売れるネットショップの教科書に寄せられたよくあるご質問について、現役店長が回答するコーナーです。
【質問】型番商品は価格競争が激しい!価格競争から脱却する方法は?
楽天市場
などのインターネットショッピングモールや、Amazonなどのオンラインサイトに商品を出品している方で、特に、型番商品、プロパー商品と呼ばれるメーカー既製品を販売されている方は「価格競争」が日増しに激しくなっていることを感じていると思います。
ネット販売において、型番商品は、メーカーの認知度がある商品なら、説明不要、価格比較で注文される傾向のある商品です。
工具などの特殊な製品ならまだしも、ミネラルウォーターやコピー用紙といった、消耗品の場合は、まずは「価格が安いネットショップ」を探される傾向があります。
今回は、ネットショップで型番商品を主に販売されている店舗さんに、価格競争から脱却する方法について、現役店長が考察してみます。
型番商品・プロパー商品とは?
型番商品、プロパー商品とは、主にメーカーなどが製造するJANコードや製品番号、商品コードが存在する商品のことを言います。
ネット通販市場において、「型番商品」の対極の商品が、「オリジナル商品」と呼ばれる、独自開発の商品です。
プロパー商品とは、主にアパレル業界でよく使われる言葉で、卸業者から小売業者に卸される正規品、正規の商品のことを言います。
同様にプロパー店とは、正規店の意味で使われ、プロパー商品の価格のことをプロパー価格と呼び、値下げをしない正規価格の商品を意味します。
こうした型番商品やプロパー商品など、メーカーの既製品は、同じ商品を多数のネットショップ、販売店が取り扱っているため、商品そのものに差がないため、比較される対象が「価格」になるケースが多いです。
次に、型番商品が価格競争にさらされる理由について考察いたします。
型番商品が価格競争にさらされる理由
型番商品、メーカー既製品がなぜ、価格競争にさらされやすいのでしょうか?
型番商品の多くは、実店舗を含めて、インターネット上、ネット通販市場でも、様々な売場で販売されている傾向があります。
例えば、ネット通販で最も売れている事務用品、消耗品として「コピー用紙」があります。
もしあなたが、会社で使っているコピー用紙がなくなったとしたら、どこでコピー用紙を購入しますか?
法人の方の多くは、コピー用紙などの事務用品は、アスクルで購入されるという方は多いのではないでしょうか?
アスクルの場合、コピー用紙の価格を見てみると、楽天市場
やAmazonなどと比較してもほとんど金額的な差はなく、数円単位の差であり、ほぼネット通販では最安値に近い価格となっていました。
価格がほぼ最安値であれば、普段会社で利用しているアスクル以外のショッピングモールにまで出向いて、更なる価格比較、送料比較や納品日比較などという手間のかかる作業を行うメリットはほとんどありません。
ある意味では、コピー用紙などは、「ここで買う」と決めた後は、定期購入的に、なくなりかけたらまた注文するという手続きを行うことになります。
つまり、型番商品は、商品によっては、既に価格比較さえ行われないような囲い込みが終わっている商品とも言えます。
これはリピーターの商品検索の傾向ですが、新規顧客の場合、どのような手順で型番商品を検索するかといえば、約70~80%は、自分が普段ネット通販を利用している売場の「検索窓」からキーワードによって検索をかけて商品を探す傾向があります。
つまり、新規ユーザーは、最初は「キーワード検索」で商品一覧を表示させ、表示されたリストの中から、最もお買い得な商品を見つけ出し、注文するということです。
最もお買い得な商品とは、「販売価格が安い」事に加えて「送料が安い」もしくは「送料無料」の商品のことをここでは指します。
ユーザーがネットショッピングをする際に重視するポイントとして、他には「決済方法が自分の好みの決済があるか」「発送までのスピードは速いか」というポイントがあります。
余談ですが、ネット通販を日頃から行うユーザーが、なぜインターネットで商品を購入するのか、という理由について以下のようなデータがあります。
インターネットで商品を購入する理由
第二位:店頭よりも安い・・・53%
第三位:自宅まで運んでくれる・・・51%
第四位:ポイントが貯まる・・・42%
第五位:24時間購入できる・・・41%
有効回答数:1万432人
出典:クロス・マーケティング
ネットショップは、実店舗と異なり、時間や場所の制限がありません。
それは時には多くの潜在顧客を生むことが期待できるメリットでもありますが、簡単によその店舗に移動されてしまうというデメリットでもあります。
型番商品が価格競争、価格比較されてしまうことは、当然といえば当然の結果でもあります。
また、価格.comなどの価格比較サイトの存在も、型番商品が価格比較の対象となることに拍車をかけている要因でもあります。
ユーザーは知らなければ、自分が普段利用しているネットショップで、商品を注文するのですが、「もっと安い店が他にある」という情報が様々な場所に提示されているため、安い店で購入しようという自然な流れに流されていっているだけなのです。
型番商品、メーカー既製品が価格競争にさらされやすい理由はこのようなインターネット通販だからこそ、簡単に検索、比較できてしまうという点にあります。
では、型番商品を取り扱うネットショップが、価格競争から脱却する方法はないのでしょうか?
型番商品が価格競争から脱却する方法
主に型番商品、プロパー商品を取り扱うネットショップが、価格競争から脱却する方法について、現役の型番商品ネットショップ店長がご紹介いたします。
型番商品だからとあきらめて価格競争に挑む前に、価格競争から抜け出せる方法がないか、是非ご一読していただければ幸いです。
(1)入口商品と本命商品で価格差をつける
この方法は、ひとつの「矛盾」を提案することになるかもしれません。
価格競争から脱却したければ、どこよりも安い「入口商品」を用意することも、ひとつの戦略です。
「それって、思いっきり価格競争やん!」
と思われるかもしれませんが、そのご意見は、「半分正解」で「半分不正解」です。
ネット通販のユーザーの傾向について、先にご説明してきましたが、ユーザーは「ココで買う」と決めたネットショップを見つけた後は、リピート系商品はそのネットショップで継続的に注文しがちになる傾向があります。
ネット通販におけるマーケティング用語に「LTV(ライフタイムバリュー)」という言葉があります。
LTVとは顧客生涯価値とも呼ばれ、一人の顧客が、ある商品・企業サービスに対して、利用を継続している間にどれだけの利益(価値)を生み出すかという長期的な指標のことを言います。
ひとりの顧客が、あなたのネットショップを利用している間に落としてくれる金額、売上がLTVにあたります。
ネットショップで型番商品を販売することは、レッドオーシャン中のレッドオーシャンです。
もはや、後発のネットショップでは、先行者優位を勝ち取っている大手企業が運営するネットショップには、価格面、商品点数などで上回ることは到底困難です。
大手ショッピングモールのAmazonでめぼしい商品を検索していただければこの答えはすぐにご理解いただけると思います。
Amazonは、私達のような一般出店者が出品する商品以外に、Amazon自体が小売店として商品を出品しています。
Amazonはその巨大な資本力を武器に、メーカーから限界近くまで値下げされた供給原価と、ヤマト運輸などの契約物流運賃を合わせ、自社物流システムの配送インフラのスピード対応という三重の訴求ポイントを武器としてネット販売を実施しています。
Amazonが直接販売する型番商品の多くは、一般小売店よりも安い商品がゴロゴロ存在しています。
つまり、家電量販店に出向いて家電製品を購入するよりも、Amazonで検索して、送料無料、翌日配達で届く商品の方が、お買い得なケースが多いのです。
もちろん、家電量販店のECサイトの最大手はヨドバシカメラが運営するヨドバシドットコムですが、Amazonでは、ヨドバシドットコム以上の品ぞろえで家電商品も取り揃えています。
こうした超巨大企業と結果的に価格競争となる場合は、一般的な小売店のECサイトでは、販売価格に送料を乗せただけで、大きな金額差が生まれることになります。
そこで、「どこよりも安い入口商品」の存在が役に立つわけです。
入口商品とは、その名の通り、「ネットショップへの来店入口となるような競争力のある商品」のことを言います。
入口商品の好例としては、ヤフーショッピング
でデイリーランキング第一位を度々獲得している「送料無料+100円以下+お試し」のサプリメント商品があげられます。
ヤフーショッピングでは、シードコムスYahoo店とオーガランドという2つのサプリメントの強豪店舗が存在しますが、どちらも同じ「入口商品戦略」を継続的に実施しています。
圧倒的な安さ(確実に赤字となっている商品)で、ランキング上位入賞をめざし、ランキング需要を獲得しています。
入口商品では赤字であっても、リスティング広告などの広告費だと考えれば、リスティング広告以上の効果が期待できるのが入口商品戦略です。
例えばですが、100人から注文があったとして、そのうち3%がバックエンド商品(本命商品)を購入してくれれば、利益の確保ができるという考え方です。
バックエンド商品ではきちんと利益を取る、その上でバックエンド商品がリピート購入されれば、LTVは高まっていくというわけです。
全ての商品で価格競争を行えば、売れれば売れただけ薄利であるのに、受注処理や出荷作業というバックエンド作業に振り回され消耗します。
一部だけ、「これ!」という入口商品だけは、競合店舗と価格でも負けない突き抜け方をすれば、ユーザーへのリーチ数、アクセス数が獲得でき、売上が挙げやすくなるという方法です。
あなたのネットショップの「入口商品」を、作り出してみてください。
(2)付加価値を提供する
型番商品が価格競争から脱却する方法として、商品に「付加価値」を付けるという方法があります。
付加価値といっても、型番商品であれば、商品そのものには他の店舗との違いを付けることは難しいでしょう。
では、どこで付加価値を付けるのか?
例えば、よくある事例としては、「○○円以上の購入で送料無料」というネットショップでの合計注文額で送料無料となる閾値を設定することがあるとおもいます。
多くのネットショップは、「客単価」を上げる為に○○円の金額を高めに設定する傾向があります。
この送料無料となる閾値を比較的達成しやすい価格帯にするというのも、ユーザーに対しては一つの付加価値といえると思います。
また、楽天市場
などのショッピングモールの場合、ヘビーユーザーほどポイントバックを求める傾向があります。
販売価格は少し引き上げても、ポイント還元率を設定することで、ポイントバックを求めるユーザー、主にヘビーユーザーを取り込むキッカケとなるケースもあります。
個人の購入ではなく、会社の備品を購入する際に、自分の楽天IDで購入することでポイントを獲得したい、というユーザーもショッピングモールでは一定数存在しています。
価格訴求ではなくポイント訴求で集客するという方法も、モールでは特に有効に働くことがあります。もちろん、価格も低めであると尚よいでしょう。
基本的なことですが、型番商品であっても、商品説明や商品画像をしっかりと丁寧に作り込むことは重要です。
また、ユーザーが買い回りしやすいような回遊の仕組み、ボタンやメニューの整理やカテゴリの整理、売れ筋商品が一目でわかるランキングの設置なども、ユーザーの滞在時間を延ばす働きがあります。
付加価値とは、価格だけでなく、ユーザーがネットショッピングを気持ちよく行ってもらえるための体験の「場づくり」も重要ですので覚えて置いて下さい。
(3)ネットショップのファンを育てる
ネットショップの運営でユーザーからの理想的な購入動機としては、「このお店で買いたい!」と思ってもらえることです。
オリジナル商品の場合は、その商品毎のストーリーなどを商品ページなどで紹介しやすいため、ファン作りは行いやすいと思います。
型番商品、プロパー商品の場合は、割とカタログ販売的な感覚で行われることも多いため、商品のバックグラウンドストーリーなどは語られない傾向があります。
型番商品を販売するネットショップであっても、顧客をファンにすることは可能です。
例えば、「顧客からのお問合せメールに対して、30分以内に返信する」という対応はあなたのネットショップでは可能ですか?
ユーザーの多くは、ネットショップは「対応が遅い」という印象、先入観を持っている傾向があります。
逆に言えば、ネットショップの返信がチャットのように早かったとしたら、同じ内容のメール返信であっても、問合せした顧客には一種の「サプライズ(感動)」と捉えてくれる傾向があります。
ただ顧客からの質問に返事をするという行為ですが、その速度が徹底的に速いと、顧客はそこに「感動」を与えられ、「このお店は顧客対応が迅速で丁寧だ」と好感を持ってくれるわけです。
メールに素早く返事をする、これは誰でもできる事なのですが、継続的に行う事は難しいことでもあります。
是非、こういった小さな顧客対応から、行ってみてください。
メールを返信する際の例文、テンプレート集は以下のページにまとめていますのでこちらも参考にしてください。
型番商品が価格競争から脱却する方法のまとめ
今回はネットショップで型番商品を取り扱っておられる店舗さんに向けて、価格競争から脱却する方法について、実際に型番商品を販売している現役店長が考察いたしました。
ご質問をいただいたタイミングで、筆者自身も日頃から型番商品、プロパー商品を扱っているため、価格競争に陥っている悩みがあったのでこうして記事にまとめてみると、思考の整理になりました。
型番商品は、どうしても価格比較されやすい商材ですが、価格競争に挑み続けると、結果として利益を圧迫する上に、価格で動く顧客を追いかけると、自分のネットショップより安い商品をみつければまたその店舗に移動されるという事態になりがちです。
当店でも、数年前にQoo10というモールで、一つの型番商品を最安値付近の価格で販売していたのですが、安い間は飛ぶように売れ続けましたが、価格が値上げされると、すぐにほかの安い店舗へと移動された経験があります。
残念ながら、リピーターもひとりも獲得できませんでした。
価格競争に対して、価格で攻めると、結果的に赤字が膨らむ店舗運営体制となりますので、一刻も早く価格競争から脱却できる施策を少しずつ実施してみてください。
今回の記事の内容が、型番商品の価格競争で悩まれる店舗の方の参考になれば幸いです。