ネットショップ出店者がメディアを運営するべき3つの理由
ネットショップ、ECサイトを運営している個人、企業のEC担当者から今最も注目されていると言ってもいいのが「ネットショップのメディア運営」だと思います。
言葉としては、「オウンドメディア」や「コンテンツマーケティング」という用語で、ネットショップ運営者が、メディアを所有する事例が増えてきています。
ネットショップ事業者が、メディア運営を行うことは、非常に大きなメリットがあります。
今回は、ネットショップを運営する個人、企業が、メディアを運営することについて、
ネットショップ事業者がメディアを所有するべき3つの理由を現役ネットショップ店長が解説いたします。
そもそもネットショップはなぜ売れにくくなったのか?
そもそも、ネットショップの運営が難しくなったのはなぜなのでしょうか?
楽天市場
は今から、10年以上前であれば、出店するだけでも
多少は売れやすい環境にあったのは事実です。
その理由は「競合他社が少なかったから」に他なりません。
逆を言えば、10年以上前のEC市場は、ライバルも少なく、ショッピングモール自体も
少なかったこともあり、ネット通販を行うユーザーの選択肢が非常に少ない時代だったということです。
選択肢がなかったうえに、価格競争も現在のような苛烈さはなかったため、
インターネット検索で見つけた商品をそのまま注文する流れが一般的でした。
また、10年前にはスマートフォンも今のように普及しておらず、
ECサイトも閲覧対象者は100%近くがパソコンユーザーでした。
現在は、どの商品ジャンルでもスマホユーザーが半数以上の割合となり、
アパレル系のジャンルでは80%以上がスマホからのアクセスというデータもあります。
ユーザーにとっては、ネットショップ、ネットショッピングが当たり前となり、
出店者にとっては、BASE (ベイス)
などの簡単ECサービスの登場で、
ネットショップ出店が身近になりました。
ネットショップ出店が簡単になれば、それだけ出店者は増え、扱う商品のジャンルによっては、
インターネット上、ショッピングモール上に同じ商品が多数出品されることが当たりまえとなったわけです。
同じ商品であれば、ユーザーの心理としては、「より安い店」から買いたいと思うでしょう。
また、Amazonプライムのように、「明日には商品が届く」といった、スピード配送も選択条件として重要となります。
価格は他社より高く、配送は一週間後、というネットショップがあったとして、
その条件よりも良い店舗が、同じ検索キーワードで表示された場合、どちらの店舗から商品が注文されるかは、
誰がどう選んでも後者から商品を購入する方がメリットがあると思いますよね。
こうした「競争の激化」によって、ネットショップで商品を販売することが難しい時代となったわけです。
ネットショップがメディアを運営するべき3つの理由
ネットショップで商品を売るのが難しい時代となった現在において、
ネットショップを運営する事業者が、独自メディアを運営するべき理由について、
筆者が考える理由を3つに絞ってご紹介いたします。
(1)ブランディング強化による価格競争からの脱却が図れる
ネットショップを運営している方の多くが悩まれるポイントが「ネットショップの集客施策」、すなわち「アクセス数の獲得」です。
ネットショップの運営において、重要な公式として「売上の公式」があります。
【参考】売れるネットショップの売上アップの法則 売上の公式を理解する
売上=アクセス人数×転換率×客単価
ネットショップで売上を上げていくには、アクセス人数を増やしながら、転換率(成約率)を高め、客単価もアップさせていく必要があります。
多くのネットショップが、各売上アップの項目改善に取り組む中で、最も上限の値が高いものが「アクセス人数」です。
転換率は、一般的なネットショップの平均値は3~5%程度と言われています。
非常に売れているネットショップ、人気のECサイトであっても、転換率は、せいぜい10%前後の値になります。
特定の商品、入口商品など、ユーザーが躊躇なく購入することのできる商品ページであれば、転換率は、20%近くまで引きあがるケースもありますが、
アクセス数が増えれば、それだけ離脱するユーザー数も増える為、転換率、購入確率という意味では、やはり10~20%程度に収まり、それ以上の数値を目指すことは困難です。
客単価については、ネットショップで販売する商品の種類によって大きく異なってきます。
一般的な日用品を販売するネットショップであれば、だいたい2000~4000円程度の客単価が平均となりますし、
車やバイクといった、高価格帯の商品を扱うネットショップであれば、5~10万円、場合によっては数十万円~数百万円という客単価にもなるでしょう。
1000円程度の入口商品ばかりが売れているネットショップの場合は、客単価も非常に低くなりがちで、1000~1500円程度の客単価におさまるでしょう。
こうして、売上の公式の各要素をみていくと、アクセス人数だけが、店舗の規模や商品によって制限されることなく、上限なく上げていける項目となります。
ネットショップの運営において、特に日用品や消耗品といった型番商品を販売している店舗の場合、
Amazonなどで商品を出品すれば、9割方「価格競争」となります。
また、楽天市場
やヤフーショッピングなどのショッピングモールでも同じく、「価格による比較」が行われがちです。
汎用的な消耗品などは、ブランド価値の差別化という意味では非常に難しい部分がありますが、
セレクトショップ的なネットショップを運営している場合は、同じ型番商品でも、ユーザーへの見せ方の違いで、
価格競争から脱出できる可能性があります。
【参考】型番商品とは|ECサイト用語集
たとえば、日用品を多数取り扱っているECサイトが、独自メディアとして、
「生活お役立ち情報メディアサイト」を立ち上げたと仮定します。
記事の内容は、日常的なお役立ち情報だったり、ちょっとした生活の知恵や主婦の節約術など、
ターゲットを「日用品を普段スーパーマーケットで購入する主婦層」に絞ってコンテンツを配信していくとします。
最初の内は、アクセス数も少ないため、思ったような動きはできないでしょう。
ただ、こうしたターゲットを絞ったコンテンツ配信は、長期的な継続が前提となりますが、
確実にアクセス数を確保し続けられるというデータがあります。
最初は「生活のちょっとした困り事」などをGoogleなどの検索で見つけて
「生活お役立ち情報メディアサイト」にたどりついたユーザーも、
何度も同じサイトに辿り着くことで、「お気に入り登録」を行い、
日常的なアクセスを行うサイトとして認知してくれることがあります。
ユーザーひとりひとりのアクセス数は、1日1回程度かもしれませんが、
こうしたユーザーを継続的に集めることで、10000人のユーザー(SNSならフォロワー)を
集められれば、一日に10000PVを集めることができるメディアサイトとなります。
月間にすれば、30万PVとなり、メディア系サイトでも上位に入るアクセス数となります。
アクセス数を一定以上稼ぐことに成功すれば、ネットショップの売上は自然な形で上がり続けていきます。
また、楽天市場などのショッピングモールやAmazonなどの商品出品型の売場などでおこる
「価格比較」が起こりにくくなるため、商品の値下げを実施せずに商品を売ることが可能となります。
「生活お役立ち情報メディアサイト」という「お役立ち情報」「知恵袋的コンテンツ」としての第一想起が
可能となれば、ネットショップでの安売り販売を行うことなく、商品の提案ができるようになります。
ネットショップのブランディングとしては、ネットショップ自体でブランディングを行うには、
店舗デザインや商品ページなどの作り込みしかできませんが、こうしたメディアサイトを所有すれば
ユーザーに認知されていけばいくほど、「信頼感」を生み出すことができるようになります。
(2)広告に頼らず永続的なアクセス数を稼ぐことが可能
ネットショップの出店者数が増え続けている現在において、
自分のネットショップの商品を露出させる方法としてこれまで有効だったのが
CPC広告などのリスティング広告の利用でした。
現在でも、リスティング広告は、ネットショップの露出の策としては有効であることは
間違いありませんが、いかんせんCPC広告などのクリック単価が高いというデメリットがあります。
キーワードによって単価はことなりますが、1クリックあたり100円以上になることは
当たり前になってきていますし、商品ジャンルやキーワードの種類によっては、1クリックで300円以上のクリック単価となるケースもあります。
CPC広告などは、クリック課金型広告ですから、クリックされるだけで広告料が発生します。
商品の購入の有無には関係なく、広告がクリックされることで広告料がかかるわけです。
ネットショップの平均的な転換率が3%程度であると先にお伝えしましたが、
転換率3%とは、100人のユーザーの来店があった場合、3人が購入するという確率となります。
3000円の客単価のネットショップの場合、
CPC広告のクリック単価が100円、3人に商品を購入してもらえたと仮定した場合は、
100円×100人=10000円(広告費)
3人×3000円=9000円(売上)
となり、
広告費-売上=10000円-9000円=1000円(赤字)
となります。
あくまでも単純な仮定ですが、売上は「経費を含んでいる」ことを忘れてはいけません。
原価率50%と仮定した場合、3000円の商品の原価は1500円となります。
ショッピングモールでの出店の場合、販売手数料や決済手数料が別途かかってきます。
売上のだいたい10%程度が販売手数料額となるケースが多いので、
この場合は、3000円の売上に対して、300円が販売手数料として差し引かれます。
3000円-1500円-300円=1200円(利益)
3000円の売上に対する利益は1200円となりましたね。
本来は、ここに更に固定費、人件費などが発生していますが
ここでは考えないこととします。
すると、実際に3人に3000円で売れた場合は、
利益1200円×3人=3600円の利益となります。
広告費と利益で差額を計算すると
10000円-3600円=6400円(赤字)
実際の赤字額は6400円となりました。
これでは、広告を出せば出すほど赤字が膨れる構図となることがお分かり頂けたかと思います。
こうした理由から、大手企業であっても、リスティング広告の出稿にかけるコストよりも
オウンドメディア構築による集客施策の強化を選択するケースが増えてきたわけです。
オウンドメディアとは、ネットショップがメディア化すると言ってもいいでしょう。
独自メディアを所有し、ユーザーに対して有益なコンテンツ情報を配信し続ける行為は、
「試算の蓄積」につながっていきます。
主に、「SEO対策」「検索対策」の際に、効果を発揮する施策です。
コンテンツのテーマを絞れば絞るほど、SEO対策にも有効に働きます。
また、CPC広告と違い、コンテンツSEOによる集客施策には、
基本的に記事作成以外にコストはかかりません。
また、一度掲載したコンテンツは、情報の有益性、Googleのインデックスの評価にもよりますが、
一度検索上位表示が達成できた後は、上位ランクから落ちにくくなる傾向があります。
その為、永続的にユーザーからのアクセスを獲得することができます。
コンテンツSEOについての詳細は以下のページにより詳しくまとめていますので
こちらも参考にしてください。
(3)主導権を持った情報発信により、商品が売れやすくなる構造が作れる
先にご説明した、コンテンツSEO対策の結果として、ブラディングも強化され、
アクセス数が集まり続ける環境になれば、情報発信によって、アクションを起こすユーザーの数も
増えていく傾向があります。
FacebookページやTwitter、インスタグラムなどのSNSをフォローしているユーザーの場合、
各SNSに頻繁にログインしているアクティブユーザーであれば、ネットショップメディアが
発信する情報に対しても、何らかのアクションを起こしてくれる可能性が高いです。
たとえば、あるオリジナル系商品を販売しているネットショップが
新作商品を販売したという情報をメディア上でリリース、配信したとします。
すると、ファンとなったユーザー、フォロワーは、自分が良いと思ったコンテンツ記事に対しては、
「いいね」や「シェア」などのアクションを起こす傾向があります。
すると、そのユーザーをフォローしている別のユーザーにも
あなたのネットショップメディアの新作商品の情報が届くことになり、
新規顧客の獲得にもつながっていくわけです。
ブランディングをしっかりと作っているショップであれば、
その商品の価格がいくらであっても、「購入したい」と動く「ファン」が一定数存在しています。
多くのビジネスに言えることですが、2:8の法則、パレートの法則が当てはまると言われています。
あなたのネットショップの売上の8割は、2割のリピーター、支持者によってもたらされていませんか?
規模が大きくなればなるほどに、この構造は顕著に表れてくるようで、Amazonやヤフーショッピングなどでも
売上の8割は、プライム会員やYahoo!プレミアム会員が作り出しているという公式データがあります。
ブランディングを強化し、ファンを育てていく意味でも、ネットショップがメディア化する、メディアを運営するメリットは絶大だと思います。
ネットショップメディアの成功事例
では、実際の具体的な事例として、ネットショップのメディア運営の成功事例をご紹介したいと思います。
北欧、暮らしの道具店
北欧、暮らしの道具店さんは、北欧の雑貨を取り扱っているネットショップです。
オウンドメディア、自社メディアによるブランディングの成功事例では、必ずと言っていいほどに取り上げられる人気のネットショップです。
月間のPV数は約1300万超で、月間ユニークユーザー数(UU数)は約130万超と発表されています。
ネットショップのオープンは2007年ということで、比較的EC市場が拡大する前の初期段階から出店されています。
2018年5月時点で、Facebookページへの「いいね」は43万いいねを超えています。
インスタグラムは「68万人」ツイッターは「24000人」のフォロワーがついていますから、非常に影響力のあるメディアと言えます。
土屋鞄製造所
土屋鞄製造所は、主にレザーカバンを中心とした、革製品の販売において、メディア構築で成功した事例のひとつです。
商品の魅力や職人のこだわりを中心に、ウェブメディアで情報配信し、Facbookページやツイッター、インスタグラムなどの
SNSをチャネルとして、ファンを育て続けてきました。
2018年5月時点で、Facebookページへのいいねは「29万いいね」、インスタグラムは「65万人」、ツイッターは「2400人」のフォロワーがついています。
ストレッチポール公式ブログ
ストレッチポール公式ブログは、その名の通り、「ストレッチポール」という商品に特化したメディアサイトです。
メディアサイトというよりも、ブログメディアといった方が正確かもしれません。
主なコンテンツキーワードとしては、「体幹トレーニング」というビッグワードでのSEO対策に成功しており、「体幹トレーニング」という検索で第一位に「体幹トレーニング50選!初心者から上級者までレベル別一週間メニュー」のページが表示されています。
ブログサイトの公開からわずか4ヶ月で20万PVを達成したそうで、1年後には100万PV達成という大台も突破しています。
このオウンドメディア経由での注文数は、月間800件を超えているそうですから、ネットショップのメディア運営の成功事例としても素晴らしい成果だと思います。
オシャレの教科書
オシャレの教科書は、株式会社ドラフトが運営するメンズファッションジャンルのネットショップ「Dcollection」のメディアサイトです。
月間のPV数は400万PV以上と発表されていますから、メディアとしてもトップクラスのサイトですね。
ファッションジャンルといえば、主要ユーザーは、20代~30代の女性層がメインのジャンルですが、
メンズファッションジャンルのシェア獲得のために立ち上げた「オシャレの教科書」は、競合他社が誰も踏み込まなかったコンテンツメディアの領域だったこともあり
ビッグヒットにつながりました。
ネットショップがメディアを運営することのまとめ
今回はネットショップがメディアを運営する事について、
運営したことでえられるメリットを中心に解説いたしました。
リスティング広告の出稿料が高騰化している現在では、
自社メディア、オウンドメディアを所有し、運営することでえられるメリットは
費用対効果的に見ても絶大であると筆者は考えています。
何よりも、将来的には広告の利用自体から脱却し、
尚且つ見込み顧客との接点はSNSなどを中心に増えていき、
ファンが増えれば、情報発信によるアクションの発生率も増えていく傾向があります。
反応率が0.1%だったとしても、
5万人のフォロワーがいるメディアサイトであれば、
50人はアクションしてくれる(購入してくれる)わけですから、
客単価が3000円のネットショップであれば、
3000円×50人=15万円の売上となります。
1つの情報発信で、15万円の売り上げが広告費ゼロ円で達成できるわけです。
メディアによるブランディングの強化と、ファンの育成は、
時間はかかりますが、自社運営で行えば、追加コストはかかりません。
制作会社に依頼した場合は、安く見積もっても、月10記事程度の更新であれば、30万~50万円程度はランニングコストが必要と考えた方が良いと思います。
コンテンツ配信をアウトソーシングした場合は、クラウドワークス
などが
最下限で記事作成依頼ができるでしょう。
やはり、自社メディアを運営するのであれば、自社のネットショップ担当者が専属で記事を書いていく方が良いと思います。
なにより、自社製品の事を一番理解できるのは、自社の社員、店舗担当者に他なりません。
ネットショップを運営していて、自社メディア、オウンドメディアをまだ構築していないという方は、
自社メディアの構築について、一度本格的に検討されることをおすすめいたします。
具体的にどうすればいいのかわからないという方は、当サイト、売れるネットショップの教科書に
ご相談いただければ、ネットショップの内容を拝見して、アドバイスさせていただきますので
お気軽にお問合せくださいませ。
もちろん、ネットショップに関するご相談は完全無料ですのでご安心ください。
今回の記事の内容が、ネットショップの運営者の方の参考になれば幸いです。