
「10%OFFくらいなら、それほど利益には影響しないだろう」「セールで売上が伸びているから成功している」「競合が20%OFFをしているから、うちも同じくらい値引きした方がいい」ECを運営していると、値引きやクーポンを使う機会は少なくありません。
楽天市場などのモールでも、セールやクーポン、ポイントアップは売上を伸ばすきっかけになります。しかし、値引きで特に注意したいのが、売上よりも利益の方が大きく減りやすいことです。
例えば、5,000円で販売している商品の原価が3,000円なら、通常時の粗利は2,000円です。この商品を10%OFFにすると販売価格は4,500円になりますが、原価は3,000円のままなので粗利は1,500円になります。
販売価格は10%OFFでも、粗利額は2,000円→1,500円となり25%減少します。

値引きをするときに本当に見るべきなのは、「何%OFFなら売れそうか」だけではありません。値引きによって1注文あたりの利益はいくら減るのか、減った利益を取り戻すには何件多く売る必要があるのか、送料・広告費・ポイントなどを含めても利益は残るのかまで計算することが重要です。
この記事では、10%OFF・20%OFF・30%OFFの具体例を使いながら、ECサイトで値引きやクーポンを実施すると利益がどのように変わるのか、適正な割引率をどう考えればよいのかをわかりやすく解説します。
- 1 ECの値引きは「売上」より「利益」への影響が大きい
- 2 なぜ10%OFFで粗利が25%も減るのか?
- 3 10%OFF・20%OFF・30%OFFで利益はいくら減る?
- 4 「粗利が残る値引き」と「最終利益が残る値引き」は違う
- 5 値引き前と同じ利益を残すには何個売ればいい?
- 6 粗利率が低い商品ほど値引きは危険
- 7 何%まで値引きできる?上限割引率を逆算する
- 8 クーポンも利益計算の考え方は同じ
- 9 10%OFFと500円OFFはどちらがいい?
- 10 クーポンの最低購入金額はどう決める?
- 11 「10%OFF+送料無料」はさらに利益を削る
- 12 「クーポン+ポイント+広告」の重ね掛けにも注意
- 13 値引きしても利益が増えるケースはある
- 14 新規顧客向けクーポンは「初回利益」だけで判断しない
- 15 在庫処分なら利益率だけで判断しなくてもいい
- 16 値引きは「誰に配るか」でも利益が変わる
- 17 値引きの目的別に見るべき数字を変える
- 18 エビス店長なら値引き前にこの7項目を確認します
- 19 ECの割引率を決める5STEP
- 20 セール前に簡単な利益シミュレーションを作ろう
- 21 値引き以外の方法も検討する
- 22 値引き・クーポン実施後に見るべき9つの数字
- 23 売上が増えたのに利益が減ったら値引きだけを見ない
- 24 ECの値引き・クーポンについてよくある質問
- 25 値引きからECの利益改善をさらに進める
- 26 まとめ|割引率は「何%なら売れるか」ではなく「何%まで利益を残せるか」で決める
ECの値引きは「売上」より「利益」への影響が大きい
まず理解しておきたいのが、値引きと利益の関係です。例えば、販売価格5,000円、商品原価3,000円の商品であれば、通常時の粗利は2,000円、粗利率は40%です。
| 項目 | 通常価格 | 10%OFF |
|---|---|---|
| 販売価格 | 5,000円 | 4,500円 |
| 商品原価 | 3,000円 | 3,000円 |
| 粗利額 | 2,000円 | 1,500円 |
| 粗利額の減少 | ― | 25%減 |
通常価格で販売すれば1個売れるごとに2,000円の粗利があります。10%OFFすると販売価格は4,500円ですが、商品原価は値引きしても3,000円のままです。そのため、値引き後の粗利は1,500円になります。
5,000円×10%=500円の値引き
4,500円-3,000円=粗利1,500円
500円÷2,000円=粗利額は25%減少
なぜ10%OFFで粗利が25%も減るのか?
理由は、値引き額が粗利から直接削られると考えると分かりやすくなります。先ほどの商品では、販売価格5,000円、原価3,000円、粗利2,000円でした。
500円値引きしても原価3,000円は変わりません。そのため、500円の値引きは2,000円あった粗利から差し引かれます。
粗利2,000円-値引き500円=値引き後の粗利1,500円
ECで値引きを考えるときは、「販売価格の何%を値引きするか」だけではなく、「現在の粗利のうち、何%を値引き原資として使うことになるのか」を見ることが大切です。
ECサイトの粗利率や粗利額の基本的な計算方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
ECサイトの粗利率とは?計算方法・目安と利益を残す改善方法を解説
10%OFF・20%OFF・30%OFFで利益はいくら減る?
では、値引き率によって粗利がどれくらい変わるのか比較してみましょう。先ほどと同じく、販売価格5,000円、原価3,000円、通常時の粗利2,000円、粗利率40%の商品で計算します。
| 割引率 | 販売価格 | 粗利額 | 通常時からの粗利減少率 |
|---|---|---|---|
| 通常価格 | 5,000円 | 2,000円 | ― |
| 10%OFF | 4,500円 | 1,500円 | 25%減 |
| 20%OFF | 4,000円 | 1,000円 | 50%減 |
| 30%OFF | 3,500円 | 500円 | 75%減 |
| 40%OFF | 3,000円 | 0円 | 100%減 |

20%OFFでは販売価格は5,000円から4,000円になりますが、粗利は2,000円から1,000円となり半分になります。30%OFFなら粗利は500円となり、通常時から75%減です。
さらに40%OFFすると、販売価格3,000円-原価3,000円=0円となり、商品原価だけで計算すれば粗利はゼロです。
「粗利が残る値引き」と「最終利益が残る値引き」は違う
値引き計算で特に注意したいのが、商品原価だけを差し引いた粗利と、EC運営に必要な費用まで差し引いた最終的な利益は違うという点です。
例えば、5,000円の商品を10%OFFして4,500円で販売し、商品原価が3,000円なら粗利は1,500円です。しかし、この1,500円がそのまま利益として残るわけではありません。
- 決済手数料
- モール・販売手数料
- ショップ負担の送料
- 梱包費・出荷費
- 広告費
- ポイント原資
- システム費
- 人件費
こうした費用が発生するため、「値引き後も粗利がプラスだから大丈夫」とは限りません。値引きの上限を決めるなら、商品原価だけでなく、その注文にかかる変動費まで確認しておくことが重要です。
値引き前と同じ利益を残すには何個売ればいい?
値引きによって販売数が増えれば、1個あたりの粗利が減っても粗利総額を維持できる可能性があります。では、実際に何個多く売れば値引き前と同じ粗利総額になるのでしょうか。
通常価格5,000円、粗利2,000円の商品を100個販売した場合、粗利総額は次のとおりです。
2,000円×100個=200,000円
10%OFFなら約134個必要
10%OFFすると1個あたりの粗利は1,500円になります。20万円の粗利を確保するには、200,000円÷1,500円=約133.3個となるため、実際の商品数では少なくとも約134個必要です。
つまり、通常価格なら100個でよかったところを、10%OFFでは約34個多く販売して、ようやく元の粗利総額に届く計算です。
20%OFFなら200個必要
20%OFFすると1個あたりの粗利は1,000円になります。200,000円÷1,000円=200個なので、元の粗利総額を維持するには販売数を2倍にする必要があります。
30%OFFなら400個必要
30%OFFすると1個あたりの粗利は500円です。200,000円÷500円=400個となり、通常時の4倍を販売して、ようやく同じ粗利総額になります。

| 割引率 | 1個あたり粗利 | 20万円の粗利に必要な販売数 | 通常時から必要な販売増 |
|---|---|---|---|
| 通常価格 | 2,000円 | 100個 | ― |
| 10%OFF | 1,500円 | 約134個 | 約33.3%増 |
| 20%OFF | 1,000円 | 200個 | 100%増 |
| 30%OFF | 500円 | 400個 | 300%増 |
粗利率と値引き率が分かっている場合、元の粗利総額を維持するために必要な販売増加率は次の式でも計算できます。
必要販売増加率=値引き率÷(粗利率-値引き率)
粗利率40%なら、10%OFFでは約33.3%増、20%OFFでは100%増、30%OFFでは300%増が一つの損益分岐になります。
損益分岐点そのものの考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
ECサイトの損益分岐点とは?計算方法と黒字になる売上を具体例で解説【2026年】
粗利率が低い商品ほど値引きは危険
同じ10%OFFでも、すべての商品で利益への影響が同じになるわけではありません。値引き前の粗利率によって影響は大きく変わります。
販売価格5,000円の商品を10%OFFした場合で比較してみましょう。
| 通常時の粗利率 | 通常粗利 | 10%OFF後の粗利 | 粗利額の減少率 |
|---|---|---|---|
| 60% | 3,000円 | 2,500円 | 約16.7%減 |
| 40% | 2,000円 | 1,500円 | 25%減 |
| 20% | 1,000円 | 500円 | 50%減 |

粗利率20%の商品では、わずか10%OFFしただけで粗利額が半分になります。そのため、「全商品10%OFF」のような一律値引きでは、粗利率の高い商品では問題がなくても、低粗利商品ではほとんど利益が残らない可能性があります。
何%まで値引きできる?上限割引率を逆算する
「10%OFFにするか20%OFFにするか」を先に決めるのではなく、最低限残したい利益から値引きできる上限額を逆算する方法もあります。
例えば販売価格5,000円、原価3,000円の商品で、値引き後も商品原価を差し引いて最低1,000円の粗利を残したいとします。
通常粗利=5,000円-3,000円=2,000円
値引き可能額=2,000円-残したい粗利1,000円=1,000円
1,000円÷5,000円=20%
商品原価だけで計算するなら、この条件では20%OFFが上限の目安になります。
ただし、実際には送料、決済手数料、広告費、ポイントなどもあります。そのため、より実務的には次のように考えます。
値引き可能額=通常時の1注文あたり利益-値引き後に最低限残したい利益
上限割引率=値引き可能額÷通常販売価格×100
つまり、「何%OFFなら売れるか」ではなく、「何%OFFまでなら必要な利益を守れるか」から割引率を決めることができます。
クーポンも利益計算の考え方は同じ
ここまでは「値引き」として説明してきましたが、ショップ側が割引分を負担するクーポンも基本的な考え方は同じです。
例えば5,000円の商品に10%OFFクーポンを使用された場合、割引額は500円です。原価3,000円なら、通常粗利2,000円に対してクーポン利用後の粗利は1,500円になります。
クーポンという名称になると「販促費だから別」と考えたくなるかもしれません。しかし、EC運営の採算を見るなら、その注文から最終的にいくら残ったのかを見る必要があります。
10%OFFと500円OFFはどちらがいい?
クーポンには「10%OFF」のような定率割引と、「500円OFF」のような定額割引があります。どちらが有利かは注文金額によって変わります。
例えば500円OFFの場合、注文金額ごとの実質割引率は次のようになります。
| 注文金額 | 500円OFFの実質割引率 |
|---|---|
| 2,000円 | 25%OFF |
| 3,000円 | 約16.7%OFF |
| 5,000円 | 10%OFF |
| 10,000円 | 5%OFF |
定額クーポンは注文金額が低いほど実質割引率が高くなります。そのため、500円OFFクーポンを無条件で配ると、低単価注文では想定以上に利益を削る可能性があります。
反対に定率クーポンでは、高額注文ほど割引額が大きくなります。例えば10%OFFなら5,000円注文では500円ですが、20,000円注文では2,000円の値引きです。
クーポンの最低購入金額はどう決める?
定額クーポンでは、最低購入金額を設定することで利益への影響をコントロールしやすくなります。
例えば500円OFFクーポンを実質10%OFF以内に抑えたいのであれば、最低購入金額は5,000円です。
500円÷5,000円=10%
実質5%OFF以内にしたいなら、最低購入金額は10,000円になります。
500円÷10,000円=5%
もちろん実際には粗利率も確認する必要がありますが、「クーポン額÷許容する実質割引率」から最低購入金額の候補を考えることができます。
「10%OFF+送料無料」はさらに利益を削る
ECでは値引きだけでなく、「10%OFF+送料無料」のように複数の販促施策を組み合わせることがあります。この場合、値引きだけを見て採算を判断すると実際に残る利益を見誤る可能性があります。
販売価格5,000円、原価3,000円、通常粗利2,000円の商品を10%OFFすると、粗利は1,500円になります。さらにショップが送料700円を負担すると次のようになります。
通常粗利2,000円
↓ 10%OFFで500円減
粗利1,500円
↓ 送料700円をショップ負担
残り800円

通常販売時には2,000円あった粗利が、10%OFFと送料無料を組み合わせただけで800円まで減りました。さらにここから決済手数料、広告費、ポイント、モール手数料、梱包費などが発生する可能性があります。
送料無料ラインや送料負担の考え方については、以下の記事で詳しく解説しています。
ECサイトの送料はいくらが適正?送料無料ラインの決め方と利益計算【2026年】
「クーポン+ポイント+広告」の重ね掛けにも注意
特にモール運営では、クーポンだけでなく、ポイントアップ、広告出稿、送料無料など複数の販促施策を同時に実施するケースがあります。一つひとつは売上を伸ばすために必要な販促費に見えても、すべてを合計すると利益を大きく圧迫していることがあります。
私が実際に支援した楽天市場の食品ECでも、これに近いケースがありました。月商規模は約1,000万円あり、売上だけを見れば十分に売れているショップでしたが、広告費を使い、ポイント施策を行い、さらにクーポンも積極的に実施していました。
数字を整理してみると、利益率は1%も残っていませんでした。月商1,000万円という数字だけを見ると「売れているEC」に見えますが、その売上を作るためにいくら使ったのかまで確認しなければ、本当に儲かっているかは判断できません。
広告費についてもROASだけで判断するのではなく、粗利やLTVまで含めて考える必要があります。詳しくは以下の記事で解説しています。
ECの広告費率は何%が目安?ROASだけでは判断できない理由
値引きしても利益が増えるケースはある
ここまで読むと、「それなら値引きはしない方がいいのでは?」と思うかもしれません。しかし、値引きそのものが悪いわけではありません。値引きによって販売数が十分に増えれば、1個あたりの粗利が減っても粗利総額が増えるケースがあります。
例えば、通常価格では100個×粗利2,000円=200,000円だった商品を10%OFFしたとします。値引き後の1個あたり粗利は1,500円ですが、150個販売できれば次のようになります。
通常販売:100個×2,000円=200,000円
10%OFF:150個×1,500円=225,000円
この場合、値引き後の方が粗利総額は25,000円増えています。つまり問題なのは値引きそのものではなく、1注文あたりの利益減少以上に販売数やCVRを伸ばせるかです。
新規顧客向けクーポンは「初回利益」だけで判断しない
値引きの目的によって、見る数字を変えることも大切です。例えば「新規顧客限定500円OFF」を実施した場合、初回注文だけを見れば500円分利益が減ります。
しかし、その顧客が2回、3回、4回と購入してくれるのであれば、LTVでは十分な利益を確保できる可能性があります。
そのため、通常セールなら値引き後の利益と販売数、新規顧客獲得クーポンなら獲得コスト・2回目購入率・LTV、リピーター向けクーポンなら再購入率や休眠復活率というように、値引きの目的によって評価する数字を変えることが重要です。
在庫処分なら利益率だけで判断しなくてもいい
在庫処分も考え方が異なります。例えば季節商品がシーズン終了間際に残っており、通常価格なら粗利2,000円、30%OFFなら粗利500円になるとします。
利益だけを比較すれば通常価格で販売した方が有利です。しかし、通常価格では売れず、そのまま在庫として残れば、保管コスト、廃棄リスク、型落ち、キャッシュの滞留などが発生する可能性があります。
その場合は、粗利500円でも今売った方が事業全体では合理的という判断もあり得ます。重要なのは「30%OFFだから悪い」と考えるのではなく、何のために30%OFFするのかを明確にすることです。
値引きは「誰に配るか」でも利益が変わる
クーポンでは、割引率だけでなく配布対象も重要です。もともと5,000円で購入する予定だったお客様に500円OFFクーポンを渡せば、その500円は購入を増やすための費用ではなく、単純に利益を減らしただけになる可能性があります。
一方で、初回購入を迷っている人、カートまで進んで離脱した人、一定期間購入していない既存顧客、あと少しで購入を決断しそうな人など、クーポンによって行動が変わる顧客へ絞れば、同じ500円でも意味が変わります。
割引率だけでなく「誰に・何のために使うか」まで設計する。これによって、クーポンを単なる値下げではなく販促施策として考えやすくなります。
値引きの目的別に見るべき数字を変える
すべての値引きを同じ基準で評価する必要はありません。値引きの目的によって成功を判断する数字は変わります。
| 値引きの目的 | 主に確認する数字 |
|---|---|
| 通常セール | CVR、販売数、粗利総額、最終利益 |
| 新規顧客獲得 | 新規顧客数、獲得コスト、2回目購入率、LTV |
| 休眠顧客の復活 | 再購入率、復活顧客数、再購入後のLTV |
| 客単価アップ | 平均客単価、セット率、粗利総額 |
| 在庫処分 | 在庫削減数、回収金額、保管・廃棄リスク |
例えば新規獲得クーポンを通常セールと同じように初回注文の利益だけで評価すると、将来のリピート価値を見落とす可能性があります。反対に、LTVが低い商材で「将来回収できるから」と初回赤字を許容するのも危険です。
エビス店長なら値引き前にこの7項目を確認します
私がECの値引きやクーポン施策を見るときは、最低限次の7項目を確認します。
- ① 通常販売価格:通常はいくらで販売している商品なのか
- ② 商品原価:商品そのものにいくら原価がかかっているか
- ③ 通常時の粗利率・粗利額:値引き前に1個販売するといくら粗利が残るか
- ④ 値引き後の粗利額:割引後に1個あたりいくら粗利が残るか
- ⑤ 同じ利益を残すために必要な販売数:値引き分を取り戻すため何個多く売る必要があるか
- ⑥ 送料・広告費・ポイントなどのコスト:値引き以外の販促費が重なっていないか
- ⑦ 値引きの目的:新規獲得、CVR改善、まとめ買い促進、在庫処分など何を目的とするか

ECの割引率を決める5STEP
では、実際に値引きやクーポンの割引率をどう決めればよいのでしょうか。基本的な流れを5STEPで整理します。
STEP1.通常時の粗利を計算する
まず「通常販売価格-商品原価」で通常時の粗利を計算します。販売価格5,000円、原価3,000円なら粗利は2,000円です。
STEP2.値引き後の粗利を計算する
次に割引後の販売価格から商品原価を引きます。5,000円の商品を10%OFFするなら販売価格は4,500円なので、4,500円-3,000円=粗利1,500円です。
STEP3.元の利益を維持するための必要販売数を計算する
通常販売100個で粗利20万円なら、「200,000円÷値引き後の1個あたり粗利」で必要販売数を計算します。今回の例なら10%OFFで約134個、20%OFFで200個、30%OFFで400個が目安になります。
STEP4.送料・広告・ポイントなどを加える
商品原価だけで利益計算を終わらせず、送料、決済手数料、モール手数料、広告費、ポイント、クーポン、梱包費なども確認します。粗利が残っていても、これらを差し引くと利益がほとんど残らないケースがあります。
STEP5.実施後は「利益総額」で評価する
セール終了後に「売上が増えた」で終わらせず、値引き後の販売数と利益を確認し、施策前より利益総額が増えたかまで検証します。

セール前に簡単な利益シミュレーションを作ろう
値引きを実施する前に、通常販売、10%OFF、20%OFFなど複数のケースを並べておくと判断しやすくなります。
| 確認項目 | 通常販売 | 値引き後 |
|---|---|---|
| 販売価格 | 現在価格 | 割引後価格 |
| 1注文あたり粗利 | 通常粗利 | 値引き後粗利 |
| 送料・手数料等 | 通常時 | 施策時 |
| 1注文あたり利益 | 通常時利益 | 値引き後利益 |
| 想定注文件数 | 通常時 | 施策時 |
| 利益総額 | 通常時利益×注文件数 | 値引き後利益×想定注文件数 |
この表を作っておけば、「10%OFFすると利益は減るが、注文が35%増えれば成立する」「20%OFFでは注文数が2倍近く必要なので難しい」といった判断ができます。
値引き率そのものよりも、その割引率で採算を合わせるために必要な販売増加が現実的かを見ることが重要です。
値引き以外の方法も検討する
「売れないから値引きする」という考え方だけでは、値引き依存になりやすくなります。値引き以外にも、セット販売、まとめ買い特典、ノベルティ、送料無料ライン、会員限定特典、次回購入クーポン、アップセル、クロスセルなど、購入を後押しする方法があります。
例えば、単品を10%OFFする代わりに「2個購入で特典」とすれば、客単価や粗利総額を維持しながら購入理由を作れる可能性があります。
値引きを始める前に、「価格を下げなくても購入理由を作れないか」を一度考えてみましょう。
値引き・クーポン実施後に見るべき9つの数字
値引き施策は実施して終わりではありません。少なくとも次の数字を施策前後で比較してください。
| 指標 | 確認すること |
|---|---|
| 売上 | 施策前と比べてどれだけ売上が増えたか |
| CVR | 値引きによって購入率が改善したか |
| 販売数・注文件数 | 利益減少を補えるだけ注文が増えたか |
| 平均客単価 | 値引きによって客単価が下がっていないか |
| クーポン利用率 | 配布したクーポンがどれくらい利用されたか |
| 粗利総額 | 期間全体の粗利はいくらになったか |
| 新規顧客数 | 新規獲得目的なら何人増えたか |
| リピート率・LTV | 新規向けクーポンがその後の購入につながったか |
| 最終利益 | 送料・広告・ポイントなどを含めても利益が増えたか |
例えば「売上前年比120%」という数字だけを見れば成功に見えます。しかし、値引きや広告費の増加によって利益が前年比70%になっているなら、利益改善を目的とした施策としては見直す余地があります。
売上が増えたのに利益が減ったら値引きだけを見ない
セール後に「売上は伸びたのに利益が減った」という結果になった場合、値引き率だけが原因とは限りません。
広告費を増やしていないか、送料無料注文が増えていないか、ポイント負担が増えていないか、人件費や出荷作業が増えていないかなど、売上を作るために増えた費用を一緒に確認する必要があります。
売上増加と利益減少が同時に起きている場合の確認項目については、以下の記事で詳しく整理しています。
ECの値引き・クーポンについてよくある質問
10%OFFすると利益も10%減りますか?
いいえ。値引きによる粗利額への影響は商品の粗利率によって変わります。例えば販売価格5,000円、原価3,000円、粗利2,000円の商品を10%OFFすると粗利は1,500円になるため、販売価格は10%下がりますが粗利額は25%減ります。
粗利率40%の商品を10%OFFすると粗利率はいくらになりますか?
通常価格5,000円、原価3,000円なら、10%OFF後の販売価格は4,500円、粗利は1,500円です。そのため値引き後の粗利率は「1,500円÷4,500円×100」で約33.3%です。「粗利額が25%減る」ことと「値引き後の粗利率が約33.3%になる」ことは別なので注意してください。
20%OFFしても利益は出ますか?
商品の原価やその他の費用によります。粗利率40%の商品なら商品原価だけで考えれば20%OFF後も粗利は残りますが、送料、決済手数料、広告費、ポイントなどを差し引くと利益がほとんど残らない場合があります。
クーポンは何%OFFがいいですか?
すべてのECサイトに共通する適正割引率はありません。通常時の粗利率、送料、広告費などを確認し、値引き後に最低限残したい利益から逆算して決めることをおすすめします。
何%まで値引きしても大丈夫ですか?
通常時の利益と、値引き後に最低限残したい利益から逆算します。商品原価だけではなく、送料、決済手数料、広告費、ポイントなども含めて「1注文あたり最低いくら残したいか」を決め、その範囲内で割引率を設定することが重要です。
10%OFFと500円OFFはどちらがいいですか?
商品価格や注文金額によって変わります。5,000円なら10%OFFと500円OFFは同じですが、3,000円で500円OFFなら約16.7%OFF、10,000円なら5%OFFです。定額クーポンでは最低購入金額、定率クーポンでは割引上限額を設定できないか確認すると利益を管理しやすくなります。
クーポンに最低購入金額は設定した方がいいですか?
定額クーポンでは特に検討したい設定です。例えば500円OFFを実質10%以内に抑えるなら、最低購入金額5,000円が一つの基準になります。ただし、最終的には商品ごとの粗利率やその他の費用まで含めて判断してください。
セールで売上が増えれば成功ですか?
売上だけでは判断できません。値引きによって1注文あたりの利益が減るため、販売数やCVRが増えても利益総額が減る場合があります。施策前後の粗利総額や最終利益まで比較してください。
値引きからECの利益改善をさらに進める
値引きやクーポンの採算を確認したら、EC事業全体で利益を圧迫している費用も一緒に確認してみましょう。
まとめ|割引率は「何%なら売れるか」ではなく「何%まで利益を残せるか」で決める
値引きやクーポンは、ECの売上を伸ばすために有効な販促施策です。しかし、「競合が10%OFFだから」「セールなので20%OFFにしよう」「売上を伸ばしたいからクーポンを配ろう」という感覚だけで割引率を決めると、売上は増えているのに利益が減る可能性があります。
今回の例では、粗利率40%の商品を10%OFFすると1商品あたりの粗利額は25%減りました。20%OFFなら粗利額は半分です。そして通常販売と同じ粗利総額を確保するには、10%OFFなら販売数約33.3%増、20%OFFなら100%増、30%OFFなら300%増が一つの目安になります。
値引きをするときは、「通常時の粗利 → 値引き後の粗利 → 元の利益を維持するために必要な販売数 → 送料・広告・ポイントなどの費用 → 最終的に残る利益」の順番で確認してみてください。
さらに、割引率を先に決めるのではなく、値引き後に最低限残したい利益から「何%まで値引きできるか」を逆算すると、利益を守りながらセールやクーポンを設計しやすくなります。
値引きだけでなく、原価、広告費、送料、物流費、人件費なども含めてEC全体の利益構造を見直したい場合は、以下の記事で利益が残らない原因と改善方法をまとめています。
「セールをすると売上は伸びるのに利益が残らない」「クーポンの割引率が適正なのか分からない」「広告費や送料まで含めて利益構造を見直したい」という場合は、現在の数字を整理しながら改善ポイントを確認することもできます。