売れるネットショップの教科書に寄せられたよくあるご質問について、現役店長が回答するコーナーです。
【質問】定期購入の改正特定商取引法とはどんな法律ですか?
定期購入、単品リピート通販を行っているネットショップ運営者の方なら「平成28年改正特定商取引法」については、その法律の名前を耳にされたことはあると思います。
平成28年改正特定商取引法では、定期購入の申し込みページに必ず表示しなくてはならないルールが定められました。
平成28年改正特定商取引法が施行された背景には、2016年において定期購入のネット通販のトラブルが非常に増えたことが原因のひとつです。
今回は、定期購入のネット通販を行う事業者の方に、平成28年改正特定商取引法について、現役店長がわかりやすさを重視して解説いたします。
平成28年改正特定商取引法とは?
平成28年改正特定商取引法とは、主に定期購入の通信販売において、契約上の支払総額と契約期間に関する販売条件を明記することが義務化された法律のことです。
2016年頃から、定期購入通販に関する消費者からのトラブル、相談が急増したことが法改正の大きな原因とされています。
「平成28年改正特定商取引法」では、定期購入の契約に関して、新聞の折り込みチラシの内容や、単品リピート通販などのネット通販における申し込み・確認画面上に、「定期購入に関する支払代金の総額」「契約期間とその他の販売条件など」を明示することが義務化されました。
これまでのECサイトなどによる定期購入では、「初回限定特別価格」などの謳い文句で、一回目の購入代金を極端に安くした上で、実際には、2回目以降の購入金額は、初回とは大きく異なる販売価格での購入を、指定期間解約できない契約を結ばせるという悪質な販売手法が横行していました。
ネット通販市場の拡大の背景には、健康食品やサプリメント、ダイエット関連用品の通販シェアも大きく影響がありました。
特にネット通販では「単品リピート通販」という手法が、2016年頃から注目されはじめ、多くの健康食品系企業や美容、サプリメント業界の参入が相次ぎましたが、一部の販売者のなかには、今回の「平成28年改正特定商取引法」の改定の原因となるトラブルを生み出した企業も存在しています。
単品リピート通販の手法のひとつに「ランディングページ」というウェブサイトの形式があります。
楽天市場などのショッピングモールで、特に縦に長い商品ページを見たことはないでしょうか?
ランディングページとは、基本的にひとつの商品に対して、商品説明を具体的に行い、場合によっては注文フォームと一体型の体裁で、顧客の注文率、転換率を上げることを目的としたEコマースの手法です。
単品リピート通販でよく採用される手法が注文フォーム一体型LP(ランディングページ)で、注文フォーム一体型LPと特に親和性が高い商材が、健康食品、基礎化粧品などの美容商材、サプリメントなどがあります。
間違ってはいけいないのは、単品リピート通販自体は、決して違法な販売方法ではありません。
【参考】業界最安のカラーミーリピートとは?リピストとの違いを比較
単品リピート通販、定期購入によるトラブルの多くは、「初回の安さにつられて購入したら、一年間解約できない仕組みで高額請求された」といったケースが大多数だと思います。
次に、定期購入通販におけるトラブル増加の原因と、主なトラブル事例をご紹介いたします。
定期購入通販のトラブル増加の事例と原因
定期購入通販における、トラブル増加の原因と、主なトラブルの事例とその原因についてをご紹介いたします。
定期購入におけるトラブルの増加については、消費者庁に掲載されているインターネット通販などの定期購入に関するトラブル内容では、「主にダイエットサプリメント等の健康食品を『お試し』で購入するつもりが定期購入となってしまう」という事例が多いようです。
今回は、国民生活センターのホームページで紹介されている定期購入通販のトラブル事例をいくつかご紹介いたします。
【トラブル事例1】初回お試し価格のサプリメント通販
サプリメントを初回お試し価格として購入。体に合わず解約を申し出たが、定期購入だとして拒否された。
初回お試し価格のサプリメント通販の問題点
初回お試しの表記を目立たせているのに、実際には定期購入の契約である旨が分かりにくいように記載されているケース。しかも契約期間中の解約ができないような契約も。
【トラブル事例2】初回お試し価格の健康食品通販
通信販売でお試し価格500円の健康食品を注文した。一度限りだと思ったが2回目が届いた。解約したいが電話がつながらない。
解約はできない旨の表示が分かりにくい
初回お試し価格の健康食品通販の問題点
初回お試し価格は大きく記載しているのに、定期購入であることや、解約ができないといった表示が非常にわかりにくく記載されているケース。
【トラブル事例3】SNS経由の化粧品通販
SNSの広告で知った化粧品の無料お試しを申し込んだところ、定期購入の契約になっていた。
SNSの広告経由でランディングページなどで申し込んだため、解約するにもどこに解約を申し出ればいいのかがわからないといった事例。
SNS経由の化粧品通販の問題点
お試し無料という文言を目立たせて、消費者に初回だけのつもりで定期購入契約を結ばせるケース。
【トラブル事例4】青汁の通信販売
通信販売で青汁を注文したら定期コースだった。毎月商品が届くが中止し返品したい。
解約を申し出たところ、通常価格を請求される。実質解約はできない契約を結ばされていた。
青汁の通信販売の問題点
消費者の多くが高齢者。チラシなどに記載されている「定期購入であること」の注意書きが非常に小さくわかりにくく記載されているケース。
2015年以降、全国の消費生活センター等へ寄せられる相談が急増したそうです。
国民生活センターの相談件数の推移によると、以下のように年々定期購入に関するトラブルの相談件数が増えているとのことでした。
通信販売で「お試し価格」「初回無料」などをうたった健康食品、化粧品、飲料の定期購入に関する相談は、PIO-NETに2011年度以降11,812件寄せられています。年々増加傾向にあり、2015年度の相談件数(5,620件)は、2011年度(520件)の10倍以上に増えています。
2011年度の相談件数は520件、2012年度は830件、2013年度は1,471件、2014年度は1,785件、2015年度は5,620件、2016年4月・5月は1,586件です。
トラブルの原因として共通しているのは、「定期購入であることがわかりにくい」ということです。
また、ECサイトの単品リピート通販でもよくある事例ですが、「期間限定」「今だけ!」などのあおり文句により、消費者が選択する時間的余裕を与えないという手法が見受けられます。
「今このページにいる人だけに特別なプレゼントがあります!」
「このページを閉じないで!いまだけ、●●が△△円で購入できるチャンスです!」
こうした手法は、冷静な判断をさせないという一種の心理的な手法ですので、十分に注意してください。
【参考】相談急増!「お試し」のつもりが定期購入に!?-低価格等をうたう広告をうのみにせず、契約の内容をきちんと確認しましょう-|国民生活センター
定期購入の申込ページへの表示義務とは?
平成28年改正特定商取引法において、通信販売の広告やインターネット通販における申込・確認画面上において表示することが義務化された内容は以下の通りです。
- 定期購入契約であること
- 支払代金の総額
- 契約期間
- 商品の引渡時期
- 代金の支払時期等
これまでのインターネット通販などの単品リピート通販では、確認画面上では初回お試し無料などの表示のみで、定期購入の契約であることや、支払総額についての表記がない、もしくはわかりにくい小さな文字で記載しているなどの手法が横行していました。
平成28年改正特定商取引法の施行によって、定期購入契約について、注文画面の最終画面上で、代金の総額、契約期間、商品の引き渡し時期、代金の支払い時期を表示させることが必要となりました。
今後、定期購入通販に関する被害者が少しでも減ることを心より祈っております。
平成28年改正特定商取引法のまとめ
今回は、平成28年改正特定商取引法の中でも、特にEC事業者に関連する、定期購入通販に関係する内容をご紹介いたしました。
定期購入通販、単品リピート通販は、2015年以降、非常に販売数を伸ばしていたこともあり、被害に遭われる方も急増する状況がつづいていました。
巧妙に消費者がわかりにくいような記載方法で、初回お試し価格などを強調し、長期契約である定期購入であることは、注文画面上からはわからないといった手法が一般的に横行していました。
ある種のECテクニックとして、ランディングページを利用して、入口商品である初回限定価格や送料無料といった「お得感」を演出し、実際には定期購入による長期の契約を結ばせるという方法が流行していたのも事実です。
平成28年改正特定商取引法の施行で、今後定期購入契約であることが注文画面上でわかり、初回が安くても、2回目以降の販売価格や最終総額がわかることで、ネット通販としては一種の「カゴ落ち」が発生しやすい状況にはなると思います。
それでも、2015~2016年の国民消費者センターへのトラブル相談の件数急増を見れば、こうした対応は重要だと痛感しています。
今回は、国民消費センターのウェブサイトで公開されていた実際にあった事例をいくつか紹介しましたが、全ての健康食品や化粧品通販の定期購入事業者が、「悪徳業者」というわけではありませんのでその点はご理解ください。
今回の平成28年改正特定商取引法の施行で、定期購入トラブルに会われる方がひとりでも少なくなることを心より祈っております。