楽天が出店者に対して強要してきた全ての事を現役出店者がお話します
2019年12月19日に楽天に関するとある記事がヤフーニュースにトピックとして掲載されました。
ヤフーニュースの記事の見出しにはこうありました。
「楽天の「送料無料」、独禁法違反のおそれ 来春導入予定」
ヤフーニュースに掲載されていた記事の内容は、朝日新聞デジタルの記事の内容が元になっていました。
記事の主要な部分をここで一部抜粋させていただきます。
大手通販サイト「楽天市場」を運営する楽天(東京)が打ち出している「送料無料」の方針について、公正取引委員会が楽天に「独占禁止法違反のおそれがある」と伝えていたことが、関係者への取材でわかった。アマゾンに対抗するため来春の導入を目指して進められてきたが、現状のままでの導入は難しくなり、見直しや変更を迫られることになる。
楽天による送料無料の方針は今年1月に打ち出され、一定額以上を購入すれば無料とする仕組み。8月にはその価格ラインを「3980円」(税込み)と発表し、10月末には「沖縄・離島等」のラインを9800円とするとともに、制度開始を2020年3月中旬にすると発表していた。
関係者によると、楽天はこの方針について、独禁法に抵触しないかどうかを公取委に相談。それに対し公取委は、今月までに口頭で「違反のおそれがある」と回答したという。出店者に送料負担を強いかねないことから、独禁法が禁じる優越的地位の乱用に当たる可能性を指摘したもようだ。
これに一部の出店者が「出店者が送料を負担することになる」と強く反発。「どこに送るのか事前にわからないのに、送料を予想して上乗せするのは難しい」「値上げすると検索順位が下がるため、送料を自社負担して値上げしなくて済む大手出店者には勝てない」などの声も上がった。
要するに、楽天市場でのネットショッピング時の金額が3980円以上の場合には、楽天市場内における酒類を除いたほぼすべての商品が送料無料となるという統一ルールを2020年3月に導入する事になるわけです。
酒類がこの送料無料の対象外となる理由については、酒類は酒税法により、赤字販売ができないというルールがある為だと思われます。
この「送料無料」といううたい文句について、実際には3980円を超えた購入がユーザーがらなされた場合には、その送料を「出品者が負担する」という事になるのです。
消費者、ユーザーにとっては送料無料は非常にメリットがあるサービスですが、楽天出店者にとっては、勝手に送料負担を強要される形となり、このルールが施行されると、赤字化するという出店者は少なくありません。
また、商品のサイズによっては、遠方の送料、特に沖縄県や離島などの送料が2000円以上になる事も珍しくありません。
楽天側としては、沖縄や離島に関しては、送料無料統一ラインを9800円にするという新ルールも追加していますが、そもそも商品代金と送料を分けて出品している出店者にとっては、金額の問題ではなく、送料そのものの負担が大きいのです。
今回、ヤフーニュースにも大々的にこの楽天の送料強要問題について明るみに出た事ですので、これまで楽天出店者が楽天から強制的に導入を強いられてきたことをこの記事にまとめたいと思います。
今後、楽天に対して、公正取引委員会などの調査が実施される際に、ひとつでもそのお役に立てれば幸いです。
商品画像ルールを強制的に変更された
楽天市場で表示されている商品画像、その中でもキーワード検索の際に表示される商品画像は、2019年3月より「商品画像登録ガイドライン」に準拠した画像となっているのはご存知でしょうか?
楽天市場では商品画像登録ガイドラインの遵守が必須化される前までは、出店者がそれぞれ趣向を凝らした売れる商品画像を作成していました。
これまで楽天のECコンサルタントなどは、いかにも「売れそうな商品画像」の作成を提案していました。
それが、今度は基本的に「白背景」で「文字の割合が20%以下」の商品画像でなければペナルティの対象となるようなルール変更を行ったのです。
ネットショップのセオリーとして商品点数が多い方がアクセス数を稼ぐ事ができ、売上も上がりやすいというセオリーがあります。
商品点数が多い出店者にとっては、画像の作り替え作業は、商品点数に応じて対応数が増える事になります。
この商品画像登録ガイドラインの変更によって、画像作成を行う際のリソースは全て出店者側の負担となります。
商品画像の作成を社内で行っている場合、社内のリソースが大幅にさかれることになりますし、商品画像の作成を外注化している場合は、その作成費用は出店者負担となります。
楽天は要所要所でAmazonを意識したモール改革を実施しているように思います。
ただ、それに振り回されるのは楽天市場の出店者です。
楽天市場の出店者が閲覧できる掲示板では、この商品画像登録ガイドラインの順守を必須化する事は「優越的地位の濫用」に当たるのではないかと議論されたこともありました。
結果としては、楽天出店者はこの商品登録ガイドラインに従うほかなく、多くの時間と費用をかけてガイドラインにのっとった画像に差し替え対応を行いました。
有料のチャットツールの導入が強制化された
楽天市場では、現在全てのショップページ上に「チャット」が表示されているのをご存知でしょうか?
このチャットツールは、楽天市場の出店者は「有料」で使っているツールなのです。
月額で5000円ほどですが、チャットツールが不要な店舗であっても強制的に導入させられています。
チャットツールは、ネットショップの運営においてコンバージョンを上げるツールとしては確かに優秀なツールです。
ただし、ネットショップの運営において、一人店長体制で出店されている小規模事業者の方も少なくありません。
日中は実店舗を運営していて、ネットショップの受注作業やお問合せ対応は夜にまとめて行っているという方もおられます。
そういった方にとっては、チャットツールがあってもリアルタイムの接客を行うことができないため、チャットツールは不要というケースもあるのです。
無料で使えて利用するかどうかを選ばせるというなら何ら問題はありませんし、楽天市場を利用する消費者にとってもメリットがあると思います。
有料で使わないチャットツールを継続課金されているのが現状です。
楽天ペイ決済の導入が強制化された
楽天ペイとは、楽天が提供する決済サービスのことです。
楽天ペイと言っても、その中身はクレジットカード決済やコンビニ決済、後払い決済など、ユーザーの希望する決済方法での支払いが可能です。
楽天市場の出店者はこれまで、自社の銀行口座への銀行振込が可能でしたが、楽天ペイを導入されたことで、出店者側がお金に触れる事はできなくなりました。
もちろん消費者にとっては、入金したのに商品が届かなかったといった詐欺のリスクを減らす意味で楽天ペイを経由する事はメリットがあると思います。
ただ、この問題は出店者にとっては、「決済手数料」に関して大きな変化が与えられることになりました。
楽天ペイが強制導入される前までは、コンビニ決済などの手数料は購入者負担でお願いする事も可能でした。
これが、コンビニ決済であっても楽天ペイ手数料が店舗負担として発生する事になりました。
ネットショップ運営のセオリーとして、決済方法を豊富に用意する事は確かにコンバージョン率の向上に役立ちます。
ただし、あくまでもユーザー側が自分の好みの決済方法を選び、選んだ決済方法に対して発生する手数料に関してはユーザー側で負担してもらうことも店舗側が選択できるのが普通ではないかと思います。
クレジットカード決済の場合は、ほとんどの場合出店者側が手数料4%前後を負担しています。
代金引換なら、商品代金と代引き手数料を合わせてお客様が商品を受け取るタイミングで支払っています。
楽天ペイを強制導入する事が問題なのではなく、そこにかかる手数料がすべて出店者側の負担になっているというのが問題だと思います。
アフィリエイト料率が1%から最大8%まで引き上げられた
これは、意外に意識していない出店者の方も多いのですが、楽天は、楽天アフィリエイトというサービスを提供しています。
楽天アフィリエイトとは、楽天市場内で販売されている商品を、ブロガーなどが自分のブログ上で紹介する事で、紹介元のリンク経由で購入が発生した際に、広告費用として数%の報酬が受け取れるインターネット広告のひとつです。
楽天アフィリエイトの料率が引き上げられるまでは、楽天アフィリエイトの料率は最低1%で、それ以上は出店者側が任意に設定できる項目でした。
現在は楽天市場で商品が購入された際に、出品している商品ジャンル別に以下のアフィリエイト手数料が徴収されています。
楽天アフィリエイト料率が1%→8%になる商品ジャンル
商品ジャンル | 料率 |
---|---|
ジュエリー・アクセサリー | 8% |
食品 | 8% |
インナー・下着・ナイトウェア | 8% |
水・ソフトドリンク | 8% |
日本酒・焼酎 | 8% |
靴 | 8% |
レディースファッション | 8% |
バッグ・小物・ブランド雑貨 | 8% |
メンズファッション | 8% |
スイーツ・お菓子 | 8% |
ビール・洋酒 | 8% |
楽天アフィリエイト料率が1%→5%になる商品ジャンル
商品ジャンル | 料率 |
---|---|
美容・コスメ・香水 | 5% |
ペット・ペットグッズ | 5% |
医薬品・コンタクト・介護 | 5% |
ダイエット・健康 | 5% |
楽天アフィリエイト料率が1%→4%になる商品ジャンル
商品ジャンル | 料率 |
---|---|
スポーツ・アウトドア | 4% |
花・ガーデン・DIY | 4% |
キッズ・ベビー・マタニティ | 4% |
旅行・出張・チケット | 4% |
楽天アフィリエイト料率が1%→3%になる商品ジャンル
商品ジャンル | 料率 |
---|---|
キッチン用品・食器・調理器具 | 3% |
日用品雑貨・文房具・手芸 | 3% |
本・雑貨・コミック | 3% |
インテリア・寝具・収納 | 3% |
ホビー | 3% |
学び・サービス・保険 | 3% |
不動産・住まい | 3% |
生活・インテリア | 3% |
百貨店・総合通販・ギフト | 3% |
おもちゃ・ゲーム | 3% |
楽天アフィリエイト料率が1%→2%になる商品ジャンル
商品ジャンル | 料率 |
---|---|
車用品・バイク用品 | 2% |
腕時計 | 2% |
TV・オーディオ・カメラ | 2% |
パソコン・周辺機器 | 2% |
スマホ・タブレット | 2% |
家電 | 2% |
CD・DVD・楽器 | 2% |
車・バイク | 2% |
デジタルコンテンツ | 2% |
光回線・モバイル通信 | 2% |
※その他上記以外 | 2% |
これらの手数料は楽天が負担するわけではなく、楽天出店者の持ち出し、負担となります。
しかも、厳密に言えば、アフィリエイト、商品紹介が成立した場合に限られたわけではなく、商品が売れるごとに手数料を計上されている可能性があります。
アフィリエイトというインターネット広告は、EC市場規模が拡大するにつれて同じように市場規模を拡大させてきました。
もちろん有効な広告であり、ブロガーによる商品レビューなども参考になる事があるのは事実です。
ただ、水やミネラルウォーターのアフィリエイト手数料が8%というのは、飲料製品を販売している業者の方ならいかに高い料率であるかはお分りいただけると思います。
是非ともこの部分の真相を公正取引委員会には明らかにしてほしいと願っています。
メルマガの配信に新たな課金制が導入された
楽天市場では、メルマガの配信にもお金がかかるのをご存知でしょうか?
今の時代、メルマガの配信はほとんどのECカートサービス、インターネットショッピングモールでも「無料」で送信できる事が普通となっています。
個人でも無料でネットショップが即日作れるSTORES.jp
や
BASE (ベイス)では、当然ながらメルマガは無料で何通でも配信できます。
そんな時代に逆行するような仕組みが楽天市場のバックヤードシステムには搭載されているのです。
もちろん、全てのメルマガが有料というわけではなく、毎週一回、一つのデバイス向けに配信するメルマガだけは無料で送信できます。
パソコン用アドレスに送るメルマガは無料で送信できても、スマホ用、モバイル用メルマガの配信には「課金される」のです。
確かに楽天市場のメルマガを快く思わない消費者も多いのは事実ですが、メルマガの送信に都度課金する仕組みは配信数を制限するために導入しているのかもしれませんが、やはりフェアではないと感じます。
送料無料ラインを統一される新ルールが強制される予定
これが、今最も話題となっている問題です。
楽天市場では、送料の扱いは出店者毎に異なります。
送料無料と書いてある商品に対して、「送料込み」で「送料無料」としている店舗もありますが、「●●円以上の買い物で送料無料」などの場合は、客単価向上を目的とした施策として、送料分を店舗側が負担するという手法を行っている店舗もあります。
これも出店者毎の配送方法によって送料が異なりますし、発送元の地域によっても送料は大きく変わってきます。
3980円以上購入したから送料無料、その送料は出品者が負担となれば、果たして利益を確保できる店舗は何パーセントいるでしょう?
特に型番商品と呼ばれるメーカー既製品を販売しているネットショップは、日々価格競争にさらされています。
消費者も、同じ商品なら一円でも安いお店、送料が無料のお店から買うのは当たり前の行動原理です。
3980円以上買われて、なぜ送料を出店者が負担しなくてはならないのか?
そもそも、このルールを導入しようと決めたのは楽天ですから、楽天が送料を負担してくれれば済む話です。
Amazonは2000円以上の購入でプライム会員以外も送料無料となります。
ただそれは、Amazonの圧倒的な物流環境、ロジスティクスの整備と配送料金の安さ(法人契約)があればこそ可能になる話です。
楽天市場のように出店者ごとにそれぞれの物流会社が違い、地域も違い、送料も違う場合には適応できないと思います。
楽天24のレビュー削除疑惑
この問題の闇は相当深いと思っています。
楽天は、自社直営の楽天24、現在の楽天ダイレクトというECサービスがあります。
Amazonで言うところのFBAに近い手法で、楽天が自社倉庫から商品を出荷する為、物流面でも優位に販売する事ができます。
当時の楽天24というサービスで、あるメーカーの商品が販売されていたのですが、恐らく人的ミスだと思いますが販売価格を間違えて販売したことがありました。
本来の販売価格よりも大幅に安い金額、完全に価格間違いでの販売を実施していたのです。
それに気づいたユーザーが、SNSなどで情報を拡散し、注文が殺到するという事態になりました。
販売件数は不明ですが、数百から数千件の注文が入ったのではないかと予想されていました。
そのほとんどの注文が楽天によって「キャンセル処理」されたのです。
当然ながら購入者は不満を覚えます。
せっかく安く購入できたと思ったら、強制的にキャンセル処理をされたわけですから、その不満をレビューへの記載という形で実施するユーザーも少なくありませんでした。
大量についた星1つのレビュー、それを楽天側が削除したというのが、この疑惑、というか事実として起こった事になります。
楽天では、例えば出品者がお客様から不本意なレビューを掲載された場合、異議申し立てをすることができます。
ただし、レビューを削除されるというケースはほとんどの場合ありません。
お客様の勘違いや明らかに同業者の悪意あるレビューが掲載された場合でも取り消しはしてくれないのが通例なのです。
そんな中で自社の直営店だけは、レビューを大量削除したのですから、フェアじゃないと言わざるを得ないと思います。
最後に出店者が楽天に伝えたい事
以上が、楽天市場に出店している立場でこれまで経験してきた事です。
もしかしたら私の勘違いという内容が含まれているかもしれませんが、ほとんどは事実として体験した事を元に記載しています。
現状では、送料無料ラインの統一が独占禁止法に抵触するかどうかが争点になるようですが、過去に楽天が楽天出店者に対して行ってきた数々の規約改変も独占禁止法に抵触する可能性をはらんでいると思っています。
この記事がどこまでの人の目に届くかはわかりませんが、一人でも多くの方に、楽天の真実を知ってもらいたいと思い今回記事にまとめました。
過去3年間にわたって行われてきた事実であり、楽天という巨大なプラットフォーマーが楽天出店者に対して行ってきた事を包み隠さずに書いたつもりです。
ここまで書いて、楽天に言いたいのは、楽天市場はAmazonとは異なり、出店者のひとりひとりが、試行錯誤しながらもお客様の為になるサービス、商品を提供しているプレミアムなショッピングモールであるという事を再認識していただきたいという事です。
楽天市場には本当に魅力あふれる商品が沢山あります。
ネットショッピングを通じて驚きや感動を与えてくれる出店者、店舗担当者も大勢います。
ネットショッピングを初体験したという高齢者の方も他のモールよりも断然多いのが楽天市場です。
楽天市場には規模に関わらず、良い商品をより多くの方に届けたいと思っている出品者が沢山出店しています。
もちろん楽天市場に出店するにはそれなりに固定費用がかかりますし、その金額は、国内モールの中では最も高い料金設定となっています。
その利用料をペイできる店舗は、それ以上の売上、月商で数千万~数億円という店舗も実際に存在しています。
おそらくジャンルごとのトップ3に入るような店舗は、年商億は当たり前という世界が楽天市場というショッピングモールです。
今、一部の楽天出店者は「楽天ユニオン」という組合を作り、楽天と真っ向から戦うことを決めています。
それは、楽天が憎くて行っている行動ではなく、昔のように出店者も消費者もネットショッピングを心から楽しめるような環境を取り戻したいという想いからだと私は思っています。
今回の騒動は、起こるべくして起きている事であり、楽天市場が健全なショッピングモールに再構築される為に必要な事だと思っています。
もしもこの記事を読んで共感できる事がひとつでもあったなら、TwitterやFacebookなどSNSで拡散をしていただけますと幸いです。
今の楽天は昔のワクワクにあふれた楽天市場ではありません。
あの頃の楽天市場をこの手に取り戻しましょう。最後までお読みいただきありがとうございました。