ネット通販 物流問題

EC市場、ネット通販の物流 個数ランキング 2017年

ネット通販 物流問題

EC市場・ネットショッピングにおける物流の問題点

ネットショッピングと物流について

インターネット上のネットショッピングで
その重要なバックヤードである物流システム。

2017年2月23日の日本経済新聞に
ヤマト運輸の労働組合が春季労使交渉で
宅配便の荷受量の抑制を求めたニュースが
公開され、テレビをはじめ様々なメディアでとりあげられています。

理由は、インターネット通販、特にAmazonの荷物が
急激に増加したことと、過剰な配送時間対応の要求により
慢性的な人手不足と労働時間の長時間化が原因と言われています。

今回はネットショッピングと物流の問題について
いくつかの事例を紹介していきます。

2013年のアマゾンと佐川急便の取引停止について

ネット通販と物流問題佐川急便
アマゾンは、2013年までは佐川急便が物流を専属担当していました。
2013年に佐川急便の方からアマゾンに対して、取引停止を行いました。

当時の理由としては、成長企業であったAmazonの
物流対応の要求が「薄利多売」を極める要求だったと
告発本などで言われています。
厳密な金額などは公表されていないため
推測の範疇となりますが、荷物1件あたりにつき、
300円程度の配送料で対応していたといわれています。

通常の宅配便の運賃が、60サイズで600円~700円ですので、
この300円という配送料がいかに常軌を逸しているかは
お分かりになると思います。
アマゾンはこの300円前後の運賃から、さらに値引き交渉をしたとも
言われているので、さすがの佐川急便もこれ以上の対応は
無理だと現場の状況と企業経営の観点から取引停止の
決断を下したそうです。

現在、佐川急便にかわって、ヤマト運輸が
同じような対応をアマゾンに強いられているわけです。
業界最大手のヤマト運輸でさえ、限界に立たされています。

物流企業における人手不足問題について

ヤマト運輸に限らず、物流企業のトラックドライバー、
配達員の人手不足の問題は深刻です。

配送業、物流業は、現場は
いわゆる肉体労働的業務がメインです。

現状の就業者の年齢構成比率について、
総務省が集計し、国土交通省が発表している
「トラックドライバー就業者の年齢構成比H26」によると
トラックドライバーの年齢構成比は
40代以上が70%と発表されています。
30代以下の若年層が圧倒的に少ない業界です。

ネット通販と物流問題年齢層

しかも新規参入がほとんどなく、
退出事業者の方が新規参入を上回る状況です。

ネット通販と物流問題参入グラフ

これでは、いくらネット通販が成長しても
それを出荷、配達する物流の供給が
不足するのも当然の状況といえます。

ネット通販成長による配送物量の増加問題について

再配達問題とも重なることですが、
ネットショッピングの注文増加により、
物流企業の配達対応も増加傾向にあります。

ヤマト運輸の平成28年3月期の宅配便における、
取り扱い個数、17億3千万個と公式に発表されていますが、
これは過去最高を記録しています。

ネット通販と物流問題ヤマト運輸

そして、今季、平成29年期の予測では
この個数を上回るペースで配送個数が
増え続けているという状況です。

日本の人口一人当たり、年間13個の荷物を
受け取っている計算になります。
ヤマト運輸のみで、13個ですので、
その配達個数の多さがわかると思います。

2017年2月末に、ヤマト運輸は
荷受量の抑制も検討していることを
公式に発表しています。
また、状況次第では、運賃の値上げも
視野に入れているとのことですので、
これまで隆盛を続けていたネット通販、
EC市場も、ここへきて物流の面で
足踏みとなる可能性が高まってきています。

今後ネットショップを運営する事業者は、
物流コストといかに向き合うか、
商品価格や、送料無料対応について
もう一度検討する時期に来ていると言えます。

【参考】ヤマト運輸

ネット通販の過剰な「送料無料」前提主義

Amazonをはじめ、楽天市場やヤフーショッピングなどでも
商品を検索した際、小口の商品以外のケース販売などは
大多数が「送料無料」となっているかと思います。

ネットショッピング=送料無料

この図式が当たり前になっている現在、
利用者側である顧客も「送料」はかからないのが前提
という印象を強く持っています。

むしろ

「送料がかかるならいらない!別の送料無料の店で買う」

という方が大多数のように感じています。

アマゾンでは、以前は、極端な例では
100円のボールペン1本でも送料無料で対応していました。

現在は、2000円以上の購入で送料無料になる
送料の閾値を設定しています。

ただし、一度この送料無料の魅力に慣れ親しんだ
ユーザーの意識はそうそう変わるものではありません。

グルーポンやポンパレクーポンなどの
クーポンチケット系ネット通販サイトでは
ほぼ、90%以上の商品は「送料無料」で出品されています。

送料がかからない商品としては、
宿泊施設のチケット(申し込み予約番号を購入)するような
メール納品ベースの商品のみです。

送料は、地域やサイズによって料金が異なります。
そのため、全国一律の設定をかけようと思えば、
商品代金に送料の平均価格を含めた形で販売価格を算出する方法を
とることが通例となっています。

また、沖縄県などの離島は、どの配送会社を利用しても
配送料金が高額なため、離島に限り追加運賃が必要という
対応も多くのネットショップで取り入れられている
送料設定となっています。

送料無料はじつは、「送料込」であることも多いのですが
ユーザーの認知では「送料は無料」という印象が強いです。

そろそろ、ネット販売の送料無料について、
EC業界全体の問題として考えていく時期に来ていると思います。

荷物未受け取りによる再配達の問題

ネットショップの商品だけでなく、
カタログ通販などいわゆる通販商品の増加に伴い、
物流ドライバーが一日に配達する個数も比例して
増加傾向にあります。

宅配便は、時間指定ができることも
大きなメリットですが、この時間指定をかけていても
商品を受け取られないというケースが増えてきているようです。

核家族化が進み、また、一人暮らしの若い世代などは
日中に自宅にいない不在状態であることが多いと思います。
こうした、不在中に配達にあがると、荷物を受け取られないまま
再配達のための持ち帰り対応が必要となります。

日本の配送業において、再配達に追加料金は発生しません。

一度配達に伺って、持ち帰って再度配達する。
こうした再配達にかかる「無駄なコスト」が
積み重なって、今では再配達にかかる時間は
年間約1.8億時間。一年間で約9万人分の労働力に
相当するという発表がありました。
これが全て「無償」で対応させれているわけです。

先日、佐川急便の配達員が荷物を投げつけるという衝撃的な動画が
Youtubeに公開されて話題になりました。

筆者がネットショップの運営支援を行っている際、
配送業者から、未受け取りの調査依頼が来ることがあります。

配達日時の指定をしているにも関わらず、
その日時にお届けに上がっても不在。
再配達の指定をかけてもまた不在。
受け取り人に電話をかけてもつながらない。

こうした実際に商品を受け取られないまま、
出荷人である店舗に商品が戻ってきてしまう例は
月に数件発生しています。

佐川急便の配達員が荷物を手荒に扱いたくなる
気持ちも、少しわかってしまいました。

もう一つ、再配達の問題としては、
配達の際にトラックから排出される二酸化炭素排出量の問題です。
これについては、国土交通省が発表している
平成26年度輸送機関別輸送分担率では、
トラックなどによる貨物輸送が91.3%を占めると発表されています。
二酸化炭素排出問題は、環境問題に直結するため、
国としても深刻な問題として受け止めています。

再配達問題については、現在、宅配業最大手である
ヤマト運輸や日本郵便も、ネットショッピングモールの
楽天市場などと協力して、駅内や郵便局などに
専用宅配ボックスを増やす「はこぽす」の対応を始めています。

楽天市場のはこぽす

これでは、いくらネット通販が成長しても
それを出荷、配達する物流の供給が
不足するのも当然の状況といえます。

またコンビニ受け取りや、営業所受け取りなど
受け取るシーンを増やしていくことで
再配達を減らす方向でも動いています。

配達時間における過剰なスピード要求の問題

Amazon
これもAmazonや家電量販店大手のヨドバシカメラの
ネットショップであるヨドバシ.comの対応が
よく取り上げられます。

Amazonはプライム会員限定ですが、
「お急ぎ便」というサービスを行っています。

本来アマゾンのプライム会員(年会費3900円)でなければ
以下のオプション料金が必要なサービスとなっています。

Amazon|お急ぎ便・当日お急ぎ便の配送料

配送料 お届け日時
お急ぎ便 360円(税込) 注文確定日から3日以内
当日お急ぎ便 514円(税込) 注文確定当日

※Amazonプライム会員は無料
※2017年2月時点の情報となります

特に「当日お急ぎ便」というサービスは、
注文の時間帯と対象エリアによっては、
注文したその日に商品が届くという
驚きのスピードの配送サービスです。

更にアマゾンは、当日お急ぎ便を上回る
スピードの配送サービス、
Prime Now(プライム ナウ)
を実施しています。

amazonプライムナウ

Prime Now(プライム ナウ)は対象エリアでのお買い物が1時間以内に届くプライム会員向けサービスです。
2時間便は無料でご利用いただけます。

現在の対象エリアは以下に定められています。

Amazon|プライムナウ対象エリアについて

対応都道府県 対象エリア
東京都 23区2市(世田谷区・目黒区・千代田区・中央区・台東区・墨田区・江東区・豊島区・板橋区・北区・中野区全域、ならびに渋谷区・品川区・大田区・港区・杉並区・新宿区・文京区・荒川区・足立区・葛飾区・江戸川区・練馬区・調布市・狛江市の一部)
神奈川県 川崎市の6区(高津区・中原区全域、多摩区・宮前区・川崎区・幸区の一部)、ならびに横浜市の11区(西区・神奈川区・港北区・中区全域、都筑区・緑区・鶴見区・南区・磯子区・保土ケ谷区・旭区の一部)
千葉県 浦安市全域、ならびに市川市の一部
大阪府 大阪市17区(北区・淀川区・東淀川区・都島区・旭区・中央区・港区・福島区・此花区・西淀川区・浪速区全域、ならびに城東区・東成区・鶴見区・天王寺区・西区・大正区の一部)、豊中市および吹田市全域、摂津市・守口市の一部
兵庫県 尼崎市・伊丹市の一部

※現在、東京都・神奈川県・千葉県・大阪府・兵庫県の対象エリアのみ利用可能。対象エリアは、随時拡大中。
※2017年2月時点の情報となります

ヨドバシ.com

ヨドバシカメラが運営するネットショップ、
ヨドバシ.comも当日配送を行っています。

しかも、ヨドバシ.comは
日本全国送料無料です。

ヨドバシ・ドット・コム配送エリア

アマゾンにせよ、ヨドバシカメラにせよ
当日便を打ち出している背景には
顧客の利便性、顧客満足度を最大化させる
ことに理由があります。

ただ、こうした過剰ともいえる
スピード配送には、利用者側である顧客の声として
「少しやりすぎでは?」
「そんなに早くなくていいよ」
という声も割合的には少なくないと思います。

今日注文したものが明日届くというのは
本当に便利です。

ただ、注文した商品が、必ずしも
明日必要かどうかは別の問題です。

明日必要でない商品、今日必要でない商品は
お急ぎ便ではなく、「日時指定便」で
確実に受け取れる時に受け取れば
再配達問題の減少にもつながると思います。

必要ないユーザーへの過剰スピード配送は
業界としてもやめていく方向になれば
物流不安も少しずつ改善されるのではないでしょうか。

日本国内における宅配企業の物流シェア率について

宅配便業界は、ヤマト運輸を最大手として、
佐川急便と日本郵便(ゆうパック)の3社が
熾烈なシェア争いを繰り広げています。

物流業界は、上位3社で
全体のシェアの92%を占めています。

国土交通省が発表している、
平成27年 宅配便取扱個数について
企業別に取扱個数を紹介いたします。

【業界第3位】日本郵便のゆうパックの取扱い個数

ネット通販と物流問題ゆうパック
日本郵便のゆうパックの平成27年の
宅配便取扱個数は513,024,000個で
前年対比は105.8%伸長。
業界のシェア率は13.8%と第3位です。

ゆうパックのメリットとしては、
受け取りのシーンが
全国の郵便局留め(郵便局受け取り)が可能な点と
発送も郵便局以外にローソンやミニストップなどのコンビニエンスストアから
発送ができる点です。

また、配送時間についても
20時~21時
という比較的遅い時間帯の配達指定ができるので
日中不在なことが多い一人暮らしのサラリーマンなどには
時間帯的に受け取りやすいメリットがあります。

また、ネットショップで注文があった商品などの集荷の依頼について
土日祝日も集荷対応できる点はゆうパックのメリットだと思います。

【業界第4位】西濃運輸のカンガルー便の取扱い個数

ネット通販と物流問題西濃運輸

西濃運輸のカンガルー便の平成27年の
宅配便取扱個数は133,413,000個で
前年対比は98.6%とわずかに減少しています。
業界のシェア率は3.6%と第4位です。

【業界第5位】福山通運のフクツー宅配便の取扱い個数

ネット通販と物流問題福山通運

福山通運のフクツー宅配便の平成27年の
宅配便取扱個数は120,443,000個で
前年対比は98.3%とわずかに減少しています。
業界のシェア率は3.3%と第5位です。

【参考】福山通運

平成27年 宅配便取扱個数(国土交通省調べ)

宅配便名 取扱事業者 前年取扱個数(個) 取扱個数 対前年度比(%) 構成比(%)
宅急便 ヤマト運輸(株) 1,622,040,000 1,731,263,000 106.7 46.7
飛脚宅配便 佐川急便(株) 1,196,001,000 1,198,298,000 100.2 32.3
ゆうパック 日本郵便(株) 485,044,000 513,024,000 105.8 13.8
カンガルー便 西濃運輸(株) 135,337,000 133,413,000 98.6 3.6
フクツー宅配便 福山通運(株) 122,565,000 120,443,000 98.3 3.3
その他 16便合計 9,092,000 8,027,000 88.3 0.2
合計 全社 3,570,079,000 3,704,468,000 103.8 100

※本表は、宅配便名ごとに、その便名で運送を行う各事業者の取扱個数を集計したものである。

2018年以降のネット通販と物流の予測

2018年以降のネット通販市場と物流業界の関係について、
これはあくまでも筆者の予測となりますので
その点あらかじめご理解ください。

2017年2月末の時点で、ヤマト運輸の発表により
荷受量の抑制を検討しているという公式な
発表がありましたが、これは、ヤマト運輸に限らず
業界二位の佐川急便、三位の日本郵便も
同じ状況にあると言えます。

増え続ける荷物量に対して、
配達するドライバー人員の
慢性的人手不足の問題。

若年層の車離れといわれる昨今で
トラックを運転しようという
若者がこれから増えてくるかといえば
残念ながら減少を続けることになるでしょう。

配達する人手が増えないのであれば、
物量を減らすという、企業経営として
マイナスの判断を強いられているのが
2017年2月時点での状況です。

2018年以降に起こることとして、
配達料金の値上げ
再配達の有料化
が考えられます。

EC市場が伸び続ける状況にある今、
物流破壊がEC市場の成長を止める
最も根幹的な問題だと思います。

参考になれば幸いです。

【参考】
平成27年度 宅配便取扱実績について|国土交通省




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