
「売上を伸ばしたいのに、日々の運営業務で手いっぱいになっている」「やりたい改善施策はあるけれど、データ集計や受注対応に追われて手が回らない」。EC担当者さんから、こうした相談を受けることは少なくありません。
日本のBtoC-EC市場は拡大を続けていますが、店舗側では集客、新規顧客獲得、CRM、データ活用、在庫・物流、業務効率化など、担当しなければならない領域も広がっています。
こんにちは。「売れるネットショップの教科書」のエビス店長です。
以前このページでは、2022年に実施されたECサイト運営者200名への調査を紹介していました。当時の大きな課題は「サイトへの集客」「新規顧客獲得」「既存顧客の継続」でした。現在もこれらは重要ですが、2026年のEC現場ではもう一つ大きな問題が見えてきています。
「改善したいことは分かっているのに、日々の業務に追われて実行できない」
2026年にEC・D2C事業に携わる担当者・責任者1,006人を対象に行われた調査では、81.6%が「データ整備や分析などのノンコア業務に追われ、本来やりたかった施策や顧客対応を諦めた経験がある」と回答しています。さらに68.8%が、業務時間の4割以上をデータの前処理に使っていると回答しました。
この記事では、現在のECサイト運営で起こりやすい7つの課題を整理し、それぞれ「何を確認し、どこから改善すればよいのか」まで具体的に解説します。
- 2026年のEC担当者が抱えやすい課題
- EC運営でよくある7つの問題
- 売上・利益・業務・組織の課題整理方法
- EC改善施策の優先順位の決め方
- 課題ごとに最初に確認したい数字
- AI・ツール・外部支援の使い分け
2026年のEC担当者が抱える課題は「売れない」だけではない
ECサイトの課題というと、以前は「アクセスが増えない」「新規顧客を獲得できない」といった集客面の悩みが中心でした。
実際、IRISデータラボが2022年12月に全国の現役ECサイト運営者200人へ行った調査では、「サイトへの集客」が62.0%、「新規顧客獲得」が56.0%、「既存顧客の継続」が37.5%となっていました。課題がないと回答した人は11.5%にとどまり、多くのEC運営者が何らかの悩みを抱えていたことが分かります。
一方、2025年にEC担当者へ実施された調査では、課題として「データを上手く活用できていない」「実施したいことを実現するための人手が足りない」といった回答が目立ちました。また、今後注力したい施策として「継続的な購買の促進」も多く挙げられています。
つまり現在のEC運営では、
集客できない → 売れない
という問題だけではなく、
データが分散している → 判断できない → 作業に時間がかかる → 改善施策まで手が回らない
という構造的な問題も増えています。

ECサイト運営でよくある7つの課題
1.データはあるのに活用できていない
現在のEC運営で特に増えているのが、データ活用の悩みです。
GA4、広告管理画面、ECカート、楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング、CRM、在庫管理、受注管理など、ECではさまざまな場所にデータがあります。しかし、データが多いことと、意思決定に使えることは別です。
2026年の調査では、データ前処理の方法として「表計算ソフトを使った手作業」や「カート・モールからCSVを出して手動統合」といった方法が多く使われていました。
毎週レポートを作っているのに、最終的に「売上が上がった・下がった」しか分からないのであれば、データを十分に活用できているとは言えません。
2.人手不足で改善施策まで手が回らない
EC担当者の仕事は非常に幅広くなっています。商品登録、ページ更新、広告、SNS、メール配信、受注処理、在庫確認、問い合わせ対応、分析、販促企画など、企業によってはこれらを1〜2人で担当しているケースもあります。
人手不足の本当の問題は、単純に「忙しい」ことではありません。売上を作る仕事より、運営を維持する仕事へ時間を取られてしまうことです。
2026年の調査でも、データ処理などのノンコア業務によって、本来実施したかったUI・UX改善やページ制作、パーソナライズ施策などを諦めた担当者が多いことが分かっています。
まずは毎日・毎週繰り返している作業を書き出し、次の3つに分けてみてください。
- 人が判断する必要がある仕事
- ルール化できる仕事
- システムやツールで自動化できる仕事
3.新規顧客の獲得コストが高くなっている
新規顧客獲得は、2022年の調査でも多くのEC運営者が課題として挙げていたテーマです。しかし、新規顧客が取れないときに「広告費を増やす」だけでは解決しない場合があります。
たとえば広告から1万人が訪問しても、商品ページのCVRが0.3%なら購入者は30人です。同じ1万人でもCVRが1%なら100人になります。
つまり、問題が集客なのか、商品ページなのか、価格なのか、送料なのか、信頼性なのかを切り分ける必要があります。
- 流入チャネル別CVR
- 商品ページ別CVR
- カート投入率
- 購入完了率
- CPA
- 粗利
「アクセスが少ない」のではなく、すでに来ている人を購入につなげられていないケースもあります。
4.リピーター施策・CRMまで手が回らない
ECサイトでは、新規顧客獲得と同じくらい購入後の顧客との関係が重要です。調査でも、EC担当者が今後取り組みたい施策として「継続的な購買の促進」や「既存顧客のロイヤリティ向上」が多く挙げられています。
しかし実際には、「初回購入者にも既存顧客にも同じメールを送っている」「2回目購入までの日数を把握していない」「休眠顧客が何人いるか分からない」という店舗もあります。
CRMを難しく考える必要はありません。まずは、
新規購入者のうち何%が2回目を購入しているか
を確認してみてください。その数字が分かれば、初回購入後7日、30日、60日など、どこで顧客が離れているのかを考えられるようになります。
5.サイト改善・UI/UX改善が後回しになる
EC担当者さんと話していると、「商品ページを改善したい」「スマホ表示を直したい」と思いながら、半年以上そのままになっているケースがあります。
大規模なサイトリニューアルをしなくても、改善できることはあります。
- ファーストビューで何の商品か分かるか
- 送料がすぐ確認できるか
- スマホで購入ボタンが押しやすいか
- 返品・交換条件が分かるか
- レビューや実績が見つけやすいか
- 購入前の不安を解消する情報があるか
ECサイト改善では、「全面リニューアルするか、何もしないか」の二択にしないことが大切です。1ページずつ、小さく改善することもできます。
6.受注・在庫・出荷などバックヤード業務が増えすぎている
売上が伸びると、受注・在庫・発送の作業も増えていきます。楽天市場、Amazon、Yahoo!ショッピング、自社ECを運営している店舗では、それぞれの管理画面を開き、注文を確認し、在庫を調整し、送り状を発行し、発送完了処理をしているケースもあります。
売上が2倍になった結果、作業量まで2倍になるのであれば、EC事業としての利益は思ったほど増えない可能性があります。
まず「1注文あたり何分かかっているか」を計算してみてください。
1件3分でも、月3,000件なら150時間です。
この領域は、受注管理システム、在庫連携、送り状発行、倉庫連携などによって大きく改善できる可能性があります。
受注管理・一元管理システムを比較したい方は、以下の記事も参考にしてください。
7.ツールや販売チャネルが増えすぎて情報が分断されている
EC運営を改善しようとして、広告ツール、CRM、MA、チャット、分析ツール、在庫管理などを追加していくと、逆に業務が複雑になることがあります。
「新しいツールを入れたのに、別のCSV作業が増えた」という状態です。
ツールは多いほど良いわけではありません。次の3つが明確になっていることの方が重要です。
- この数字はどこを見れば分かるのか
- この作業はどのシステムで行うのか
- 最終的な顧客データはどこにあるのか
2022年と2026年でEC担当者の悩みはどう変わった?
2022年のECサイト運営者調査では、「集客」「新規顧客」「既存顧客」といった売上を作るための課題が上位に並んでいました。
一方、2025〜2026年の調査を見ると、それらに加えて「データ活用」「人手不足」「業務改善」「CRM」「UI/UX」といった、施策を実行するための体制そのものが課題として表れています。
| 2022年に目立った課題 | 2025〜2026年に目立つ課題 |
|---|---|
| サイトへの集客 | データ活用 |
| 新規顧客獲得 | 人手不足 |
| 既存顧客の継続 | CRM・リテンション |
| 運用リソース不足 | データ処理・業務負荷 |
| 販路拡大 | 複数チャネル・ツール統合 |
もちろん、2022年と2025〜2026年では調査対象・設問・調査会社が異なるため、単純な時系列比較はできません。
ただ、複数の調査を並べて見ると、EC担当者の課題が「どう売るか」だけでなく、「売上を伸ばす施策へ時間を使える運営体制をどう作るか」へ広がっていることが見えてきます。
ECサイトの課題は4つに分けると整理しやすい
ECサイトの悩みを聞くと、「売上が上がらない」「忙しい」「広告費が高い」など、さまざまな言葉が出てきます。しかし、そのままでは何から改善するべきか分かりません。
私はまず、課題を「売上」「利益」「業務」「組織」の4つに分けて考えることをおすすめしています。

| 分類 | 主な課題 |
|---|---|
| 売上 | 集客、CVR、客単価、リピート |
| 利益 | 粗利、広告費、送料、物流費、システム費 |
| 業務 | 受注、在庫、商品登録、CSV、問い合わせ |
| 組織 | 人員、スキル、役割、データ、KPI |
たとえば「売上が伸びない」という相談でも、アクセスが足りない店舗とCVRが低い店舗では、やるべきことは全く違います。
「人手が足りない」という問題も、本当に人員が足りないのか、それとも不要な手作業が多いのかによって解決方法が変わります。
改善の優先順位は「売上インパクト×改善工数」で決める
EC運営でよくある失敗が、改善点を見つけたら全部やろうとすることです。商品ページ、SEO、広告、SNS、CRM、LINE、在庫、自動化など、すべて重要に見えるため、結果としてどれも中途半端になってしまいます。
そこで改善施策を、次の2軸で考えてみてください。
- 売上・利益へのインパクトが大きいか
- 少ない工数で実行できるか

たとえば商品ページのファーストビュー修正が2時間ででき、CVR改善の可能性があるなら優先度は高めです。一方、半年かかる基幹システム刷新は重要でも、今すぐ最優先で着手すべき施策とは限りません。
すべてを改善するのではなく、「今、改善効果を出しやすい課題」から始める。
この考え方を持つだけでも、施策の渋滞をかなり防ぎやすくなります。
課題別|まず確認したい数字
EC担当者さんから「何を見ればいいですか?」と聞かれたとき、私はいきなり大量の指標を見ることをおすすめしていません。
まずは、自社の課題に応じて次の数字を確認してみてください。
| 課題 | 最初に見る数字 |
|---|---|
| 集客 | 流入チャネル別アクセス数 |
| 商品が売れない | 商品別CVR |
| 広告費が高い | CPA・ROAS・粗利 |
| リピーターが少ない | 2回目購入率 |
| 客単価が低い | 平均注文単価 |
| 業務が忙しい | 作業別の月間時間 |
| 在庫問題 | 欠品・過剰在庫・在庫回転 |
| CRM | 新規顧客/既存顧客別売上 |
数字をたくさん集めることが目的ではありません。経営判断につながる数字を、必要なときにすぐ見られる状態を作ることが重要です。
AIやツールを導入すればEC運営の課題は解決する?
AI活用はECでも急速に広がっています。商品説明の作成、画像生成、問い合わせ対応、レコメンド、メール作成、データ分析など、利用できる場面は増えています。
ただし、「AIを入れること」を目的にしないでください。
業務が整理されていない状態でAIやツールを追加すると、「どのデータが正しいか分からない」「管理画面がまた一つ増えた」「結局CSVを手作業でつないでいる」といった問題が起きる場合があります。
課題を特定する → 不要な作業をなくす → ルール化する → 自動化する → AIを活用する
AIを最後にしか使ってはいけない、という意味ではありません。「何を効率化したいのか」を明確にしてから導入することが重要です。
自社対応・ツール導入・外部支援はどう使い分ける?
ECの問題をすべて外部へ任せる必要はありませんし、すべてを内製する必要もありません。
たとえば商品画像の変更や商品説明の改善など、自社で短時間に変更できるものは社内で実施した方が早い場合があります。一方、毎日繰り返す受注処理や在庫調整のような定型業務は、システム化・自動化した方が長期的な負担を減らせます。
| 方法 | 向いている課題 |
|---|---|
| 自社で改善 | 商品ページ、画像、説明文、導線など短期間で変更できるもの |
| ツール・システム | 受注、在庫、集計、メールなど繰り返し発生する業務 |
| 外部支援 | 課題特定、戦略、優先順位、専門知識が必要な改善 |
「数字はあるけれど、どこが悪いのか分からない」「社内では優先順位を決められない」「改善施策を実行しているが成果につながらない」という場合には、一度第三者に見てもらうのも方法です。
EC支援を依頼する目的は、すべての業務を外注することではありません。自社だけでは見つけにくいボトルネックを早く見つけることにも価値があります。
EC運営の課題チェックリスト
次の項目で3つ以上当てはまる場合は、EC運営全体を一度整理してみることをおすすめします。
- 売上が伸びない理由を数字で説明できない
- 広告費を増やしているのに利益が増えていない
- 毎週CSVを加工してレポートを作っている
- 商品ページを半年以上改善していない
- リピート率・2回目購入率を把握していない
- 楽天・Amazon・自社ECを別々に管理している
- 受注や在庫確認に毎日多くの時間を使っている
- 担当者しか分からない業務がある
- 新しい施策を考えても実行まで数か月かかる
- ツールは増えたのに作業時間が減っていない
- KPIが売上だけになっている
- やりたい施策より「今日やらないと困る作業」を優先している
まとめ|EC改善は「やることを増やす」だけではない
ECサイトの売上を伸ばそうとすると、広告、SEO、SNS、CRM、AIなど、新しい施策を追加したくなります。もちろん新しい施策も必要です。
しかし現在のEC現場では、担当者が売上改善の方法を知らないこと以上に、「分かっているけれど、やる時間がない」という問題も大きくなっています。
だからこそEC改善では、「何を新しく始めるか」だけではなく、「何をやめるか」「何を自動化するか」「何に担当者の時間を使うか」まで考える必要があります。
EC担当者がCSVを加工する時間ではなく、商品を改善する時間、お客様を見る時間、次の施策を考える時間を増やせる状態を作る。
これが、これからのEC運営では非常に重要です。
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ECサイトを拝見したうえで、売上・導線・商品ページ・集客・運営面などから、まず改善すべきポイントを整理します。
※本記事は2026年9月時点で確認できる各種公開情報・調査データをもとに構成しています。調査ごとに対象者・設問・調査方法が異なるため、異なる調査結果を単純な時系列比較として扱うものではありません。