ネットショップの多店舗展開・多店舗出店のメリットとデメリット
ネットショップを運営されている方なら、一度は耳にされたことがある「多店舗展開」についてです。
自社ECサイト以外のショッピングモールへもネットショップを出店することを
多店舗出店と言います。
ネットショップである程度大きな売上を目指すのであれば、
この多店舗展開、多店舗出店は必須対応となるでしょう。
今回は、実際に楽天市場やAmazon、ヤフーショッピング、Wowmaなどで
多店舗出店している現役店長が、ネットショップの多店舗運営について徹底考察してみます。
ネットショップにおける多店舗運営・多店舗出店とは
ネットショップの開業こそ、BASEなどのインスタントECサービスの登場によって
非常に簡単かつ低コスト、実質無料出店が可能となりました。
「ネットショップの運営は、自社ECサイト一つで十分!」
そう思っている方は、本当にそれで大丈夫でしょうか?
多くのECサイトが、自社ECサイト以外に、楽天市場やYahooショッピング、AmazonやWowma!、
ポンパレモールやQoo10などのショッピングモールにも出店しているのには大きな理由があります。
多店舗出店・多店舗展開する理由は
売場によって顧客が違うため、多店舗運営の方が総合的な売上が上がりやすいから
です。
現在自社ECサイトと楽天市場、もしくはヤフーショッピングやAmazonなどの限られた範囲での
多店舗運営をされているネットショップ出店者さんもたくさんおられると思います。
筆者は、2017年12月現在、以下のショッピングモールにて出店しています。
このサイト運営者が運営しているネットショップ
これだけ多くのショッピングモール、売場で出店していて問題になるのが、
各モールのバックヤード、管理画面の違いです。
当店では、多店舗展開をしているにもかかわらず、
受注の処理はいつも担当者一人で行っています。
楽天スーパーセールなどのビッグイベントの際には、
一日の受注件数が500件~800件を超える日もありましたが、
そんな日でも午後から処理を開始して、夜19時までには
明日の出荷のためのピッキングリストから、配送会社のシール、送り状の作成まで完了しています。
その理由は「受注処理システムの導入」にあります。
今回は、ネットショップの多店舗運営についてのメリット・デメリットから
主要な受注処理システムの料金比較表もご紹介したいと思います。
多店舗出店のメリット
ネットショップを多店舗運営するメリットとしては、大きく3つのメリットをご紹介します。
潜在顧客を逃さずに売上を獲得できる
多店舗運営の一番のメリットはやはり売上の最大化が図れるという点です。
楽天市場だけ出店している店舗であれば、顧客は「楽天市場に来るユーザーのみ」となりますが、
同時にAmazonに出店していれば、「Amazonに来るユーザー」も自分のネットショップの潜在顧客となります。
出店する売場が増えれば増えるだけ、潜在的な顧客もまた増えていくことになります。
「自社ECサイトだけでも人気のある店舗だから大丈夫」
数年前は、大手企業などが楽天市場に出店するということは考えられない事象でしたが、
2017年において、楽天市場のなかに、自社ECサイトを構える大手企業はたくさん出店しています。
それは、楽天市場に来店する顧客は「楽天市場でしかネットショッピングしないユーザーがいる」ということに気付いたのです。
Amazonを普段利用するプライム会員などは、Amazonでしかネットショッピングしないという傾向があります。
理由は、Amazonプライム会員には年会費がかかっていますが、年会費を払うことで翌日到着のお急ぎ便、プライム対応が受けられるからです。
わざわざ年会費を払って得られるメリットを手放してまで他のモール、楽天やヤフーショッピングに
同じ商品を買いに行くというのは理屈上考えにくい行動だからです。
多店舗出店することで、各売場、モール毎の顧客を潜在顧客としてとらえることで
売上の最大化を狙うことができます。
モール主体のイベントの集客恩恵を受けられる
カラーミーショップやMakeshop、BASEやEC-CUBEなどの自社ECサイトと呼ばれるネットショップには
集客面を自力で行わなくてはならないという課題があります。
多くの場合、自社ECサイトで集客を行う方法として、リスティング広告、CPC広告を
利用する広告集客を採用するケースがありますが、広告の利用は、顧客獲得に対する
コストの増大化をまねくことにもなります。
楽天市場は、3ヶ月に一回のサイクルで「楽天スーパーセール」というイベントを開催しています。
また、楽天スーパーセールが行われない月には「楽天お買い物マラソン」と呼ばれる
複数ショップ買い回りでポイントが還元されるイベントを開催しています。
楽天のイベントセール時には、出店者が特に何もしなくてもモール全体のアクセス数が
通常時に比べて約3倍以上になる傾向にあります。
売上の公式である「アクセス人数×転換率×客単価」のアクセス数が3倍になることで
売上も乗じて3倍以上になる傾向にあるのが、モールでの販売のメリットと言えます。
Amazonでは、不定期ながらプライム会員向けのイベントセールを開催しますし、
ヤフーショッピングは楽天市場以上に、頻繁にポイントアップのモールセールを実施しています。
また、Wowmaでは、AUキャリアユーザー向けのイベントで「三太郎の日」というイベントを
月別で開催することに加えて、月末月商は毎月ラッキーセールという大型セール企画を催しています。
モールに出店することで、こういったモールが主体となってポイントの高還元イベントを実施することによる
集客力があるということが、非常に大きな恩恵としてあります。
モールサービス終了などの最悪の事態でもリスク回避ができる
これは、リスク回避策として重要な手法です。
もし、あるショッピングモールが何かしらの不祥事などで、サイト閉鎖に落ちいた場合、
そのショッピングモールだけでネット販売をしていたとしたら、サイト閉鎖以降は
売上がゼロ円となります。
多店舗で運営していれば、もしひとつのショッピングモールが閉鎖したとしても
他のモールが販売を継続していれば、売上は減少しますが、売上ゼロという最悪の事態は
回避することができます。
リスク回避の手法としても多店舗展開は十分にメリットがあります。
多店舗出店のデメリット
ECサイトの多店舗出店のデメリットとして、大きなデメリットを3つご紹介します。
商品登録や商品改廃、在庫管理が煩雑となる
多店舗展開の最大のデメリットが、登録している商品の管理が煩雑になるということです。
特に在庫管理に関しては、一元管理システムを導入していない場合、在庫数がモール毎の
管理となるため、実在庫数と、ネット販売在庫数が異なってしまう恐れがあります。
また、型番商品などの場合、商品リニューアル発生時には、出店しているモールの数だけ
商品画像やJANコード、商品スペックなどを入れ替える作業が発生します。
商品管理の面で、多店舗展開は管理の手間が増えるというデメリットがあります。
多店舗展開に際しての商品管理の煩雑さを解消させる方法としては、商品の一元管理システムを導入することで対応可能です。
商品の一元管理システムについてはまた別の機会にまとめて紹介したいと思います。
受注処理対応に人手が必要となり余計なコストがかかる
受注処理についても、商品管理と同様に一元管理を行わない場合は
バックヤードシステム毎に処理作業が発生することになり、作業が煩雑となります。
楽天市場と自社ECサイトのみの出店であれば、最低で2つのバックヤードの作業で済みますが
AmazonやWowma、ヤフーショッピングへの出店を行っている店舗であれば、管理画面は
出店モールの数だけ存在することになりますので、注文が入るたびに各モールの管理画面に
ログインして受注処理を実施する必要があります。
商品出荷のリードタイムにもよりますが、受注件数が増えるほどに負担は大きくなり
受注処理対応にも人手が必要となりますので、結果的にネットショップの運営コストの増大につながっていきます。
その点を当店では、ごくーシステム
という受注処理サービスで一元管理してクリアしています。
出店する場所、モール毎にコストが増える
楽天市場では、スタンダードプランに出店した場合年間で、約70万円弱の固定費が必要となります。
ヤフーショッピングやWowmaは出店費用を無料化しているため、固定費自体はほぼゼロ円ですみますが、
ポンパレモールなどは、月額固定費が発生してしまいます。
モールの複数出店の場合は、初期費用や月額費用に加えて、決済手数料やポイント原資などの
コストがそれぞれのモール毎に必要となるため、運営コストは増える傾向にあります。
ただし、多店舗出店は、商品点数や商品の需要にもよりますが、売場がことなれば、顧客も変わることから、
楽天市場では売れない商品が、Amazonでは飛ぶように売れるというケースも起こりうる事例です。
モール出店のコスト以上に売上が獲得できれば、多店舗出店は十分にメリットにもなりえます。
受注処理システムの料金・機能比較表
2017年12月時点で、実際に利用することができる受注処理システムで、比較的多数の出店者から支持されているサービスをいくつかピックアップしました。
今回紹介する受注処理システム以外にも、月額利用料の安いサービスや、システム面・機能面で優れているサービスはまだまだあると思います。
今回の受注処理システムの選出に関しては、利用者が多く、ある程度安定的な運営ができているものに絞ってご紹介しています。
主な受注処理システムの料金比較表
ネクストエンジン | クロスモール | 助ネコ | アシスト店長 | テンポスター | 楽楽バックオフィス | まとまるEC店長 | ごくーシステム |
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初期費用 | 無料 | 無料 | 3万円 | 無料 | 無料 | 無料 | 無料 | 3万円 |
月額料金 | 1万円~ | 5,000円~ | 2,000円~ | 1万円~ | 1万円~ | 5,000円~ | 9,800円~ | 15,000円~ |
備考 | 受注件数400件までが基本料金 | サイト数と登録商品数で月額料金が変動 | 月間受注件数が100件までは最低料金 | 月間受注件数が400件までは最低料金 | 商品点数+受注件数で月額料金が決定 | 月商500万円未満までは最低料金 | 商品登録数が3000点までは最低料金 | 4大モールが初期セット料金 |
主な受注処理システムのモール対応表
ネクストエンジン | クロスモール | 助ネコ | アシスト店長 | テンポスター | 楽楽バックオフィス | まとまるEC店長 | ごくーシステム |
|
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楽天市場 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Amazon | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Yahooショッピング | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Wowma! | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ |
ポンパレモール | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ |
Qoo10 | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | ○ | ○ |
ヤフオク | ○ | ○ | ○ | × | ○ | × | ○ | × |
SHOPLIST | ○ | ○ | × | × | ○ | × | × | × |
ZOZOTOWN | ○ | × | × | × | × | × | × | × |
ヤマダモール | ○ | ○ | ○ | × | △ | × | × | ○ |
NETSEA | ○ | × | × | × | × | × | × | ○ |
主な受注処理システムのカート対応表
ネクストエンジン | クロスモール | 助ネコ | アシスト店長 | テンポスター | 楽楽バックオフィス | まとまるEC店長 | ごくーシステム |
|
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
MakeShop | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | ○ |
BASE | × | × | ○ | × | × | × | × | × |
FutureShop2 | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | ○ | ○ |
カラーミーショップ | ○ | × | ○ | ○ | ○ | × | × | ○ |
EC-Cube | ○ | ○ | ○ | ○ | △ | × | × | ○ |
おちゃのこネット | ○ | × | ○ | × | × | × | × | × |
ショップサーブ | ○ | ○ | ○ | ○ | ○ | × | △ | ○ |
BカートASP | ○ | × | × | × | × | × | × | ○ |
まるごとEC | ○ | × | × | × | × | × | × | × |
Zencart Pro-R | ○ | × | × | × | × | × | × | × |
easy my shop | ○ | × | × | × | × | × | × | × |
ebisumart | ○ | ○ | ○ | × | × | × | × | × |
リピスト | ○ | × | × | × | × | × | × | × |
たまごリピート | ○ | ○ | × | × | × | × | × | ○ |
ECサイトの多店舗展開についてのまとめ
今回はネットショップの運営において、規模拡大、売上拡大を目指す店舗さんには
いつかは行うことになる多店舗出店・多店舗展開について実際に多店舗出店している
現役店長の視点からメリットとデメリットを考察してみました。
ネットショップで多店舗運営を実施するためには、人的なリソースと運営コスト面での
費用の捻出が必要不可欠となります。
また、商品管理、在庫管理をシステムによって一元化することも必須で必要となります。
受注処理についても同様にシステム化して一元化しなくては、複数のモールの
バックヤード毎にログインして処理を実施する必要があります。
受注の件数によっては対応人員を雇わなくては到底追いつけない事態になりますので
多店舗出店を検討されている方は、事前に商品管理と受注管理を一元化できる
サービスの利用も踏まえて考えられるといいと思います。
ECサイトの多店舗出店を検討されている方の参考になれば幸いです。