2018年最新の楽天市場の動向と将来性【EC未来予想図】
EC未来予想図では、EC業界のこれから先、未来の状況を、ECサイト運営歴10年以上の現役ネットショップ店長が
現場の状況と店舗運営経験から予想するというコーナーです。
ネット通販業界は、iPhoneなどのスマホが市場に流通してから、大きな変貌を遂げてながら、成長を続けている業界です。
2017年にはEC市場の規模は16兆円超となり、百貨店などの市場規模を上回りました。
ネット通販業界にどっぷり浸かっている現役店長が、今後のEC業界の未来を予想します。
2018年上半期までの楽天市場の歩み
楽天市場
の2018年上半期までの状況を、現役楽天店長がご紹介いたします。
当店では、楽天市場に出店して、2018年で11年目となりました。
楽天市場では、2018年8月2日時点で、店舗数は45,969店舗、販売商品数は255,934,452点と公式発表されています。
筆者が楽天市場に出店してから、この出店店舗数は、ほとんど横ばい状態が続いています。
楽天市場のメリットは、楽天スーパーポイントや楽天カードなど、楽天経済圏と呼ばれる
楽天グループのネットワークの強さによる、集客力にあると思います。
楽天スーパーポイントは、全国のマクドナルドをはじめ、家電のJoshin、回転すしのくら寿司などでも貯めて使うことができます。
楽天新春カンファレンス2018の三木谷社長の講演の中で、楽天スーパーポイントの流通額が1兆ポイントを突破したという発表がありました。
また、楽天スーパーポイントが最も使われる場所が、実は「楽天市場」であり、楽天ポイント保有ユーザーの80%以上が、貯まった楽天スーパーポイントを楽天市場でネット通販のために利用しているそうです。
ここが、楽天市場の強み、楽天経済圏の強さだと思います。
楽天ポイントが流通する場所を増やしている反面、楽天市場の出店者数が伸び悩んでいるという状態が続いていますが、
その一番大きな要因は、やはり「楽天出店にかかるコスト」にあると思います。
楽天市場は、楽天グループとしては、毎年右肩上がりの成長を続けてきました。
ただし、楽天市場としては、Amazonに後れを取り始めているのは事実のようです。
その焦りからか、「楽天市場のAmazon化」とも呼ばれるような楽天物流を活かした楽天版FBAともいえる「楽天ダイレクト」に注力している理由かもしれません。
楽天市場では、エンパワーメント、出店者ありきの売場であることは、これまでもこれからも変わりません。
ただし、このエンパワーメントが、年々弱まってきているように感じるのです。
売れている古参店舗は、知名度もあり、これまでの実績やリピーター数もあるため、
経営が安定しながら、新商品などの拡販も上手くいきやすい傾向があります。
これは、一種のイノベーター理論という、先行者優位性に関連があります。
また、商品ジャンルでも、特定の店舗が第一想起されるような状態にあり、
特にグルメ、食品ジャンルはその傾向が強いです。
楽天市場で、おせち料理といえば、「博多久松」が真っ先に挙げられます。
カニは、多少競合店舗が増えたこともあり、「海の幸なのにYAMATO」「越前かに問屋「ますよね」」「越前かに職人 甲羅組」などが有力店舗です。
土用の丑の日需要のうなぎといえば、「うなぎ屋かわすい 川口水産」が第一候補でしょう。
こうした、古くからの出店店舗が、より強くなり続けているという状況は
楽天市場のみならず、ヤフーショッピング
などにも言える共通のポイントです。
楽天市場は、売れている店舗と、売れていない店舗の差がどんどん開き続ける二極化が起こっています。
ちなみに、楽天市場で高い売上を誇る店舗数は以下のような数であると楽天EXPOで公式発表されています。
2018年上半期までの楽天市場は、楽天グループとしては右肩上がりの成長を続けていますが、
楽天市場としては、鈍化、もしくは流通額の減少傾向があるのかもしれないと筆者は考えています。
2018年の楽天市場の年末商戦へ向けて
では、2018年の楽天市場
でのネット販売戦略について、考察してみたいと思います。
ネット通販市場では、一年を通じてもっとも売上高が高くなる時期が、11月~12月の年末商戦の時期です。
年末商戦期間は、以下のような需要が生まれます。
- お正月のおせち料理
- お歳暮
- クリスマス関連
- 冬のボーナス支給時期
- 年末年始のイベント
- 冬の暖房器具
- 年末年始の帰省需要
たった2ヶ月間に、一年の半分近い売上をあげられる店舗さんも少なくない時期です。
また、商品ジャンルによっては、この年末商戦が、ネット通販の売上の8割方を売り上げるという店舗さんもおられます。
おせち料理やクリスマスケーキなどは、まさにこの年末商戦にハマりますね。
楽天市場で、年末商戦で高い売上を目指すには、楽天市場のセールスケジュールを予想した
売上対策が重要となります。
例年からのデータになりますが、楽天市場では、年末商戦期には以下のイベントが開催されます。
- 11月・お買い物マラソン・ポイントアップ祭
- 12月・楽天スーパーセール・楽天大感謝祭
おせち料理やクリスマスケーキは、最盛期は12月ですが、
需要としては、11月から取込みを始める方がより高い売上を作りやすいのです。
ネット通販では、もうあたりまえになってきている「早期割引」「早割」という販売方法があります。
早割は、母の日ギフトや父の日ギフトなどでも使われる、ネット通販の王道的な施策です。
特に、ギフト商品やおせち料理、クリスマスケーキなどは、一年に一回購入したら、その後にもう一回購入するという商品ではありません。
競合よりも早く販売を開始し、早割で早期購入メリットを提示して、顧客を青田刈りするような手法こそ、季節需要商材には重要となります。
季節需要商材でない場合は、リピート購入につながる商材かどうかが、一つの重要なポイントとなります。
日用品や消耗品などは、インターネット上で一度購入する場所を決めた後は、購入履歴から再注文するケースが多い商材です。
もちろん、型番商品なので価格競争が前提にはなりますが、ある程度送料と合わせて買い求めやすい価格であれば他社と比較することもなく、継続的な購入が期待できます。
BtoC、個人消費者の場合は、都度価格が安い店舗を探すというユーザーも多いですが、
BtoB、法人間取引の場合は、経理の都合などもあり、安心できる店舗、企業で購入できれば、以降はリピート通販につながりやすいです。
楽天市場での年末商戦の戦い方は、楽天で最も高い売上高になる、12月開催の楽天スーパーセールを如何に乗り切るかにあると思います。
2019年以降の楽天市場の予想
楽天市場
の未来予想図を考える時、楽天市場がどのような成長、進化を遂げようとしているかは、楽天市場のカンファレンスである、
楽天EXPOや楽天新春カンファレンスでの情報が重要となります。
2018年1月に開催された新春カンファレンスでは、楽天市場の未来像として以下の内容が楽天公式発表としてありました。
直近の楽天EXPO2018では、更に楽天市場の未来像が具体的になる発表がいくつかありました。
楽天市場である程度高い売上を作れている店舗のほぼ9割以上は、
楽天市場を退店することができないほどに、売上の柱になっていることがあります。
これは当店の楽天市場のネットショップにも言えることですが、
全体の売上の50%を楽天市場が占有しているため、楽天市場を閉店してしまうと
経営的に非常に大きなダメージとなることが考えられます。
楽天市場の中である程度知名度が高くなれば、自社ECサイトを利用しれくれるユーザーも
増えてきますが、楽天市場は「楽天スーパーポイント」という楔(くさび)があるため、
楽天ヘビーユーザーが、わざわざそのショップの自社ECサイトに会員登録してまで購入するというのは、
自社ECサイト限定商品などのメリットがない限りは難しいでしょう。
楽天市場の未来像として、楽天EXPO2018の中で語られた、ワンデリバリー、ワンペイメントなどがあります。
これは、物流と決済を楽天で完結させるという、楽天の直近の最大の目標でもあります。
また、楽天は、楽天EXPO2018のなかで、楽天市場に出品する商品の画像に対して、
商品画像登録ガイドラインを遵守することを義務付けることも発表されています。
ガイドライン遵守の必須化は、2018年10月からですが、猶予期間がもうけられているため、
実際のガイドライン適用は、2019年1月からとされています。
ワンデリバリーに加えて、画像のシンプル化、商品名の簡素化など、
多くの要因が、楽天市場が向かう方向性が、アマゾンに近づいているということが見て取れます。
2020年には東京オリンピックが開催されるため、外国人観光客の来日による
インバウンド需要が過去最大化されることが予想されています。
楽天は、楽天IDをグローバルIDとして世界に広げていくため、
サッカー世界No.1クラブチームのFCバルセロナの公式スポンサーになりました。
また、楽天が運営しているJリーグサッカーチーム、「ヴィッセル神戸」に、
FCバルセロナでも活躍していた、スペイン代表イニエスタ選手を移籍させるということも
楽天の世界戦略のひとつとして話題となりました。
こうした背景もあり、楽天のアマゾン化を進め、諸外国からの受注発注に対しても
対応できる物流インフラをワンデリバリーとワンペイメントで実現させようとしているのだと
筆者は考えています。
EC未来予想図:楽天市場編のまとめ
今回は、EC未来予想図の楽天市場編として、楽天出店11年目の現役楽天店長が解説させていただきました。
楽天市場は、ここ数年、目新しいイベントなどもなく、楽天お買い物マラソンと楽天スーパーセールという2枚看板のイベントを回し続けてきました。
楽天スーパーポイントは、インターネット以外のリアル店舗でも貯まることが普及しました。
楽天ブランドは、楽天経済圏といわれる楽天市場をはじめ、楽天銀行、楽天カード
、楽天トラベル
、楽天ブックスなど、楽天と冠したサービス経済圏の有機的なつながりはこれまで強化されてきた印象があります。
2019年以降、2020年の東京オリンピック開催による、過去最大のインバウンド需要を、いかに楽天グローバルとつなげられるかが、課題だと思います。
今回の記事の内容が、楽天市場
、楽天グループの未来予想の参考になれば幸いです。