単価が3,000円なのに「2,500円以上送料無料」にすると、もともと平均的な注文が送料無料条件を超えています。
つまり、多くのお客様は追加購入しなくても送料無料になります。ショップ側から見ると、客単価を引き上げる効果がほとんどないのに送料負担だけ増える可能性があります。
送料無料ラインを高くしすぎても効果が出にくい
反対に、高ければよいわけでもありません。例えば平均客単価3,000円なのに送料無料ラインが10,000円なら、送料無料になるためにはあと7,000円購入しなければなりません。
これでは「あと1点買おう」という動機につながりにくくなります。
送料無料ラインは、低すぎると送料負担だけが増えやすく、高すぎると追加購入を促しにくいという性質があります。現在の客単価と商品単価を見ながら、購入者が現実的に到達できる金額を探していきましょう。
北海道・沖縄・離島の送料は分けてもいい?
全国一律で送料無料にすると、配送先によっては送料負担が大きくなる場合があります。特に出荷拠点から遠い地域や、配送コストが高くなりやすい地域への注文が多いショップでは注意が必要です。
送料設計としては、全国一律送料だけでなく、地域別送料、一部地域のみ追加送料、一部地域を送料無料対象外にするなど複数の方法があります。
重要なのは、全国一律にするかどうかより、実際の配送地域別コストを把握したうえで判断することです。
送料を商品価格に含めて「送料無料」にする方法は?
もう一つの方法が、送料相当額を商品価格に含めることです。
例えば「商品3,000円+送料700円」ではなく、「商品3,700円・送料無料」として販売する考え方です。
購入画面で追加送料が発生しないため、購入者に支払総額が伝わりやすくなる一方、商品一覧や検索結果で競合商品と比較されたときには商品価格そのものが高く見える可能性があります。
また、複数商品を同時購入した場合に、各商品へ送料相当額を上乗せしていると割高になる可能性もあります。単品購入が多いのか、まとめ買いが多いのかまで確認して設計しましょう。
そのため、「送料無料と表示した方が売れそうだから」という理由だけで決めず、競合商品の価格や自社商品の価格競争力まで含めて判断することが重要です。
送料負担を改善する7つの方法
送料負担が利益を圧迫している場合、単純に送料を値上げするだけが改善方法ではありません。
1.送料無料ラインを見直す
現在の客単価より低すぎないか、送料負担後に必要な利益が残っているかを確認します。
2.送料無料対象商品を見直す
大型商品や低粗利商品など、送料無料にすると利益を確保しにくい商品まで一律で送料無料にする必要があるかを確認します。
3.セット商品を作る
関連商品をセットにすることで、1配送あたりの売上と粗利を増やせる可能性があります。送料そのものを下げるだけでなく、送料に対する粗利額を増やす考え方です。
4.まとめ買いを促す
「あと○円で送料無料」と表示するなど、送料無料ラインまでの不足金額を分かりやすくすることで追加購入を促します。関連商品や買い足しやすい低単価商品を一緒に提案する方法もあります。
5.梱包サイズを見直す
商品のサイズに対して梱包箱が大きすぎる場合、配送コストが上がることがあります。安全に配送できる範囲で梱包サイズを見直します。
6.地域別送料を検討する
全国一律送料によって特定地域への配送で利益が大きく減っている場合は、地域別の送料設定も検討します。
7.配送契約を見直す
出荷量が増えているのに、ショップ開設初期の配送条件をそのまま使っているケースもあります。現在の出荷量、荷物サイズ、配送地域に対して契約条件が合っているかを定期的に確認しましょう。
送料は「お客様からいくらもらうか」だけではなく、1配送あたりの売上・粗利を増やすことと、実際の配送コストを下げることの両面から改善できます。
送料無料ライン変更後に見るべき8つの数字
送料無料ラインは設定して終わりではありません。むしろ、変更後の数字を見るところからが重要です。
| 指標 | 確認すること |
|---|---|
| CVR | 送料無料によって購入率が改善したか |
| 平均客単価 | 追加購入・まとめ買いが増えたか |
| 注文件数 | 注文そのものが増えたか |
| 送料無料注文率 | 全注文のうち何%をショップが送料無料にしているか |
| 平均送料 | 1件あたりの実際の配送負担はいくらか |
| 1注文あたり粗利 | 送料負担後に1件あたりいくら残っているか |
| 粗利総額 | 注文増加によってショップ全体の粗利が増えたか |
| 最終利益 | 送料やその他の費用を差し引いたあと本当に利益が増えたか |
「売上が増えた」「客単価が上がった」「CVRが改善した」は、どれも良い変化です。しかし、利益改善が目的なら最終的に、「送料無料ラインを変えたことで利益額はいくら増えたか」まで確認しましょう。
送料無料施策をテストするときの考え方
送料無料ラインは、変更前後の数字を比較できる状態にしてからテストすることをおすすめします。変更後の売上だけを見ても、その増加が送料無料によるものなのか、広告、セール、季節要因などによるものなのか判断しにくいためです。
- 変更前のCVR・客単価・注文件数・粗利・利益を記録する
- 送料無料ラインを変更する
- 一定期間データを蓄積する
- セールや広告増額など他の大きな変更も記録する
- 変更前後のCVR・客単価・注文数を比較する
- 送料負担増加額を計算する
- 最後に粗利総額・最終利益が増えたか確認する
可能であれば前年同時期や近い条件の期間とも比較すると、季節要因の影響を確認しやすくなります。
送料だけでなく値引き・広告費も一緒に確認しよう
送料無料は単独で実施されるとは限りません。実際のECでは、送料無料に加えてクーポン、ポイント、広告などを同時に使うケースがあります。
例えば、4,000円の注文に対して700円の送料をショップが負担し、さらに10%OFFクーポンを発行している場合、送料だけを見ていると利益への影響を過小評価してしまいます。
送料無料によって利益が減っているように見える場合も、原因が送料だけとは限りません。広告費や値引きなど、売上を作るために使っている費用をまとめて確認することが重要です。
送料無料と損益分岐点の関係
ショップが負担する送料が注文件数に応じて増える場合、送料はEC事業の変動費の一つとして考えることができます。
送料無料によって1注文あたりの変動費が増えると、売上から残る限界利益が減り、黒字になるために必要な売上が上がる可能性があります。
送料負担増加 → 変動費増加 → 限界利益率低下 → 損益分岐点上昇
送料無料によって売上が増えていても、送料負担の増加によって黒字ラインまで高くなっている可能性があります。EC事業全体の採算を確認するときは損益分岐点も一緒に確認してみましょう。
ECサイトの損益分岐点とは?計算方法と黒字になる売上を具体例で解説【2026年】
ECサイトの送料についてよくある質問
ネットショップの送料はいくらが目安ですか?
一律の目安はありません。商品のサイズ・重量、配送地域、配送会社との契約運賃、梱包費などによって実際の配送コストは変わります。他店の送料だけを参考にするのではなく、自社の実際の平均送料を確認して設定することをおすすめします。
送料無料ラインはいくらに設定すればいいですか?
平均客単価、粗利率、平均送料、追加購入されやすい商品単価などから考えます。「送料÷粗利率」で送料を粗利で吸収するために必要な売上を計算できますが、それだけでは十分ではありません。その他の費用や残したい利益まで含めて判断しましょう。
送料無料ラインは平均客単価の何倍がいいですか?
平均客単価に一定倍率を掛けて候補を作る方法もありますが、倍率だけで決めるのはおすすめしません。送料無料ラインまでの追加購入によって増える粗利と、ショップが負担する送料を比較して判断することが重要です。
送料無料にすると売上は上がりますか?
購入時の送料負担がなくなることで購入のハードルが下がったり、送料無料ラインまでの追加購入が発生したりする可能性があります。一方、売上が増えても送料負担によって利益が減るケースがあります。売上だけでなく、CVR、客単価、注文件数、最終利益まで確認しましょう。
送料無料にするとCVRは上がりますか?
送料負担が購入をためらう原因になっているECでは、送料無料によってCVRが改善する可能性があります。ただし、改善幅は商材、価格、競合、送料額などによって異なります。自社では送料無料導入前後のCVRと利益を比較して判断してください。
3,980円以上送料無料にすればいいですか?
3,980円という数字だけを自社ECへそのまま当てはめる必要はありません。平均客単価や粗利率、平均送料によって適切な送料無料ラインは変わります。モール固有の制度と、自社ECの採算から決める送料無料ラインは分けて考えましょう。
全品送料無料と条件付き送料無料はどちらがいいですか?
商品単価や粗利率、配送コストなどによって異なります。商品単価や粗利が高く、商品価格で送料を吸収しやすい場合は全品送料無料が成立する可能性があります。一方、低単価商品を扱うショップでは、一定金額以上を送料無料にすることで送料負担を抑えながらまとめ買いを促す方法も考えられます。
送料無料にするなら商品価格を上げてもいいですか?
送料相当額を商品価格へ含める方法もあります。ただし、商品一覧や検索結果では商品価格そのものが高く見える可能性があります。また、複数購入時に割高にならないかも確認が必要です。支払総額だけでなく競合との価格比較や購入パターンまで見て判断しましょう。
送料無料をやめると売上は下がりますか?
送料無料が購入理由の一つになっている場合は、CVRや注文件数が低下する可能性があります。そのため、いきなり廃止するのではなく、送料無料ラインの引き上げ、対象商品の限定、地域別送料など複数の方法を検討し、変更後の利益まで確認することをおすすめします。
送料からECの利益改善をさらに進める
送料を確認したら、それだけで終わらせず、EC事業全体の利益を圧迫している費用も一緒に確認してみましょう。
まとめ|送料無料ラインは「売上」ではなく「利益」から決めよう
送料無料は、お客様にとって分かりやすく、購入を後押しできる施策です。しかし、「競合が送料無料だから」「3,980円をよく見るから」「送料無料にしたら売上が増えそうだから」という理由だけで決めると、売上は増えているのに利益が減る可能性があります。
送料無料ラインを考えるときは、平均客単価、平均送料、粗利率、追加購入によって増える粗利、CVR・注文件数、1注文あたり利益、最終的に残る利益まで確認してください。
特に覚えておきたいのは、「送料÷粗利率」で出した金額は、送料を粗利で吸収するために必要な売上の目安にすぎないという点です。利益を残すなら、そこからさらにその他のコストや必要利益まで考える必要があります。
また、送料無料によって1注文あたりの利益が減る場合は、「注文数が何件増えれば送料無料導入前と同じ利益を確保できるのか」まで計算すると、送料無料施策に必要な改善幅が見えてきます。
送料だけでなく、原価、広告費、値引き・クーポン、人件費、システム費なども含めてEC全体の利益構造を見直したい場合は、以下の記事で利益が残らない原因と改善方法をまとめています。
「売上は伸びているのに利益が残らない」「送料無料ラインが適正なのか分からない」「送料を含めてEC全体のコストを見直したい」という場合は、現在の数字を整理しながら改善ポイントを一緒に確認することもできます。