ECサイト運営で送料無料にする方法と送料を安く発送する方法
ネットショップの運営時に頭を悩ませるのが「送料」の問題です。
送料の設定方法についてどのような設定方法があるのか?
送料無料にする方法とは?送料を安く押させて商品を発送する方法は?
現役店長がネットショップの送料についてあらゆる角度から考察し結果をまとめました。
ネットショップにおける送料とは
ネットショップの開業時に最初の難関が「送料設定」です。
ネットショップは、商品を発送するためには、物流会社の指定する「配送運賃」を支払う必要があります。
ネットショップを開設した直後で、注文数も少ないうちは、商品の発送にかかる送料は、一般的な送料がそのまま経費として必要になります。
多くのネットショップで「送料無料」という販売方法を行っている現在、いったいどのような方法を使えば「送料無料」にすることができるのでしょうか?
また、本当に送料を無料にすることなど可能なのでしょうか?
現役店長である筆者のネットショップでは「送料無料」で販売している商品と「個別送料」を設定している商品、両方を出品しています。
今回は、ネットショップの送料について現役店長が徹底的に、考察してみました。
ネットショップの送料設定で悩まれている方のヒントになれば幸いです。
ECサイトの送料設定パターン
ECサイトでは、店舗の開店前には、「送料設定」の作業が必須対応となります。
初めてネットショップを開設する方には、送料設定について、どの設定方法がもっとも良い設定なのかが分からないと思います。
また、そもそも、送料といっても、どの配送方法を採用するかによっても、送料は変わってきますし、商品のサイズによっても異なります。
当然ながら、配送地域、都道府県によっても、運賃は大きく異なってきます。
今回は、ネットショップの送料設定で考えられる限りの設定パターンをご紹介いたします。
(1)全国一律の送料設定
送料を全国一律に設定すると、店舗運営上は非常にわかりやすいというメリットがあります。
全国一律送料の金額設定が非常に重要なポイントとなります。
例えば出荷元が京都府で、主要配送先が東京都の場合、もっともよく利用する配送運賃が800円だったとします。
月間の受注数にもよりますが、離島を除いた最も高い送料が1400円だった場合、その中間の価格帯である「1100円」を一律送料にするという方法もあります。
中間の送料を一律設定しておけば、最も注文の多い東京都への配送は800円のため、300円のプラスとなります。
最も遠い地域の1400円の場合は、300円マイナスとなりますが、東京都への配送時に300円がプラスされているため、全体でみると十分相殺できる範囲に収まるはずです。
全商品を全国一律設定することが難しい場合は、クリックポストや定形外郵便といった、エリアに関係ない全国一律送料が適用される商品のみを一律で設定する方法もあります。
送料一律設定は、ボーダーとなる金額を割すことが最も難しい施策です。高すぎても安すぎてもいけないので、十分に店舗の注文履歴と比較して検討してください。
(2)都道府県別の送料設定
これはモールでの販売でも自社ECサイトでの販売でもネットショップの機能設定に必ずある設定方法です。
商品の出荷時に採用している配送方法に合わせて、実際にかかる送料を設定してしまうという方法です。
適正な送料を指定できるメリットはありますが、利用者側からすると、「送料無料」が主流のネット通販市場では、「送料がかかるのか」と敬遠される恐れがあります。
これまでのネット通販の主流だった「送料無料」という言葉のせいで「送料は無料が前提」という認識がまだまだ多くのユーザーの中に残っている現状では、この送料の設定方法はカゴ落ちや離脱されるリスクが高いと言えます。
ただし、ZOZOTOWNなどが送料全国一律200円とはいえ、「送料はかかるものである」という前提を世の中に提示し始めたこともあり、今後のネット通販、EC市場においては、送料無料の前提はなくなる傾向にあると思います。
適正な送料を設定し、きちんとユーザーに負担していただく。もしくは、店舗が本来ならかかる送料を負担するというスタンスで差別化を図っていくことが予測されます。
(3)合計金額別の送料設定
これもネット通販市場によくある送料設定のひとつで、「5000円以上の注文で送料無料」などの送料設定の手法です。
この方法には、主に「客単価を上げるため」という目的も含まれています。
ネットショップで客単価をアップする方法については以下のページにまとめていますので興味のある方は参考にしてください。
多くのネットショップに採用されている手法で、商品毎に設定されている利益率がある一定のボーダーラインを超えたら、店舗が送料分を負担するという仕組みです。
商品の平均利益率が30%の店舗であれば「5000円以上で送料無料」と設定した場合、1500円の利益から送料を賄うことになります。
送料によっては、利益を圧迫してしまうため、「10000円以上の注文で送料無料」などに変えることで送料の負担率を下げることができます。
このあたりの「○○円以上」の設定も、店舗の商品や平均客単価、送料の割合などを総合的に分析して最適な価格帯を導き出す必要があります。
参考までに、大手のネットショップの送料無料になる条件をいくつかご紹介いたします。
大手ECサイトの送料無料の条件
- ヨドバシ.com…全品送料無料
- ASKUL…1,000円(税込)以上
- LOHACO…1,900円(税込)以上
- Amazon…2,000円(税込)以上の場合(プライム会員以外)
- 爽快ドラッグ本店…税抜2,500円以上
- ケンコーコム…税抜2,500円以上
- イトーヨーカドー…3,000円(税込)以上
- ベルメゾンネット…初回送料無料(通常は税込5,000円以上)
- 無印良品…5,000円(税込)以上
- 楽天市場…出店者事に送料は異なる
(4)合計個数別の送料設定
商品の注文数に応じて、送料を無料にするという設定方法です。商品3点の注文で送料無料になるなどの設定です。
この手法も主に客単価アップの施策として有効に働く場合があります。
ただし、これは利用しているECサイトやショッピングモールの機能によっては、非常に低い単価の商品でも送料無料の対象となってしまう恐れがあります。
極端な場合、商品の販売価格が100円の商品を3つ購入されても送料が無料化されてしまいます。
ECサイトのシステムによっては、商品代金が1000円以上の商品のみを対象とするような設定が可能な場合もあります。
合計個数別の送料設定は、結果的には合計金額の閾値と同じ扱いになりやすいため、必ずしも有効な方法とは限りません。
(5)送料無料の設定(送料を価格に含める)
多くのネットショップ運営の際に採用される「送料無料」の裏技的方法が「送料込」の送料無料対応です。
あまり知られていないのですが、実際には多くの店舗が採用している送料を無料(に見せる)にする方法です。
ただし、日用品などのばら売りに送料を含めてしまうと送料の方が高くなってしまうことと、商品代金がある程度認知されているため送料が乗っかっているのがわかってしまうデメリットがあります。
販売価格に送料を含める送料無料方法は、商品のケース販売時や、商品価格が検討が付きにくい商品(オリジナル商品や産地の果物、海産物など)には相性が良いと思います。
また、これは物流会社との法人契約を行っている事業者に限る話ですが、法人契約運賃は、一般の運賃よりも低い送料で発送することが可能です。
以前問題になったAmazonとヤマト運輸の間での契約は、一説によると300円以下の配送契約だったと言われています。
さすがに300円の送料で対応してくれる物流企業は今や存在しないでしょうが、法人契約運賃はその物量が多ければ多いほど割引優遇を受けやすいというメリットがあります。
ただし、この方法は、本来的にはNGな方法であることをお伝えしておく必要があります。送料込の商品を送料無料とうたってしまうと景品表示法に触れる可能性があります。
特に法人契約の運賃の場合は、送料が通常よりも低いため、販売価格中に含めても送料が含まれていることが感じられにくいため、送料込=送料無料という方法が成立できてしまいます。
景品表示法のことを考えるのであれば、送料を含めた送料無料であっても、送料全額を含まずに、送料の何パーセントという割合で含めるようにしましょう。
(6)送料無料の設定(送料分をサービスする)
これはまさに正真正銘の「送料無料」対応です。
ネットショップでこの方法を使うには、商品の出荷時の運賃を「店舗側で負担する」という方法になります。
通常であれば、送料を店舗が負担するというのは非常にリスクと負担の大きな手法ですが、考え方次第では、決して「マイナス」ばかりとは限りません。
例えば、「広告費の代わり」として、送料を無料化するというのも一つのネットショップ運営方法だと思います。
リスティング広告や楽天市場
のCPC広告などは、商品露出から商品の注文成立までにかかる広告コストが非常に高騰している傾向にあります。
1000円の商品を売る為に使った広告費が、1500円という事例も決して珍しくない例です。
広告費で1500円かかるなら、1000円分の送料を無料にして、ユーザーに還元する方がよほど販促効果も高いと思います。
また、アパレルジャンルやオリジナルブランドなどで利益率の高い商材であれば、送料もコストとして吸収することが可能なケースがあります。
粗利が40~50%とれる商品なら、送料無料化というのも実現可能でしょう。
物流大手3社の宅配便送料の比較(60サイズ)
物流大手3社における、宅配便の最少距離、最小サイズ(60サイズ)での配送料を比較してみます。
ヤマト運輸:宅急便
ヤマト運輸の宅急便で、最小サイズである60サイズ、同一地域内での運賃は、907円となりました。
Amazonとの契約問題を発端に、ヤマト運輸の運賃値上げが実施されたことで、物流上位企業のなかでも最も高い送料となりました。
佐川急便:飛脚便
佐川急便の飛脚便で、60サイズ、同一県内への通常配送の場合、配送料金は756円となりました。
日本郵便:ゆうパック
日本郵便のゆうパックで、60サイズ、同一県内への配送の場合、配送料金は690円となり、物流大手3社の中では最も安い送料となりました。
ただし、ゆうパックも2018年には値上げを発表していますので、2018年以降には、上位3社の配送料金もほぼ横ばいで揃ってくるものと思われます。
送料を安く抑える方法
法人契約運賃について交渉する
物流会社との法人契約を結ぶには、ある程度まとまった出荷数が月間で必要となります。
一日10件未満であれば、月間で250~300件程度の出荷数となりますが、この程度では法人契約は難しいと思われます。
あくまでも筆者のケースですが、月間数量が5000件~1万件の出荷件数になれば、法人契約の見積もり依頼ができる数量となります。
一日の出荷件数が100件~200件以上となる場合は、法人契約はほぼ問題ないと思いますが、一日40件程度でも見積もり依頼なら受けてもらえる物流会社もあるでしょう。
商品の集荷依頼の際に、配達員にそれとなく法人契約について聞いてみれば担当の営業マンが来てくれることもありますので、まずは普段利用している物流会社の方に尋ねてみてください。
ネットショップの出荷数が増えてくれば、法人契約は必ず通る道ですから、場合によっては、物流会社からアクションを起こしてくることもあります。
運賃が安くなれば、それだけ販売時のメリットになりますし、競合店舗との差も送料がひとつのポイントになりますので、積極的に法人契約の見積もり依頼を行いましょう。
配送料の安いサービスを使う
商品のサイズによっては、必ずしも対応できるわけではありませんが、比較的小さな商品や軽い商品であれば、配送料の安いサービスの対象となります。
商品について、小型のサンプル商品などであれば、以前はヤマト運輸のメール便を採用するネットショップが非常に多かったですが、現在はメール便サービスは廃止されています。
ネット通販市場の拡大と、ヤフオクやメルカリなどのCtoCのECの拡大で、メール便需要は年々高まり続けていました。
その反面、物量の多さの割に利益率の低さが問題となり、結果としてメール便事業から撤退することになったようです。
メール便なき今、「ポストメール便」としてEC事業者が選んで使う配送サービスがいくつか存在しています。
配送料を安くするための発送方法については、後程詳しくご説明いたします。
送料を安くするための発送方法
ミニレター
ミニレターは重さが25g以内であれば写真、メモなどの薄い物を同封することができます。
番号追跡などはできませんし、紛失などの補償もありません。
薄くて軽いことが条件ですが、お試しサンプル商品などの発送には利用できるでしょう。
定形郵便/定形外郵便
定形郵便とは、いわゆる封筒による郵送です。
定形郵便は、25gまでなら82円、50gまでなら92円で発送が可能です。
厚さは1cm以下という制限もありますので、ミニレターよりは厚みのある商品を送ることも可能です。
定形外郵便は、定形郵便のサイズを超えた場合に、主に重さごとの送料で発送ができるサービスです。
定形郵便と同じく、全国一律の送料設定となりますので、沖縄県や離島などにも追加送料はかかりません。
定形郵便も定形外郵便もどちらも紛失や破損の際の補償はありませんので、低価格帯の商品の発送に限った方がよいでしょう。
クリックポスト
クリックポストは日本全国一律164円で発送ができるサービスです。
定形外郵便との違いは「追跡サービス」があるという点です。
こちらも軽量で薄型の商品が対象となりますが、厚さは3cmまで対応できるため、ある程度厚みのある商品の場合も対応可能です。
スマートレター
スマートレターは、A5サイズ・1kgまでの商品なら全国一律180円で発送できるサービスです。
信書も送付できる点がクリックポストとの違いです。
書籍の送付などにも利用されることが多い発送方法です。
ゆうメール
ゆうメールは、上限3kgまでの商品の発送が可能です。以前は「冊子小包」というサービス名だった配送方法です。
ゆうメールではスマートレターとことなり、信書を送ることはできません。
サイズの上限として、縦横高さが170cm以内であることが、規格内扱いとなります。
レターパックプラス/レターパックライト
レターパックには「レターパックプラス」と「レターパックライト」の二つのサービスがあります。
プラスとライトの違いは、ポスト投函か、対面で受け渡すのかが違います。
どちらも重さの上限は4kgまでで、追跡サービスの対象となります。発送時にポスト投函することも可能です。
ネコポス
ネコポスはヤマト運輸が提供するサービスで廃止された「メール便」の代替え的なサービスです。
メール便と比較すると、送料は若干高くなりましたが、配送価格は、最大で378円が上限とされています。
ヤフオクでのネコポス利用の場合は、全国一律205円(税込)で商品を送付できるためお得な発送方法です。紛失や破損の補償もあり、3000円までの商品が対象となります。
ゆうパケット
ゆうパケットは、ヤフオクやフリマアプリなどの利用者には便利なサービスです。
定形外郵便とことなるのは、「商品の厚み」によって送料が決まるという点です。
厚さ1cmまでなら全国一律250円で発送することができます。北海道や沖縄、離島についても一律送料で送付できます。
宅急便コンパクト
宅急便コンパクトは、60サイズより小さいサイズの商品の発送時に送料が安くなるサービスです。
宅急便のメリットである「配達日時指定」が利用できる点が他のサービスとの違いでもあります。
メルカリ限定配送(らくらくメルカリ便/ゆうゆうメルカリ便)
ヤマト運輸と日本郵便がメルカリの利用者限定で提供している配送サービスです。
ネコポス、ゆうパケットを特別価格で利用できるメリットがあります。
メルカリもヤフオクと並び、CtoCのEコマースとしては、市場が拡大し続けていることもあり、物流企業各社も注力し始めています。
らくらくメルカリ便の送料
ゆうゆうメルカリ便の送料
AmazonのFBAを利用する
この方法はAmazonに出店していて、大口出品プランを利用している方のみが対象となります。
Amazonでは、商品の販売から受注、出荷までの作業を代行してくれるFBAというサービスがあります。
FBAは販売者がAmazonとなるため、プライム対象商品になる上に、Amazonの契約送料での出荷が可能となります。
自社では送料が高い場合でもAmazonに販売を委託することで、法人契約運賃が適用され、商品が売れやすくなるメリットがあります。
FBAの利用については以下のページにまとめていますので興味のある方は参考にしてください。
また、小さい商品や低価格の商品専用のFBAサービス「」も最近リリースされましたのでこちらもオススメです。
北海道や沖縄県、離島の送料について
ネットショップでよくある送料問題が「離島関連への送料」についてです。
北海道や沖縄県、その他の離島は、配送会社によって特別運賃が適用されることがあります。
多くの場合、配送元地域によりますが、通常の配送料から1000円~3000円以上の送料が適用されることになります。
送料を一律や無料にする場合でも、離島関連へのお届けの場合には、追加送料をいただくことをおすすめします。
ただし、全国一律の配送方法(定形外郵便やクリックポストなど)であれば、離島であっても追加送料は必要ありません。
送料無料可能地域をしっかりと店舗ページの目立つところやご利用ガイドに明記しておきましょう。
ネットショップの送料設定についてのまとめ
ネットショップの配送について送料を無料にする方法から、配送料を安く抑えるための配送方法までご紹介してきました。
これまでのEC市場は、「送料無料前提」でありすぎたことは、今後の改善点として業界や政治を含めて大きく変貌を遂げている最中でもあります。
ZOZOTOWNは、これまで行ってきた送料無料を取りやめ、全国一律200円の送料設定を行うことを実施しはじめました。
その他多くのEC事業者の間でも、物流コストが上がったことで、全体的に売上減少の傾向にあるという声もあちこちで聞くようになりました。
また、弱いネットショップ事業者は、この物流値上げでEC事業から撤退した方もおられるようです。
物流は、ネット通販のみならず、リアル市場でもなくてはならない「インフラ」的な役割を担っています。
ネット通販の運営を健全化していくためにも、今後は送料について、しっかりと明言したうえで、利用者にも「送料はかかるものである」ということを伝えていく必要があると思います。
参考になれば幸いです。