
ECサイトの売上は伸びている。それなのに、月末に数字を見ると利益が減っている。「売上は増えているのに、なぜお金が残らないのだろう?」EC運営をしていると、このような状態になることがあります。
例えば前年は売上800万円・利益80万円だったのに、今年は売上1,000万円・利益30万円になっていたとします。売上は200万円増えたのに、利益は50万円減っています。
この状態で「もっと売上を増やそう」と広告を増やすのは、一度待った方がよいでしょう。売上が増えているのに利益が減ったということは、売上から利益になるまでのどこかで、以前より多くのお金が出ている可能性があるからです。
ECでは商品原価だけでなく、広告費、値引き・クーポン、送料、販売・決済手数料、在庫、人件費など、さまざまな要因が利益に影響します。この記事では、売上は増えたのに利益が減ったECサイトで確認したい原因を7項目に分け、どこからチェックすればよいのかを具体例とともに解説します。
- 1 売上が増えたのに利益が減ることは珍しくない
- 2 まず30秒で診断|利益が減った原因はどこ?
- 3 最初に売上・利益・利益率を前年と比較する
- 4 利益がいくら減ったのかを先に数字で固定する
- 5 売上は増えたのに利益が減ったECサイトで確認する7項目
- 6 7項目を一覧で確認してみよう
- 7 7項目は「金額」と「率」の両方で比較する
- 8 原因が分からないなら「1注文あたり利益」に分解する
- 9 前年と今年の「1注文あたり利益」を比較する
- 10 全体平均だけで原因が見つからないなら「商品別」に分解する
- 11 販売チャネル別にも利益を分けて確認する
- 12 新規顧客と既存顧客でも採算を分けて見る
- 13 売上を増やすほど赤字が増えるECサイトもある
- 14 利益が減ったときにやってはいけない3つのこと
- 15 エビス店長ならこの順番で原因を探します
- 16 利益改善は「インパクトが大きい順」に着手する
- 17 改善施策は「利益がいくら増えるか」まで計算する
- 18 売上と利益を比較する簡単な診断表を作ろう
- 19 毎月この10項目だけでも定点観測する
- 20 「利益が減った」と「現金が減った」は分けて考える
- 21 ECの売上と利益についてよくある質問
- 22 原因が見つかったら各項目を詳しく改善する
- 23 まとめ|売上が増えたら「いくら残ったか」まで確認する
売上が増えたのに利益が減ることは珍しくない
ECサイトを見るとき、売上だけを追っていると利益悪化に気づくのが遅れることがあります。なぜなら、売上がそのまま利益になるわけではないからです。
売上 → 商品原価 → 粗利 → 広告費・値引き・送料・販売手数料など → 人件費・システム費など → 最終的に残る利益
ECでは売上を伸ばそうとすると、広告費や送料、販売手数料なども一緒に増えやすくなります。売上の伸び以上にコストが増えれば、売上高は伸びているのに最終的な利益は減ることがあります。

まず30秒で診断|利益が減った原因はどこ?
細かく分析する前に、次の7項目を前年同月と比較してみてください。一つでも当てはまる項目があれば、そこから詳しく確認していきましょう。
- ① 粗利率が下がっている:商品原価・販売価格・商品構成を確認
- ② 広告費率が上がっている:広告効率・新規顧客獲得コストを確認
- ③ 値引き・クーポンが増えている:割引後の粗利を確認
- ④ 1注文あたりの送料負担が増えている:送料無料ライン・配送条件を確認
- ⑤ 販売・決済手数料率が上がっている:販売チャネル構成を確認
- ⑥ 在庫回転が悪化している:滞留在庫・値下げ・保管コストを確認
- ⑦ 人件費・作業時間が増えている:受注・出荷・商品登録などの工数を確認

最初に売上・利益・利益率を前年と比較する
原因を探す前に、まず前年同月と今年の数字を並べてください。金額だけでなく、売上に対する比率も一緒に見ることがポイントです。
| 項目 | 前年 | 今年 | 増減 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 800万円 | 1,000万円 | +200万円 |
| 粗利 | 320万円 | 350万円 | +30万円 |
| 広告費 | 80万円 | 140万円 | +60万円 |
| 送料 | 40万円 | 55万円 | +15万円 |
| 手数料 | 30万円 | 40万円 | +10万円 |
| 人件費 | 80万円 | 90万円 | +10万円 |
この例では売上が200万円増えています。しかし、粗利は30万円しか増えていません。さらに広告費、送料、手数料、人件費の増加額は合計95万円です。
つまり、「売上が200万円増えた」だけを見るのではなく、「その売上を作るために、何がいくら増えたのか」を見る必要があります。
利益がいくら減ったのかを先に数字で固定する
原因を探すときは、「なんとなく利益が減った」ではなく、まず利益が前年から何円減ったのかを明確にします。
例えば、前年と今年が次の状態だったとします。
| 項目 | 前年 | 今年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 売上 | 800万円 | 1,000万円 | +200万円 |
| 利益 | 80万円 | 30万円 | -50万円 |
| 利益率 | 10% | 3% | -7ポイント |
この場合、最初の目的は「利益を50万円押し下げた原因を探すこと」です。例えば広告費が前年より30万円増え、送料負担が10万円増え、人件費が20万円増えている一方、粗利額が10万円増えていれば、差し引き50万円の利益悪化となります。
粗利増加+10万円-広告費増加30万円-送料増加10万円-人件費増加20万円=利益-50万円
このように、利益減少額と各費用の前年差を並べると、「何が利益を押し下げたのか」が見えやすくなります。
売上は増えたのに利益が減ったECサイトで確認する7項目
① 粗利率が下がっていないか
私なら最初に確認するのが粗利率です。例えば前年が売上800万円・粗利率40%・粗利320万円だったのに対して、今年が売上1,000万円・粗利率30%・粗利300万円だったとします。
売上だけを見ると200万円増えています。ところが、粗利は320万円から300万円へ20万円減っています。つまり、広告費や人件費などを確認する前の段階ですでに利益構造が悪化しています。
粗利率が下がる原因としては、仕入価格の上昇、低粗利商品の販売増加、商品構成の変化、原価上昇、販売価格を据え置いていることなどが考えられます。特に高粗利商品より低粗利商品が売れるようになると、全体の売上が伸びても粗利率は低下することがあります。
「何が売れたか」だけではなく、「何で粗利を作ったか」を商品別・カテゴリ別に確認しましょう。
粗利率の計算方法や改善方法については、以下の記事で詳しく解説しています。
② 広告費が売上以上に増えていないか
次に確認したいのが広告費です。例えば前年が売上800万円・広告費80万円・広告費率10%、今年が売上1,000万円・広告費180万円・広告費率18%だったとします。
売上は200万円増えていますが、広告費も100万円増えています。売上だけを見れば成長していますが、広告費率は10%から18%へ大きく上昇しています。
ここで注意したいのが、ROASだけで判断しないことです。同じROASでも、粗利率20%の商品と粗利率60%の商品では残る利益が違います。また、新規顧客獲得の広告であれば、初回購入だけでなくリピート率、LTV、購入回数、新規・既存比率なども確認する必要があります。
広告費については「売上の何%までなら使ってよい」という一律の数字を探すより、自社の粗利とLTVから逆算することが重要です。
ECの広告費率は何%が目安?ROASだけでは判断できない理由
③ 値引き・クーポンが増えていないか
「セールをしたら売上が伸びた」という場合は、売上だけでなく値引き後の粗利を確認してください。
例えば販売価格10,000円、原価6,000円、粗利4,000円の商品があるとします。これを10%OFFで販売すると、販売価格9,000円、原価6,000円、粗利3,000円になります。
販売価格:10%OFF
粗利:4,000円 → 3,000円=25%減
販売価格は10%しか下がっていませんが、粗利は25%減っています。つまり、「10%OFFだから利益も10%減る」というわけではありません。
クーポン、ポイントアップ、タイムセールなどを増やした時期と利益が減った時期が重なっていないか確認してみましょう。
ECの値引き・クーポンで利益はいくら減る?割引率の決め方を解説
④ 送料無料・配送費が利益を圧迫していないか
ECで見落としやすいのが送料です。売上が増えれば通常は出荷件数も増えるため、送料無料商品の増加、送料無料ラインの引き下げ、配送会社の料金改定、大型商品の販売増加、遠方配送の増加、複数個口の増加などによって、配送費が利益を圧迫することがあります。
送料は月間総額だけでなく、次の計算でも確認してください。
1注文あたり配送コスト=送料総額÷注文数
例えば送料総額が40万円から60万円へ増えていても、注文数が2倍になっているなら事情は違います。反対に注文数が20%しか増えていないのに送料が50%増えているなら、配送条件に何らかの変化が起きている可能性があります。
ECの送料負担を見直す方法|送料無料ラインの決め方と利益計算
⑤ モール・決済・販売手数料が増えていないか
売上が増えたときに忘れず確認したいのが、販売チャネルに関連する手数料です。ECでは、モール販売手数料、決済手数料、システム利用料、ポイント原資、各種サービス利用料などが発生することがあります。
特に注意したいのが売上構成の変化です。例えば前年は自社ECの売上比率が高かったのに、今年はモール経由の売上が大きく伸びた場合、売上全体は増えていても販売関連費用の構成が変わっている可能性があります。
そのため、自社EC、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピングなどをすべて合算して見るだけでなく、販売チャネルごとに売上と費用を確認することが重要です。
⑥ 在庫が増えすぎていないか
「売上は増えているのにお金がない」という場合は、在庫も確認してください。ただし、ここは少し注意が必要です。在庫を仕入れた金額が、そのまま当期の利益減少額になるわけではありません。利益とキャッシュは別だからです。
一方で過剰在庫が増えると、保管費の増加、売れ残り商品の値下げ、商品の陳腐化、廃棄、仕入れによる資金の固定などにつながります。その結果、長期的には利益や資金繰りを悪化させる可能性があります。
在庫を見るときは「在庫金額がいくらあるか」だけでなく、在庫回転・滞留期間・SKU別の販売速度も確認してください。特に売上を伸ばそうとして仕入れ量を増やした直後は、売上増加以上に在庫が膨らんでいないか確認しておきましょう。
⑦ 人件費・作業時間が増えていないか
最後に確認したいのが人件費です。例えば前年は売上800万円・担当者2人だったのに対して、今年は売上1,000万円・担当者3人+残業増加となっていたとします。
売上は25%増えていますが、人的コストがそれ以上に増えている可能性があります。
ECでは注文数が増えると、受注処理、在庫更新、商品登録、問い合わせ、出荷処理、売上集計などの作業量も増えます。手作業中心のまま売上を伸ばすと、売上UP → 作業量UP → 人員増 → 人件費UPとなり、売上が伸びても利益率が改善しないことがあります。
ここでは人件費率だけでなく、「何の作業に何時間使っているのか」まで確認してください。
ECサイトの人件費を見直す方法|人件費率の計算と工数削減・自動化を解説
7項目を一覧で確認してみよう
ここまでの内容を整理すると、売上が増えたのに利益が減ったときに確認したいのは次の7項目です。
| 確認項目 | 主に見る数字 | 確認したい変化 |
|---|---|---|
| 粗利 | 粗利額・粗利率 | 粗利率が低下していないか |
| 広告 | 広告費・広告費率 | 売上以上に広告費が増えていないか |
| 値引き | 値引き額・値引き後粗利 | セール依存が強くなっていないか |
| 送料 | 1注文あたり送料 | 配送コストが上昇していないか |
| 手数料 | 売上に対する手数料率 | 販売チャネル構成が変わっていないか |
| 在庫 | 在庫回転・滞留期間 | 過剰在庫が増えていないか |
| 人件費 | 人件費率・作業時間 | 売上以上に工数が増えていないか |
大切なのは、単に「金額が大きい費用」を探すことではありません。前年より悪化している数字を探すことです。
7項目は「金額」と「率」の両方で比較する
利益悪化の原因を探すときは、費用の金額だけでなく売上や注文数に対する比率も確認してください。売上が増えれば、広告費、送料、手数料などの総額が増えるのは不自然ではありません。問題なのは、売上や注文数の伸び以上に費用が増えているケースです。
| 項目 | 金額と一緒に見る数字 |
|---|---|
| 商品原価 | 原価率・粗利率 |
| 広告費 | 広告費率・CPA・LTV |
| 値引き | 値引き率・値引き後粗利 |
| 送料 | 1注文あたり送料 |
| 販売・決済手数料 | 売上に対する手数料率 |
| 在庫 | 在庫回転・滞留期間 |
| 人件費 | 人件費率・1注文あたり工数 |
例えば広告費が80万円から100万円へ20万円増えていても、売上が800万円から1,200万円へ増えていれば、広告費率は10%から約8.3%へ改善しています。
反対に広告費が80万円から100万円へ増え、売上が800万円から850万円にしか増えていなければ、広告費率は約11.8%へ悪化しています。
金額が増えた=悪化ではありません。売上・注文数・粗利に対して費用がどう変化したのかを見ることが重要です。
原因が分からないなら「1注文あたり利益」に分解する
月次の数字だけでは原因が分かりにくい場合は、1注文あたりまで分解してみてください。
例えば客単価8,000円のECサイトで、商品原価4,000円、広告費1,200円、送料負担600円、決済・販売手数料500円、値引き300円だったとします。
8,000円-4,000円-1,200円-600円-500円-300円=1,400円
8,000円売れていても、この例では人件費やその他固定費を負担する前に残る金額は1,400円です。

ここまで分解すると、広告費が高いのか、送料が高いのか、値引きしすぎているのか、そもそも商品原価が高いのかが見えやすくなります。
前年と今年の「1注文あたり利益」を比較する
1注文あたりの採算を計算したら、前年と今年を並べて比較してみましょう。例えば次のように変化していたとします。
| 1注文あたり | 前年 | 今年 | 変化 |
|---|---|---|---|
| 客単価 | 8,000円 | 8,500円 | +500円 |
| 商品原価 | 4,000円 | 4,400円 | -400円 |
| 広告費 | 800円 | 1,200円 | -400円 |
| 送料負担 | 500円 | 650円 | -150円 |
| 手数料 | 400円 | 450円 | -50円 |
| 値引き | 100円 | 300円 | -200円 |
| 残る金額 | 2,200円 | 1,500円 | -700円 |
客単価は8,000円から8,500円へ上がっているため、売上だけを見ると改善しているように見えます。しかし、原価、広告費、送料、値引きなどが増えた結果、固定費や人件費を負担する前に残る金額は2,200円から1,500円へ減っています。
仮に月間2,000件の注文があるなら、1注文あたり700円の差は月140万円になります。このように月次総額だけでは分かりにくい場合でも、1注文あたりへ分解すると利益悪化の原因を発見しやすくなります。
全体平均だけで原因が見つからないなら「商品別」に分解する
ECサイト全体の数字だけでは原因が分からない場合は、次に商品別・カテゴリ別へ分解します。例えば前年より売上が伸びた理由が低粗利商品の販売増加だった場合、売上は増えても全体の粗利率は下がります。
| 商品 | 売上 | 粗利率 | 粗利額 |
|---|---|---|---|
| 商品A | 300万円 | 60% | 180万円 |
| 商品B | 500万円 | 20% | 100万円 |
商品Bは商品Aより売上が200万円多いですが、粗利額は80万円少なくなっています。
売上が大きい商品=利益を多く生んでいる商品とは限りません。
商品別に、売上、粗利率、粗利額、広告費、値引き、送料負担などを確認すると、「売れているのに利益を押し下げている商品」を発見できることがあります。
販売チャネル別にも利益を分けて確認する
楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング、自社ECなど複数チャネルで販売している場合は、サイト全体だけでなくチャネル別にも採算を確認してください。
| 販売チャネル | 売上 | 確認したい主な費用 |
|---|---|---|
| 自社EC | 300万円 | 広告費・決済手数料・システム費 |
| 楽天市場 | 400万円 | 販売関連費・広告・ポイント・クーポン等 |
| Amazon | 200万円 | 販売手数料・広告・物流関連費等 |
| Yahoo!ショッピング等 | 100万円 | 販売関連費・広告・販促費等 |
全体売上だけを見ると好調でも、前年より販売関連費の高いチャネルの構成比が上がっていれば、全体の利益率が下がることがあります。そのため複数チャネルを運営している場合は、「どこで売れたか」と「そのチャネルでいくら残ったか」をセットで確認しましょう。
新規顧客と既存顧客でも採算を分けて見る
広告費が増えている場合は、新規顧客と既存顧客を分けて考えることも重要です。新規顧客を増やすために広告費を使えば、短期的には利益率が下がることがあります。しかし、その顧客が2回、3回と購入し、LTVで広告費を回収できているのであれば、広告費増加だけを見て悪化とは判断できません。
反対に、広告費を増やして新規顧客を獲得しているものの、2回目購入がほとんどなく、毎回広告費を使わなければ売上を維持できない状態なら、売上増加に対して利益が残りにくくなります。
新規顧客:CPA・初回粗利・2回目購入率・LTV
既存顧客:リピート率・購入頻度・客単価・LTV
広告費が原因に見える場合でも、広告だけを止めるのではなく、獲得した顧客がその後いくら利益を生んでいるかまで確認してください。
売上を増やすほど赤字が増えるECサイトもある
さらに注意したいのが、1注文あたりの採算そのものが赤字になっているケースです。
例えば、売上5,000円、商品原価2,500円、広告費1,500円、送料800円、手数料400円だったとします。この時点で残るのは800円です。
さらに注文処理や梱包などの人的コスト・その他の注文関連コストが平均900円かかっていると仮定すると、1注文あたり-100円になります。
100件販売 → -1万円
1,000件販売 → -10万円
この条件が変わらなければ、売れば売るほど損失が増えていきます。この状態で広告を増やして注文数を伸ばすと、売上は増えても損失まで増える可能性があります。
だからこそ、「売れているか」ではなく「売るほど利益が増える構造になっているか」を確認する必要があります。
黒字になるために必要な売上を把握したい場合は、損益分岐点も確認しておきましょう。
ECサイトの損益分岐点とは?計算方法を具体例でわかりやすく解説
利益が減ったときにやってはいけない3つのこと
利益が減ると、すぐに何か対策をしたくなります。しかし、原因を特定する前に施策を打つと、かえって状況を悪化させることがあります。
1.とりあえず売上を増やす
利益が減っている原因が低粗利、広告費、送料、値引きなどにある場合、売上を増やすことで費用まで増える可能性があります。まず「1件売れたときに利益が残る状態なのか」を確認しましょう。
2.とりあえず広告を止める
広告費が高いからといって、すぐに広告をすべて止めるのもおすすめしません。広告で獲得した新規顧客が継続購入しているなら、初回注文だけでは赤字でもLTVでは利益が残っている可能性があります。
広告経由の粗利、CPA、新規顧客のLTVなどを確認して判断してください。
3.とりあえず値上げする
粗利率が低いからといって、すべての商品を一律で値上げするのも慎重に判断しましょう。価格変更によってCVRや販売数量が変わる可能性があります。
商品ごとの粗利率、競合価格、販売数量などを確認したうえで判断します。
エビス店長ならこの順番で原因を探します
「どこから見ればいいかわからない」という場合、私なら次の順番で確認します。
STEP1 粗利率を見る
↓
STEP2 広告費率を見る
↓
STEP3 値引き・クーポンを見る
↓
STEP4 1注文あたり送料を見る
↓
STEP5 販売・決済手数料を見る
↓
STEP6 在庫回転を見る
↓
STEP7 人件費・作業時間を見る
↓
STEP8 前年同月と利益構造全体を比較する
ここで大切なのは、「最も高い費用」ではなく「以前より悪化した費用」を探すことです。
例えば広告費が月100万円でも、売上が大きく伸び、広告費率や顧客獲得後のLTVが改善しているなら、100万円という金額だけで悪いとは判断できません。逆に月10万円程度の費用でも、前年2万円だったものが10万円へ増えているなら確認する価値があります。
利益改善は「インパクトが大きい順」に着手する
7項目を確認すると、複数の問題が同時に見つかることがあります。この場合、すべてを同時に改善する必要はありません。まずは改善したときに利益へ与える影響が大きい項目から着手します。
| 改善候補 | 現在の悪化額 | 改善可能性 | 優先度 |
|---|---|---|---|
| 広告費 | 月30万円 | 高い | 高 |
| 送料 | 月10万円 | 中程度 | 中 |
| 人件費・工数 | 月15万円相当 | 高い | 高 |
| 小額システム費 | 月1万円 | 低い | 低 |
月1万円のシステム費を細かく削減するより、広告費を月10万円改善したり、毎月40時間発生している手作業を削減したりした方が、利益への影響が大きい場合があります。
改善施策は「利益がいくら増えるか」まで計算する
原因が見つかったら、「広告を改善する」「送料を見直す」で終わらせず、改善によって利益がいくら増えるのかを試算します。
広告費:月20万円改善
送料:月5万円改善
受注業務:月30時間削減×2,500円=7.5万円相当
単純合計では月32.5万円相当、年間では390万円相当の改善余地があります。もちろん、削減した作業時間はそのまま現金利益になるわけではありません。しかし、その時間を商品改善、販促、CRM、SEO、広告分析などへ使えるようになれば、さらに利益を生む可能性があります。
売上と利益を比較する簡単な診断表を作ろう
難しい分析ツールを使わなくても、まずは表計算ソフトなどで次の表を作るだけでも構いません。
| 項目 | 前年同月 | 今年 | 差額 | 売上比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上 | 100% | |||
| 商品原価 | ||||
| 粗利 | ||||
| 広告費 | ||||
| 値引き・クーポン | ||||
| 送料 | ||||
| 販売・決済手数料 | ||||
| 人件費 | ||||
| その他経費 | ||||
| 利益 |
ポイントは差額と売上比の両方を見ることです。例えば広告費が前年80万円から今年100万円へ増えていても、売上が前年800万円から今年1,200万円へ伸びているなら、広告費率は10%から約8.3%へ下がっています。
毎月この10項目だけでも定点観測する
利益悪化を早く発見するには、利益が減ってから分析するのではなく、毎月同じ数字を確認する仕組みを作ることが重要です。
| 毎月見る数字 | 確認すること |
|---|---|
| 売上 | 前年同月・前月からの変化 |
| 粗利額 | 売上増加が粗利増加につながっているか |
| 粗利率 | 商品構成や原価の変化 |
| 広告費率 | 集客コストが悪化していないか |
| 値引き率 | セール依存が強くなっていないか |
| 1注文あたり送料 | 配送コストが上昇していないか |
| 販売・決済手数料率 | 販売チャネル構成の変化 |
| 在庫回転 | 滞留在庫が増えていないか |
| 人件費・作業時間 | 売上以上に工数が増えていないか |
| 最終利益・利益率 | 最終的にいくら残ったか |
毎月同じ形式で記録しておけば、「今月は広告費率が急に上がった」「粗利率が2か月連続で低下している」「注文数に対して送料が増えている」といった変化を早い段階で発見できます。
「利益が減った」と「現金が減った」は分けて考える
もう一つ注意したいのが、利益とキャッシュを混同しないことです。例えば大量に商品を仕入れれば、銀行口座から現金は減ります。しかし、期末に残っている商品在庫は会計上の資産となるため、仕入れで支払った金額がそのまま当期の費用になるとは限りません。
またECでは、仕入代金の支払日、モールからの入金日、クレジットカード決済の入金日、広告費の支払日などにズレがあります。そのため、利益は出ているのに現金が少ないということもあります。
「売上はあるのに銀行口座のお金が増えない」という悩みであれば、利益だけでなく在庫と資金繰りも確認してください。
ECの売上と利益についてよくある質問
売上が増えているのに利益が減るのはなぜですか?
粗利率が低下しているか、広告費、値引き、送料、販売手数料、人件費などが売上以上に増えている可能性があります。まず前年同月と売上・粗利・各費用を並べ、どの数字が悪化したのかを確認してください。
ECサイトでは最初に何を確認すればいいですか?
まず売上、粗利額、粗利率を前年同月と比較します。粗利の段階ですでに減っているなら、商品原価、販売価格、商品構成などを確認します。粗利は増えているのに最終利益が減っているなら、広告費、送料、手数料、人件費などを確認します。
売上はあるのに現金が残らないのはなぜですか?
利益とキャッシュは同じではありません。在庫の増加、仕入れと売上入金のタイミング、借入金返済などによって、利益が出ていても現金が減ることがあります。
広告費を減らせば利益は増えますか?
必ずしも増えるとは限りません。広告を止めれば新規顧客や売上まで減る可能性があります。広告経由の粗利、CPA、新規顧客のLTVなどを確認して判断してください。
売上と利益のどちらを重視すればいいですか?
どちらか一方だけを見るのではなく、売上を伸ばした結果として利益が残る構造になっているかを確認することが重要です。売上規模を拡大しても、1注文あたりの採算が悪化していれば利益は残りにくくなります。
売上が何%増えれば利益も増えますか?
一律には決まりません。粗利率、広告費、送料、値引き、販売手数料、人件費などによって変わります。売上増加率だけではなく、追加で1注文獲得したときにいくら利益が残るのかを確認してください。
利益が減った原因を一番簡単に調べる方法はありますか?
前年同月と今年の売上、粗利、広告費、値引き、送料、手数料、人件費、利益を横並びにし、差額と売上比を比較してください。そのうえで、悪化している項目を1注文あたりや商品別・チャネル別へ分解すると原因を特定しやすくなります。
売上が伸びているなら多少利益率が下がっても問題ありませんか?
利益額や将来のLTVまで含めて判断する必要があります。利益率が下がっていても利益額が増え、獲得した新規顧客から将来利益を回収できる構造なら、必ずしも問題とは限りません。一方、売上増加と同時に利益額まで減っている場合は、費用構造を確認した方がよいでしょう。
商品別の利益まで見る必要がありますか?
全体の数字だけで原因が分からない場合は確認することをおすすめします。売上の大きい商品でも粗利率が低かったり、広告費や送料負担が大きかったりすると、売上増加が利益増加につながっていない場合があります。
原因が見つかったら各項目を詳しく改善する
このページは、売上が増えたのに利益が減ったときに「どこに問題があるのか」を見つけるための診断ページです。原因が見つかったら、該当する項目をさらに詳しく確認していきましょう。
まとめ|売上が増えたら「いくら残ったか」まで確認する
ECサイトの売上が増えているのに利益が減った場合、すぐに「もっと売ろう」と考えるのではなく、まず利益構造を確認してください。
- 粗利率は下がっていないか
- 広告費率は上がっていないか
- 値引き・クーポンは増えていないか
- 1注文あたり送料は増えていないか
- 販売・決済手数料率は上がっていないか
- 在庫回転は悪化していないか
- 人件費・作業時間は増えていないか
今年の数字だけを見るのではなく、前年同月と比較して「何がいくら変わったのか」を探すことが重要です。全体の数字だけで原因が分からなければ、次に1注文あたり → 商品・カテゴリ別 → 販売チャネル別 → 新規・既存顧客別へ分解していきます。
EC全体
↓
1注文あたり
↓
商品・カテゴリ別
↓
販売チャネル別
↓
新規・既存顧客別
例えば売上が200万円増えていても、粗利率が下がり、広告費が100万円増え、送料が20万円増え、人件費が30万円増えているなら、売上増加がそのまま利益増加につながるとは限りません。
反対に広告費や人件費の金額が増えていても、売上や粗利がそれ以上に伸び、費用率が改善しているなら、単純に「コストが増えたから悪い」と判断する必要もありません。
大切なのは、「売上が増えたか」ではなく「売上を増やした結果、最終的にいくら利益が増えたか」を見ることです。
ECサイト全体の利益率を見直したい場合は、粗利、広告費、送料、値引き、人件費などを含めた利益改善の考え方を以下の記事でまとめています。
「売上は伸びているのに利益が残らない」「どの数字から確認すればいいかわからない」「広告費や送料、人件費まで含めて利益構造を整理したい」という場合は、現在のEC運営を一緒に整理することもできます。