
「ECサイトの売上は見ているけれど、何を改善すればいいか分からない」「アクセス数、CVR、客単価、LTVなど数字が多すぎて、どこから見ればいいのか迷う」「KPIを設定したものの、毎月確認するだけになっている」。
EC運営では、数字を見ること自体よりも、その数字から次の改善行動を決められるかが重要です。そのために使うのがKPIです。
KPIは、単に管理表へ入力する数字ではありません。最終目標であるKGIを達成するために、「今どこに問題があるのか」「何を改善すれば目標へ近づくのか」を判断するための指標です。
特にECサイトでは、売上を「アクセス数 × CVR × 客単価」に分解すると、何を改善すべきか見えやすくなります。
この記事では、ECサイトにおけるKPIとKGIの違い、売上改善で見るべき主要指標、KPIツリーの作り方、具体的な設定例、KPI運用で失敗しやすいポイントまで、EC担当者向けにわかりやすく解説します。
- 1 結論|ECのKPIは「売上を分解して考える」と分かりやすい
- 2 KPIとは?
- 3 KGIとは?
- 4 KPIとKGIの違いをECサイトで考える
- 5 ECサイトで見るべき主要KPI
- 6 ECサイトのKPIツリーを作る
- 7 KPI設定例|月商800万円から1,000万円を目指す場合
- 8 KPIは1つだけ改善すればいいとは限らない
- 9 売上KPIだけでなく利益KPIも設定する
- 10 ECサイトの利益KPIツリー
- 11 KPIは多すぎても機能しない
- 12 KPIには「担当者」と「期限」も必要
- 13 KPIは毎月同じ数字を見るだけでは意味がない
- 14 KPI設定でよくある失敗7つ
- 15 エビス店長の考え|KPIは「会議資料」ではなく「次の行動を決める数字」
- 16 EC担当者向けKPIチェックリスト
- 17 ECサイトのKPIについてよくある質問
- 18 まとめ|ECのKPIは「次に何を改善するか」を決めるために使う
- 19 ECサイトの数字を見ても、どこから改善すべきか分からない方へ
結論|ECのKPIは「売上を分解して考える」と分かりやすい

ECサイトのKPIを考えるとき、最初に理解しておきたいのが売上の基本構造です。
売上 = アクセス数 × CVR × 客単価
例えば、アクセス数100,000、CVR2%、客単価5,000円なら、売上は次のようになります。
100,000 × 2% × 5,000円 = 売上1,000万円
売上を1,200万円へ伸ばしたい場合は、アクセス数を増やす、CVRを上げる、客単価を上げる、または3つを少しずつ改善するといった選択肢があります。
「売上1,200万円を目指す」という目標だけでは、現場は何をすればいいのか分かりません。しかし、「アクセス数を10%増やす」「CVRを2.0%から2.2%へ上げる」「客単価を5,000円から5,300円へ上げる」と分解すれば、具体的な施策へ落とし込めます。
KPIとは?
KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、日本語では一般的に「重要業績評価指標」と呼ばれます。
簡単に言うと、最終目標を達成するために途中で確認する重要な数字です。
ECサイトなら、アクセス数、CVR、客単価、リピート率、CPA、ROAS、LTVなどがKPIとして使われます。
例えば月商1,000万円を目標にしている店舗で、アクセス数100,000、CVR2%、客単価5,000円を目標値として設定する場合、この3つがKPIになります。
KGIとは?
KGIとは「Key Goal Indicator」の略で、最終的な目標を表す指標です。
- 月商1,000万円
- 年間売上1億円
- EC事業の営業利益1,500万円
- 新規顧客10,000人
- 年間LTV30,000円
KPIとKGIの違いを簡単に整理すると、KGI=最終的に達成したいゴール、KPI=そのゴールを達成するために途中で追う数字です。
KPIとKGIの違いをECサイトで考える

例えば、KGIを月商1,000万円とします。
この売上を作るために、アクセス数100,000、CVR2%、客単価5,000円というKPIを設定します。
KGI:月商1,000万円
↓
KPI:アクセス数100,000 / CVR2% / 客単価5,000円
すると、100,000 × 2% × 5,000円 = 1,000万円となります。
このようにKGIだけを見るのではなく、KGIを構成する数字へ分解することで、売上未達の原因を判断できます。
例えば売上が800万円だった場合でも、アクセスが少ないのか、CVRが低いのか、客単価が低いのかによって、取るべき施策は変わります。
ECサイトで見るべき主要KPI
ECサイトで見るべきKPIは、事業モデルや目的によって変わります。ただし、多くのECサイトで確認したい代表的な指標は次の通りです。
1.アクセス数・セッション数
最初に確認したいのが、サイトへどれくらい人が来ているかです。アクセスがなければ、どれだけ商品ページを改善しても売上は増えません。
- Google検索
- 広告
- SNS
- メルマガ
- LINE
- 外部メディア
- 指名検索
アクセス数を見るときは総数だけでなく、どこから来たアクセスなのかまで確認してください。
例えば広告流入が増えていてもSEO流入が減っているなら、広告依存が強くなっている可能性があります。
2.CVR
CVRは、サイトへ来た人のうち何%が購入したかを表す指標です。
購入数 ÷ セッション数 × 100 = CVR
例えば10,000セッションで200注文なら、CVRは2%です。
CVRが低い場合は、商品ページ、商品価格、送料、レビュー、在庫、決済方法、カート、スマホ表示、購入導線などに問題がないか確認します。
アクセスが十分あるのに売上が伸びない場合、CVRがボトルネックになっていることがあります。
3.客単価
客単価は、1注文あたりの平均購入金額です。
売上 ÷ 注文件数 = 客単価
例えば売上100万円、注文件数200件なら、客単価は5,000円です。
客単価を上げる方法には、アップセル、クロスセル、セット販売、まとめ買い、送料無料ライン、上位商品、有料オプションなどがあります。
ただし、客単価が上がっても粗利が減れば意味がありません。
客単価については「ECサイトの客単価を上げる方法12選」で詳しく解説しています。
4.新規顧客数
ECサイトを成長させるには、新規顧客の獲得も重要です。
新規顧客数を見ることで、SEO、広告、SNS、キャンペーン、紹介施策などの集客効果を確認できます。
ただし、新規顧客だけを増やし続ける運営は広告費が膨らみやすくなるため、既存顧客とのバランスを見ることも重要です。
5.リピート率
リピート率は、購入者が再び購入しているかを見る指標です。
食品、化粧品、日用品、サブスクリプションなど、継続購入される商材では特に重要です。
新規獲得に多くの広告費を使っていても、2回目購入につながらなければ利益が残りにくいことがあります。
6.LTV
LTVは「Lifetime Value」の略で、顧客が一定期間にどれだけの売上や利益をもたらすかを見る指標です。
例えば客単価5,000円、年間購入回数4回なら、年間購入額は20,000円です。
ただし、本来は売上だけでなく粗利や利益ベースで見る方が実務的です。
客単価が低くてもリピート回数が多ければ、LTVが高い顧客になることがあります。
7.CPA
CPAは、1件の顧客獲得やコンバージョンを得るために、どれだけ広告費がかかったかを見る指標です。
広告費 ÷ 獲得件数 = CPA
例えば広告費50万円、新規顧客100人なら、CPAは5,000円です。
CPAだけを見るのではなく、LTVとの関係を見ることが重要です。
CPAが5,000円でも、1顧客から長期的に20,000円の粗利が得られるなら、投資可能な場合があります。
8.ROAS
ROASは、広告費に対してどれだけ広告経由売上を作れたかを見る指標です。
広告経由売上 ÷ 広告費 × 100 = ROAS
例えば広告費100万円、広告経由売上500万円なら、ROASは500%です。
ただし、ROASが高いから利益が出ているとは限りません。商品原価、送料、決済手数料、値引きなどを含めると、利益がほとんど残っていないこともあります。
ROASについては「ROASとは?計算方法と損益分岐ROAS」で詳しく解説しています。
9.粗利率
ECサイトでは、売上だけでなく粗利率も重要です。
例えば売上1,000万円、粗利率40%なら粗利は400万円です。同じ売上1,000万円でも粗利率が25%なら、粗利は250万円です。
つまり売上が同じでも、利益構造は大きく違います。
粗利率については「ECサイトの粗利率を改善する方法」も参考にしてください。
10.1注文あたり利益
売れるネットショップの教科書では、客単価だけでなく、1注文あたりいくら利益が残っているかを見ることをおすすめしています。
例えば、客単価5,000円、粗利2,000円、送料700円、決済手数料200円、広告費700円なら、残る金額は400円です。
粗利2,000円 − 送料700円 − 決済手数料200円 − 広告費700円 = 400円
客単価が高くても、送料や広告費が大きければ利益は残りません。そのため、売上 → 客単価 → 粗利 → 最終利益まで見ることが重要です。
ECサイトのKPIツリーを作る

KPIを整理するときに便利なのがKPIツリーです。
例えば、KGIを月商1,000万円とします。
これを、売上 = アクセス × CVR × 客単価に分解します。
さらにアクセスを、SEO流入、広告流入、SNS流入、メルマガ、指名検索などへ分けます。
CVRを、商品ページ、価格、レビュー、送料、決済、カートなどへ分けます。
客単価を、アップセル、クロスセル、セット販売、まとめ買い、送料無料ラインなどへ分けます。
こうすると、どこを改善すれば売上につながるのかが見えやすくなります。
KPI設定例|月商800万円から1,000万円を目指す場合

例えば現在、アクセス数80,000、CVR2%、客単価5,000円だったとします。
アクセス数:80,000
CVR:2%
客単価:5,000円
売上:800万円
月商1,000万円を目標にする場合、すべてを大幅に改善する必要はありません。
例えば、アクセス数90,000、CVR2.1%、客単価5,300円まで改善できれば、売上は次のようになります。
90,000 × 2.1% × 5,300円 = 約1,002万円
つまり、アクセス+12.5%、CVR+0.1ポイント、客単価+300円程度の改善でも、組み合わせることで目標に近づけます。
このようにKPIを設定すると、「売上を25%増やせ」という曖昧な指示ではなく、どの数字をどれくらい改善するのかまで具体化できます。
KPIは1つだけ改善すればいいとは限らない
ECサイトでは、1つのKPIだけを大幅に改善するより、複数を少しずつ改善した方が現実的なことがあります。
例えばアクセスを25%増やすよりも、アクセス+10%、CVR+5%、客単価+5%と分散して改善する方法です。
特定の指標だけを無理に伸ばすと、広告費増加や値引き増加など別の問題が出ることがあります。
売上KPIだけでなく利益KPIも設定する
ここはEC運営で特に重要です。
売上KPIだけを追うと、「売上は増えているのに利益が減る」ことがあります。
そこで、粗利率、広告費率、配送費率、値引率、1注文あたり利益なども確認します。
例えば、売上1,000万円、広告費300万円、粗利率30%なら、粗利は300万円です。この状態では広告費だけで粗利がほぼ消えてしまいます。
売上目標だけでなく、利益目標もKPI設計へ入れることが重要です。
ECサイトの利益KPIツリー
利益を見る場合は、次のように分解できます。
利益 = 売上 − 商品原価 − 広告費 − 送料 − 決済手数料 − 人件費 − その他経費
さらに、売上はアクセス × CVR × 客単価、商品原価は仕入れ率・粗利率、広告費はCPA・ROAS、送料は配送単価・送料無料率などへ分解できます。
売上KPIと利益KPIを組み合わせると、売上を伸ばしながら利益も残すという本来のEC運営に近づきます。
EC全体の利益改善については「ECサイトの利益率を改善する方法」も参考にしてください。
KPIは多すぎても機能しない
KPIを設定するときにありがちなのが、「測れる数字を全部KPIにする」ことです。
例えば、アクセス、PV、直帰率、滞在時間、CVR、客単価、CPA、CPC、ROAS、LTV、リピート率、新規率、離脱率、カート投入率などをすべて並べても、現場は何を優先すればいいのか分からなくなります。
おすすめは、次のように整理することです。
KGI:1つ
主要KPI:3〜5個
補助指標:必要なときに見る
KPIには「担当者」と「期限」も必要
KPIを設定しても、誰が改善するのか、いつまでに改善するのかが決まっていなければ動きません。
例えば、CVR2%から2.2%への改善をEC担当者が3か月で行う、客単価5,000円から5,300円への改善を商品企画担当が2か月で行う、といった形です。
KPIごとに担当と期限を決めることで、KPIが「見るだけの数字」から「行動する数字」になります。
KPIは毎月同じ数字を見るだけでは意味がない
KPI運用で重要なのは、数字を見る → 原因を考える → 改善する → 次回確認するというサイクルです。
例えばCVRが下がったなら、スマホ表示、商品価格、送料、在庫切れ、広告流入の質、商品ページ変更などを確認します。
「CVRが下がりました」で会議を終わらせないことが重要です。
KPI設定でよくある失敗7つ
1.売上だけを見る
売上は結果です。売上だけでは、なぜ増えたのか、なぜ減ったのか分かりません。
2.KPIを設定しすぎる
数が多すぎると優先順位が分からなくなります。
3.数字を見るだけで改善しない
KPIはレポート作成のためではありません。改善行動につながらなければ意味がありません。
4.期限がない
目標値だけでなく、いつまでに達成するのか設定します。
5.担当者が決まっていない
誰が改善するのか明確にします。
6.KPI同士の関係を見ない
例えば客単価アップ施策でCVRが下がることがあります。一つのKPIだけで判断しないでください。
7.利益を見ていない
売上やROASが良くても、粗利や最終利益が悪ければ問題です。
エビス店長の考え|KPIは「会議資料」ではなく「次の行動を決める数字」
EC支援をしていると、KPIをたくさん管理しているのに、売上改善につながっていないケースがあります。
その原因の多くは、数字を記録することが目的になっていることです。
KPIを見たあとに、「では来月何を変えるか」が決まらないのであれば、そのKPIは十分に活用できていません。
さらにECでは、売上、粗利、広告費、送料、最終利益まで見ることが重要です。
売上だけを伸ばすKPIではなく、利益を残すためのKPIを作ってください。
EC担当者向けKPIチェックリスト
次の項目を確認してください。
- KGIが明確になっている
- 売上をアクセス・CVR・客単価へ分解している
- アクセス数を確認している
- CVRを確認している
- 客単価を確認している
- 新規顧客と既存顧客を分けている
- リピート率を確認している
- LTVを確認している
- CPAを確認している
- ROASを確認している
- 粗利率を確認している
- 1注文あたり利益を確認している
- KPIが多すぎない
- KPIごとに担当者が決まっている
- 期限が決まっている
- 毎月改善施策まで決めている
すべての数字を毎日見る必要はありません。自社の目標に関係する指標を絞って管理してください。
ECサイトのKPIについてよくある質問
KPIとKGIの違いは何ですか?
KGIは最終目標、KPIはその目標を達成するために途中で追う数字です。
例えば、KGIが月商1,000万円なら、アクセス10万、CVR2%、客単価5,000円などをKPIとして設定できます。
ECサイトで最も重要なKPIは何ですか?
事業によって異なります。
ただし、売上を考えるなら、まずアクセス数、CVR、客単価を確認すると全体を把握しやすくなります。そのうえでLTV、CPA、ROAS、粗利率などを確認します。
KPIはいくつ設定すればいいですか?
多すぎると管理しにくくなるため、主要KPIは3〜5個程度から始める方法があります。
必要に応じて補助指標を確認してください。
CVRの目標値はどれくらいですか?
業種、商品単価、集客方法によって大きく異なります。
他社平均だけを見るのではなく、自社の過去実績や流入チャネル別のCVRを基準に改善してください。
LTVはKPIになりますか?
はい。特にリピート購入が多いECでは重要なKPIになります。
新規顧客獲得だけでなく、既存顧客からどれだけ継続的に売上や利益を得られているか確認できます。
ROASとCPAの違いは何ですか?
ROASは広告費に対する売上、CPAは1件の獲得にかかった広告費です。
どちらも広告運用で重要ですが、最終的には粗利や利益まで確認してください。
売上をKPIにしてもいいですか?
売上はKGIとして扱うことが多いですが、より大きな目標がある場合はKPIとして扱うこともできます。
重要なのは名称より、最終目標と途中指標の関係が明確になっていることです。
KPIツリーとは何ですか?
KGIを達成するために必要なKPIを階層的に分解したものです。
ECサイトでは、売上 → アクセス × CVR × 客単価のように分解すると分かりやすくなります。
まとめ|ECのKPIは「次に何を改善するか」を決めるために使う
ECサイトのKPIで重要なのは、数字をたくさん管理することではありません。
最終目標であるKGIを設定し、その達成に必要な数字を分解して、ボトルネックを見つけることです。
基本は、売上 = アクセス × CVR × 客単価から考えます。
さらに、新規顧客、リピート率、LTV、CPA、ROAS、粗利率、1注文あたり利益まで確認すると、売上だけでなく利益改善まで見えるようになります。
KGIを決める → 売上構造を分解する → KPIを設定する → 実績を見る → ボトルネックを探す → 改善施策を実行する → 再度数字を見る
KPIは会議資料を作るためのものではありません。次に何を改善すれば売上・利益が伸びるのかを判断するための数字として使ってください。
ECサイトの数字を見ても、どこから改善すべきか分からない方へ
「アクセスは増えているのに売上が伸びない」「CVRが低いのか客単価が低いのか分からない」「広告のROASは良いのに利益が残らない」。こうした問題は、一つのKPIだけを見ても原因が分からないことがあります。
売れるネットショップの教科書では、ECサイトの無料診断を行っています。
アクセス、CVR、客単価、粗利、広告費、送料などを確認し、どの数字が現在のボトルネックになっているのかを整理します。