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ECサイトの人件費を見直す方法|人件費率の計算と工数削減・自動化を解説

ECサイトの人件費を見直す方法|人件費率の計算と工数削減・自動化を解説

ECサイトの人件費を見直す方法|人件費率の計算と工数削減・自動化を解説

人件費率だけでは分からない|ECでは3つの数字をセットで見る

ECサイトの人件費を分析するときは、人件費率だけを見て「高い・安い」と判断しないことが重要です。私は少なくとも、売上に対する人件費率、粗利に対する人件費、1注文あたりの人的コストの3つをセットで確認します。

指標 計算方法 分かること
売上人件費率 人件費÷売上高×100 売上規模に対して人件費をどれくらい使っているか
粗利人件費率 人件費÷粗利額×100 商品から得た粗利のうち人件費がどれくらいを占めるか
1注文あたり人的コスト EC運営の人的コスト÷注文件数 1件の注文を処理するためにいくら人的コストを使っているか

例えば、月商1,000万円、粗利300万円、人件費100万円、月間注文件数2,000件なら次のようになります。

売上人件費率:100万円÷1,000万円×100=10%

粗利人件費率:100万円÷300万円×100=約33.3%

1注文あたり人的コスト:100万円÷2,000件=500円

ここで月商が1,500万円へ増えたとしても、注文件数が増えたことで人件費が150万円になっていれば、売上人件費率は10%のままです。売上は500万円増えていますが、運営効率そのものはほとんど改善していない可能性があります。

反対に、システム化や業務改善によって人件費を110万円程度に抑えながら月商1,500万円まで伸ばせれば、売上人件費率は約7.3%まで下がります。

エビス店長
ECの人件費改善では「人件費を何円減らしたか」だけでなく、「同じ人数・同じ時間でどれだけ多くの注文や売上を扱えるようになったか」も大切な指標です。売上が伸びても人件費が同じ割合で増え続ける仕組みになっていないか確認してみましょう。

ECの生産性を「売上100万円あたりの工数」で比較する

業務改善の効果を見る方法として、売上を作るために何時間の作業が必要だったかを継続して記録する方法もあります。

例えば月商1,000万円を200時間で運営しているなら、売上100万円あたりの工数は20時間です。

200時間÷1,000万円×100万円=20時間

業務改善後に月商1,200万円を180時間で運営できるようになれば、売上100万円あたりの工数は15時間になります。

180時間÷1,200万円×100万円=15時間

売上規模が変化すると総人件費だけでは運営効率を比較しにくくなりますが、このように一定の売上を作るために何時間必要なのかを見ると、生産性が改善しているかを確認しやすくなります。

ただし、売上だけでなく粗利率も変化するため、最終的には粗利や営業利益と一緒に確認してください。

工数削減はどこからやる?優先順位の決め方

業務を書き出すと、「受注処理も改善したい」「商品登録も自動化したい」「問い合わせ対応にもAIを使いたい」と改善候補がたくさん出てくることがあります。しかし、すべてを同時に変える必要はありません。

私は、EC業務を「作業時間」「発生頻度」「自動化しやすさ」「ミスした場合の影響」で整理して、改善効果が大きい業務から着手することをおすすめします。

業務 作業時間 発生頻度 改善優先度
注文データの転記 大きい 毎日 高い
在庫の手動更新 大きい 毎日 高い
定型問い合わせへの返信 中程度 毎日 高い
月次レポート作成 中程度 月1回 中程度
年1回だけ行う設定作業 小さい 年1回 低い

特に優先したいのが、「毎日発生する」「時間がかかる」「ルールが決まっている」業務です。1回数分の作業でも、注文のたびに発生しているなら年間では大きな工数になります。

改善優先度が高い業務=頻度が高い×時間がかかる×定型化しやすい

反対に、発生頻度が低く、判断が必要で、自動化してもほとんど時間を削減できない業務は後回しでも問題ありません。

人を増やす・システム化・外注|どれが得か比較する

注文数が増えて現在の担当者だけでは対応できなくなったとき、「新しく人を採用するべきか」「システムを導入するべきか」「外注するべきか」で迷うことがあります。

このとき、月額料金だけを比較するのではなく、その方法を選ぶことで何時間の社内工数が残るのかまで比較してください。

例えば、現在月40時間かかっている定型業務があるとします。社内の時間単価を2,500円とすると、現在の人的コストは月10万円相当です。

40時間×2,500円=月10万円相当

これに対して、月額3万円のシステムで30時間削減できるケース、月額6万円で外注して社内確認に5時間必要なケースを比較してみます。

方法 直接費用 残る社内工数 社内工数の換算 合計コストの考え方
現在の手作業 ― 40時間 100,000円 100,000円相当
システム 30,000円 10時間 25,000円 55,000円相当
外注 60,000円 5時間 12,500円 72,500円相当

この仮定ではシステム化のコストが最も低くなります。ただし、実際には初期費用、導入設定、教育、システムでは処理できない例外対応なども発生します。

また、外注には社内工数を大幅に減らせるメリットがあり、繁忙期だけ作業量が増える業務ではシステムより柔軟に対応できる場合もあります。

エビス店長
「月3万円のシステムは高い」「外注費6万円は高い」と料金だけで判断しないでください。今その作業に社内で何時間使っているのか、その時間を金額にするといくらなのかまで並べると、判断しやすくなります。

受注件数が増えているECは「1注文あたり処理時間」を測る

受注件数が多いECでは、1注文を処理するために何分かかっているのかを確認してみましょう。

例えば、受注確認から出荷処理まで1注文あたり平均5分の手作業が必要だとします。

月間注文件数 1件5分の場合の作業時間
500件 約42時間
1,000件 約83時間
3,000件 250時間
5,000件 約417時間
8,000件 約667時間

月500件のときには問題にならなかった5分の作業でも、月5,000件なら約417時間、8,000件なら約667時間になります。

仮にシステム化によって平均5分を2分まで短縮できれば、8,000件の場合は月400時間相当の差になります。

改善前:8,000件×5分=40,000分=約667時間

改善後:8,000件×2分=16,000分=約267時間

削減時間:約400時間/月

注文数が多いECほど、「数分しかかからないから」と放置している作業の影響が大きくなります。

複数モールの受注処理や在庫更新に時間がかかっている場合は、受注管理システムによる一元化も選択肢になります。

受注管理システムを比較|ECの一元管理システムの選び方を解説

システム導入の損益分岐点も計算できる

システム導入を検討するときは、「何時間削減できれば月額料金を上回るか」を逆算することもできます。

例えば、担当者の時間単価が2,500円、システム料金が月3万円なら次のようになります。

30,000円÷2,500円=12時間

単純計算では、月12時間を超える人的リソースを削減できれば、システム料金と同等以上の価値になる一つの目安です。

月額5万円なら20時間、月額10万円なら40時間です。

システム月額 時間単価2,500円の場合の損益分岐工数
10,000円 4時間
30,000円 12時間
50,000円 20時間
100,000円 40時間

ただし、これはあくまで人的リソースを金額換算した比較です。実際には初期費用、設定工数、運用工数、教育コストなども含めて判断してください。

人件費改善後はこの6つのKPIを確認する

業務を自動化したりシステムを導入したりした後は、「楽になった」で終わらせず、数字で改善効果を確認しましょう。

KPI 確認すること
月間総作業時間 EC運営全体の工数が何時間減ったか
1注文あたり処理時間 注文数増加に耐えられる運用になったか
1注文あたり人的コスト 注文処理の生産性が改善したか
売上100万円あたり工数 売上規模に対する運営効率が改善したか
ミス・再処理件数 在庫差異、誤出荷、入力ミスなどが減ったか
改善業務へ使った時間 空いた時間を販促・分析・CRM・SEOなどへ移せたか

特に重要なのが最後の「改善業務へ使った時間」です。月40時間の工数を削減しても、その40時間が別の単純作業へ置き換わっただけでは、大きな生産性改善にはなりません。

削減した時間 → 商品改善・販促・CRM・SEO・分析・新商品企画へ移す

ここまで実行することで、単なる人件費削減ではなく、同じ人数でもより大きな売上と利益を扱えるEC運営に近づきます。

1注文あたりの人件費はどう計算しますか?

EC運営にかかる人的コストを注文件数で割ると計算できます。例えば月間の人的コストが100万円、注文件数が2,000件なら、1注文あたり500円です。ただし、商品企画や広告運用など注文処理以外の業務も含まれるため、受注業務だけを分析したい場合は対象業務の人件費だけを分けて計算してください。

人を採用するのとシステムを導入するのはどちらがいいですか?

業務内容によって異なります。ルールが決まった繰り返し作業で、注文数とともに工数が増える業務はシステム化を検討しやすい領域です。一方、判断や企画、顧客対応など人にしかできない業務が増えている場合は、人員追加が必要になることがあります。現在の作業時間を金額換算し、システム導入後に残る工数と比較して判断してください。

システムはいくらまでなら導入する価値がありますか?

一つの考え方として「システム料金÷担当者の時間単価」で、料金に相当する作業時間を計算できます。例えば月3万円、時間単価2,500円なら12時間です。月12時間を大きく超える工数を削減できるなら検討価値があります。ただし、初期費用や導入・運用工数も含めて比較する必要があります。

ECの人件費だけでなく利益構造全体を確認する

人件費を改善しても、商品原価、広告費、送料、値引きなど別の費用が膨らんでいれば、EC全体の利益は改善しません。人件費を確認したら、他の主要コストも一緒に確認してみましょう。